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修復者の覚醒と、時間軸の傷跡(タイム・スカー)

数時間の休息の後、古文書研究室は、起動した**『クロノス・コア』の黄金色のバリア**によって、穏やかな光に包まれていた。それは、強力な守護の力を持つと同時に、生命の安息を与える、暖かい光だった。

刹那は、横たわっていた寝袋からゆっくりと起き上がった。全身に満ちる力は、以前の疲労とは無縁の、クリアで安定したエネルギーだった。

彼は、左手首の螺旋の懐中時計を見つめた。時計は、穏やかに黄金色に輝いている。

「コアは……もう、俺の命を吸い取っていないのか?」

「ええ」ひまりは、古文書とデータを見比べながら答えた。「修復モードに切り替わったからよ。あなたの過負荷による苦痛は、時間流の乱れを**『修復』するための燃料だった。もうあなたは『盾』ではない。『修復者ヒーラー』**としての役割に、魂が昇華された」

刹那は、自身の身体の変化を感じていた。以前は強引な跳躍でしか使えなかった**『クロノス・シフト』が、今や手のひらの動き一つ**で、**極めて微細な時間流の操作マイクロ・シフト**が可能になっていた。

彼の指先から、一瞬だけ青白い光が灯る。それは、一秒の十万分の一の時間を、制御された空間内で加速させる、精度の高い力だった。

「これなら、狙った時間軸だけを、ピンポイントで操作できる……」

時間の観測者タイム・センサーの強化

一方、律の**『時間センサーの瞳』**も、修復の儀式によって、飛躍的に強化されていた。

彼は、研究室の壁を見つめたまま、驚きの声を上げた。

「おい、ひまり! 壁に、さっきまでなかったものが見えるぞ……! 薄い、灰色のモヤだ」

「それが、『時間の傷跡タイム・スカー』よ」ひまりは、すぐに反応した。「オービターの時間操作や、刹那の制御されていないシフトが、世界に残した傷。時間流が、完全に元に戻りきれていない残滓よ」

律は、その灰色のモヤが、千堂高校の方向に向かって、微かに揺らいでいるのを見た。

「あのモヤは、俺たちの学校で、佐藤梓が仕掛けた隔離フィールドの跡か……」

「ええ。コアは、今、その傷跡を**『修復』しようと、エネルギーを自動的に送っている。律くん。あなたの強化されたセンサーは、その傷跡の『深さ』と『位置』**を、明確に追跡できるようになったのよ」

律は、自分の能力が防御壁ではなく、世界を読み解く地図になったことを理解した。彼らは、オービターの残した破壊の痕跡を、追跡できるようになったのだ。

新しい使命:傷を癒す

刹那は、コアの力を、ただの防衛や逃走のためだけに使うことに、限界を感じていた。彼の頭には、律の混乱した記憶や、自分が無自覚に時間軸に与えた影響が重くのしかかっていた。

「ひまり。コアは**『修復』**を求めているんだろ?」

「その通りよ」

「なら、俺たちの新しい使命は、オービターを倒すことじゃない。奴らがつけた『傷』を癒すことだ」

刹那の瞳に、新たな決意が宿った。

「奴らの隔離フィールドの跡も、俺の暴走シフトで記憶が歪んだ人たちも、全て**『時間の傷』だ。俺たちがコアの力で、その傷を修復すれば、奴らの破壊工作は無効**になる」

「つまり、時間の傷を修復することが、オービターに対する最高の攻撃になるということね」ひまりは、刹那の深化した洞察に感銘を受けた。

律は、すぐに立ち上がった。

「その『時間の傷跡』を追う。俺の目が、奴らの破壊した場所を示す。そこへ行って、刹那の力で、元の時間に戻すんだ!」

三人の役割は、再び明確になった。

* 刹那:修復者(コアの力を制御し、傷跡を治す)

* ひまり:航海士(コアの機能と修復メカニズムを解読し、次の行動を導く)

* 律:観測者(傷跡の位置を特定し、オービターの動きを監視する)

オービターの標的:過去の痛み

彼らが、最初の『時間の傷跡』を追う準備を始めた時、ひまりのPCに、暗号化されたデータが届いた。それは、コアの修復モードが自動的にキャッチした、オービターの内部通信の断片だった。

ひまりが、その断片を解読し、顔色を変えた。

「刹那……! オービターは、すでに私たちの新しい動きを予測しているわ!」

「何だと?」

「彼らは、**『コアが修復を求める』という事実を利用して、私たちを最も困難な『傷跡』へと誘い込もうとしている。彼らが次に狙っているのは、あなたが時間跳躍者になった、『過去の決定的な傷』**よ」

ひまりが示したデータには、佐藤梓の冷たい声のメッセージが記録されていた。

『時永刹那の最も深い時間の傷を特定せよ。彼が、決して手放せない過去。それを人質にする』

そのデータに付随していたのは、一枚の写真。

それは、五年前。刹那の祖父が、事故で命を落とした、あの研究室の、焼け焦げた壁の光景だった。

刹那は、全身の血の気が引くのを感じた。彼が時間跳躍者となった、始まりの『傷』。

オービターは、「時間を修復したい」という刹那の最も強い感情を、最大の罠として利用しようとしていたのだ。

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