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3.適性検査はあっさりと

 数日後にようやく調査結果の通知が幸隆の端末に届き、通過の知らせを知らせた。


 そして今、仮登録を済ませた時の受付嬢を伴ってダンジョンの入口へとやってきた。


 フロントから警備員のいるゲートに案内され、中へと入ると探索者用の入口と適性検査用の入口が用意されており、探索に繰り出す探索者達を尻目に重厚な扉の前で幸隆は説明を待った。


 「適性検査は簡単で、実際にダンジョンの入口をくぐるだけとなっております」


 淡々と説明を始める受付嬢。


 「中に入るだけで分かるんですか?」


 何かしらの身体検査を行うでもなくただ入るだけでその人の適性がわかるなんてどういった仕組みだろうと幸隆は疑問を抱いた。


 「適性がある者でしたら、ダンジョンから()()()()が付与されます」


 「魔力の種?」


 「そのような物と捉えて下さい。実際は形のあるものではありませんので、私共は便宜的にそのように呼称しております」


 現代科学のメスが通らない摩訶不思議な箱物だ。


 観測できないならイメージしやすいものに例えるのは一般的と言えるだろう。


 「入場された際に本堂様の体の中に魔力が発生した場合は適正あり、発生しなかった場合は適正なしと判断させて頂きます」


 「見えないものじゃないんですか?」


 「種は見ることができません。しかしその種が生み出す魔力を観測することはできます。魔術師系統のクラスを有するものはもちろん、ベテランの探索者であればクラスに関係なく気取る事はできるでしょう。今回は私が判断いたします」


 「お願いします」

 

 「では扉を開いて下さい」

 

 表情のない受付嬢の言われるがままに、重々しい扉に手をかけた。


 「くっ」


 予想以上の重さに幸隆は息を止めて全身で押し始める。


 「あの……横のボタン」


 ───ギギ


 「!?」


 受付嬢は慌てて幸隆が手を当てる扉のすぐ横にあるボタンを押した。


 「どわっ───!」


 突然消える抵抗感に押すエネルギーが行場を失い、転倒しかける幸隆。


 なんとか倒れること無く体勢を整えた幸隆は何事かと受付嬢へと顔を向けた。


 するとそこにはじとーっと睨んでくる受付嬢の姿があった。


 「すぐ横に開閉ボタンがあるのが見えませんでしたか?スタンピード対策の為の防護扉なのですから力尽くで開くわけがないでしょう。少しは考えて下さい」


 冷たい視線に幸隆は受付嬢の説明不備を指摘してやりたかったが、わかりやすい位置にあるボタンを見て言葉を飲み込んだ。


 幸隆の倍程の高さの扉、開いたからこそ分かる扉は幸隆の肩幅よりも分厚かった。


 これを手動で開けるという頭が最初からないのが普通だ。


 「すみません」


 客観的に見て自分の言い分が不利だという事に気付いた幸隆は素直に謝った。


 負け戦はしない。


 賢いと自負する幸隆は無謀な真似はしないのだ。


 「あれ?中はダンジョンって話だったが、ここがダンジョン?」


 たたらを踏んで入った場所は小さな一室。


 そこはダンジョンと言うには狭すぎ、進むためには人が通れない程の小さな通路を行くしか無い袋小路だった。


 「こちらは適性試験用に改築した専用のお部屋となっております」


 「ダンジョンってリフォームとかってできるんすね」


 ならあの小さな穴もいらないのでは?と思うも口にはしない。


 「あ、そうだ。中に入ったのならどうなんですか!?俺の適正!」


 今後の生活に関わってくる大事な場面だ。


 幸隆は食いかかるように受付嬢に詰め寄った。


 嫌そうな顔を浮かべる受付嬢は幸隆の胸をジーっと見る。


 「……多分大丈夫です」


 「多分?」


 はっきりとしない回答に幸隆が不安に思う。


 「あ、いえ大丈夫です。きちんと魔力を観測していますから」


 取り繕うに回答し直す受付嬢に幸隆は胸を撫で下ろして安堵のため息を零した。


 「よかったぁ〜。これで俺も晴れて探索者なんですね」


 「はい、おめでとうございます。この後正式に契約書の交付とライセンスの発行に移りますので、別室への移動をお願いします」


 「これで食いつなげるぞ。今月を乗り越えられる」


 「ではご案内いたしますのでついてきて下さい」


 この後、過不足無く事を終えた幸隆は、新しいおもちゃを貰った子どものように受付嬢や警備員の制止を振り切ってダンジョンへと飛び込んだ。


 着の身着のまま、丸腰で。


 

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