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37:誰に相談するのが正解?

私がリンとローレンス皇太子の間に何かあったのでは?と悶々としていたが。離宮に戻ってきたらそれどころではない。だから一旦、その件は保留にしていたのだが……。


勿論、忘れたわけではない。まるでなかなか消えない暖炉の中の薪のように。くすぶっていた件だ。それに瞬時に気づくなんて……。アルトは鋭い。思わずそのことを指摘すると。


「私の国は女性が強いんです。一夫多妻制ですから、女性は寵愛を競い、我も強い。私も王族の一人ですから、子供の頃から、『女性を怒らせたら怖い。いち早く怒りを察知しろ』と教えられているんですよ。女性の表情の変化には敏感なのです」


そうだったのか!

確かにアルトは気配り上手で、女性の気持ちを汲むのが絶妙な攻略対象だと思っていたが。そういう事情があったのね。勿論、一夫多妻制の件は知っていた。ちなみにゲームにおいてヒロインが攻略すると「君以外を迎えることは考えられない」と、脱ハーレム宣言をしてくれる。


ともかくアルトは女性の機微に聡く、私のモヤモヤにも気が付いてくれたというわけだ。


そこで悩む。


このモヤモヤについてアルトに相談していいのかどうかを。もしこのモヤモヤを誰かに相談するとしたら。


つまりは私が見つけた点の情報から、リンとローレンス皇太子の間に何かあったかと思うかと尋ねたら。アルト以外はどう答えるかを考えて見た。


レイモンドは……決して恋愛経験が多いとは思えない。どちらかというと私と同じで「え!」と驚き、「……分からない」と散々考えた後に言い出しそうだ。


デュークは……女性関係に明るいから、「何かあったかもしれないねー」とあっけらかんに言いそうだ。それが本気なのか冗談なのか、判別がつかない感じで。


グレアムは……「そんなことで悩んでいるのですか、シャーロットは。可愛いじゃないですか」と冷たく言われ、最終的に「本人に聞けば解決ですよ」とその明晰な頭脳が下す判断を提示されそうだ。


そう考えると、このモヤモヤをアルトに相談することは妥当に思える。何せ女性への気遣いが抜群なのだから。ここは思い切って聞いてみよう。


ということで、話してみた。

すると。


「なるほど。それは……不安になる気持ちはよくわかります」


ちりとりに集めた花びらや葉を入れながら、アルトは私が悩むことに同意を示してくれる。


「得も言われぬ色気が漂っている……それは男性が引き出した可能性もありますし、何か頬が上気することをしていた……と憶測するのも無理はないでしょう」


再びほうきを使い、散らばる花びらを集めながら、アルトはドキッとするようなことを言う。


「それに女性向けの香水。ローレンス皇太子がつけているとは思いませんからね。誰につけられたのかと考えれば……。そして鎖骨の赤い痣のようなもの。いわゆるキスマークかもしれない。さらに言えば、ローレンス皇太子は布を羽織っていましたが、上半身が裸でしたからね」


そう言われると、一気にズーンと沈む。

だが。


「でも何もなかったと思いますよ。なぜなら」


そこでアルトは声をひそめる。そして私の耳元に顔を近づけると。


「私はリンにプロポーズして、ようやくOKをもらえたのです」


叫びそうになり、口を押さえる。

い、いつの間に!?

私の疑問に答えるようにアルトが話を続ける。


「まあ、胃袋を押さえられた感じですね。リンの作るお菓子は美味しいのです。それにリンは凛としていて、サバサバしています。男兄弟が多いからでしょうか。しかも狩りもできるし、乗馬も得意、そしてお菓子も作れて美しい。ただ……私の国が一夫多妻であることを知っていますから。そこがネックになっていました。そこで私は国王に手紙を書き、ようやく許可をもらったのです。私は第二王子でしたから、リン一人を妻にするのでも構わないと。それを伝え、ようやく婚約者になることを承諾してくれたのです」


そ、そうだったのか……!

でもアルトがリンを好きになる理由は、よく分かる。だってアルトが言う通りだからだ。とっても魅力的だと思う。


「正式な婚約の手続きが終わってから、皆に話すつもりでいました。だからこれはシャーロット、みんなにはまだ秘密ですよ」


「分かりました。でもだから昨日も、ずっとリンに付き添おうとしていたのですね」


アルトは静かに頷く。


「ただ、ローレンス皇太子が言う通り、私に何かあると大変ですからね。リンと離れ離れになったのは仕方ないと思っています。でも今日、再会した時、リンに話を聞いたところ……。炭焼き小屋にはほとんど食料がなくて、リンは朝からお腹が鳴りそうだったらしいのです。それを誤魔化すために、腕立て伏せや腹筋をしていたと言っていました。お腹に力がはいるので、リンいわく『お腹が鳴らないで済む』らしく」


「そ、そうだったのですね。だから頬が上気し、髪の無造作な感じが色っぽく見えていたと……」


アルトは「そうだと思います」と返事をし、さらに香水の件は自身の推論を話してくれた。


つまりは炭焼き小屋には食料もそこまでなかったが、タオルなどもふんだんにあるわけではなかった。ローレンス皇太子は当然、リンにタオルを使うことをすすめ、リンが使い終わったタオルを暖炉で乾かし、自身が使ったのではないかと。タオルについていたリンの香水が、ローレンス皇太子に移ったのではないかと。


言われて思い出すと、確かにあの小屋の中でロープに吊るされたタオルがあったが、それは二枚しかなかった。大きいサイズ1枚と小さいサイズ1枚。アルトの推理は正しいと思えた。

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