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「ただいまあ」
サツキの家についた。
綺麗な一戸建て住宅。
「お邪魔します」
二人は玄関を上がり、リビングに入っていた。
「お母さんただいまあ」
サツキは五年ぶりの再会というのに、普通の調子でただいまを言っていた。感動の再会。涙を流して抱き合うなどはない。
ふり向く、サツキの母親。
「おかえり、あら、龍ちゃんいらっしゃい」
サツキの母親は台所で料理をしている途中だった。
それにしてもこの反応はなんだ、理解が追いつかなかった。なぜ驚かない。俺みたいに腰を抜かすくらいしてもいいだろうに。
「お邪魔します。っておばさん驚かないの!? サツキ帰ってきたんだよ!?」
「驚くって、なんで?」
サツキの母親もサツキと同じ調子だった。さも、いるのが当たり前かのように、五年の間いなかったなんて事実なかったかのように。
「なんでって、サツキだよ?」
龍太郎は正直困った。
「サツキがどうしたの?」
サツキの母親はあっけらかんとしている。
「サツキの家なんだから帰ってくるの当然だよね、ね。お母さん」
とサツキは母親に笑いかけた。
「どうしたの龍ちゃん」
とサツキの母親は龍太郎を心配そうに見つめる。
どうなっているのだろうか、きっと今の俺の顔は引きつっているに違いない。
「お、おばさん、あの、さ」
正直なにをどう話せばいいのかわからなかった。
がらがらがら
玄関が開く音がした。
「あ、啓にいだあ、ただいまあ」
平均よりも高い背丈、茶髪。サツキの一個年上の啓介だった。
「ん? お帰り、僕が帰ってきたんだから、逆だろ、まあいいけどさ。お、龍太郎来てたのか、よう」
と啓介は手を上げて龍太郎に挨拶をした。
「啓ちゃん、なんでそんな普通にしていられるんだよ」
「なにが?」
「だって、サツキが!」
「帰ってきましたあ」
サツキは楽しそうに笑っていた。