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「シャーロット、今日のお茶会も相当楽しかったのだね。そんなにグッタリする程、はしゃぐなんて。皇太子さまに御礼の手紙を書かないと」


お茶会を終えた私を迎えに来た父親は、ニコニコ笑顔で私を抱きかかえ、馬車へと乗せる。


私は……はしゃいでなどいない。

グッタリしているのは、攻略対象4人に散々甘やかされたせいだ。

そもそも私は喪女なのである。

乙女ゲームのプレイ経験があっても、リアルな男性とのやり取りに耐性がない。

80歳で天寿を全うした時も。

ときめきにつながるような男性とのやり取りなく終わっているのだ。

それなのにここにきて攻略対象から甘やかされても、どう対処していいか分からない!


転生者でなければ。

あのイケメン4人にちやほやされる状況に、もう頬は緩み、常にデレ顔だっただろう。


でも私は悪役令嬢なのだ!


何よりもこんな頻繁に攻略対象に会っている場合ではないと思う。こんなに彼らに会っていては、ないはずの悪役令嬢に関するフラグが立ちそうで恐ろしくてならない。


どうにかできないものか。

そう考えて私は父親に提案した。


「お父様。シャーロットは心配です」

「うん? どうしたんだい、シャーロット、何が心配なんだい?」

「お茶会では美味しいものを沢山いただいています。このままではシャーロットはミニブタさんみたいになってしまわないかと心配なのです」


そう言って少し頬を膨らませて見たのだが。


「……なるほど。では少し運動をした方がいいね、シャーロット」

「えっ」


運動をしてカロリー消費するという発想に向かった父親に愕然とする。そこはお茶会へ行くのを控えさせるのではないの!?と。


だが、そもそも私の考えが甘いものだったと数日後に気づくことになる。


「シャーロット、皇太子さまから乗馬のお誘いが来たよ。皇太子さまに、先日のお茶会のお誘いへの御礼の手紙を書いただろう。その時に、最近、シャーロットの体重が増えているようだと伝えたら……。お茶会ではなく、乗馬のお誘いをしてくれた。皇太子さまは優しいね」


これにはもう愕然とするしかない。


乗馬は……優雅なイメージもあるが、あれは全身運動で結構カロリーを消費する。よってお茶会に参加し過ぎて太ったと感じる私に提案するものとして、乗馬は実に最適だった。


何より、父親はハンティングが好きで、そして兄が二人いて弟もいる。だから私は、乗馬は4歳の頃から始めていた。勿論、最初はポニーからスタートしたが。


つまり、私は乗馬ができる。できる、どころか得意だ。


だから……。


「乗馬はできないので」という断りをいれることもできない。そして乗馬ができない以外で、皇太子のお誘いを断ることは……無理だ。恐れ多くてできない。


というわけで。


「さあ、シャーロット、行こうか。皇太子さまと乗馬。楽しみだね」


今日も私は父親に連れられ、宮殿へと向かう。


厩舎に向かうとそこにはローレンス皇太子、護衛騎士のレイモンド、宰相の息子グレアム、公爵家の次男デュークが勢揃いしている。全員乗馬服を着ているのだが、皆、カッコいい。


ローレンス皇太子の馬は白馬。そして彼の乗馬服はサファイアブルー。まさに白馬に乗った王子様になる。


護衛騎士のレイモンドの馬は黒鹿毛くろかげ。自身の髪色と瞳も黒で乗馬服も黒。その姿で騎乗するとまるで黒騎士みたいだ。


宰相の息子グレアムの馬は栗毛くりげ。自身の髪色や瞳にあわせたモスグリーンの乗馬服と、茶色の栗毛はよく合っている。


公爵家の次男デュークの馬は青鹿毛あおかげ。乗馬服は目にも鮮やかなターコイズブルー。4人の中ではダントツで目立っている。


私の馬は……と思ったら。


私を一人で馬に乗せる気はなかった。当然のようにローレンス皇太子が自身の白馬へと私を導く。まだみんな子供。だから二人乗りも可能というわけだ。


だがこれは……当然だが、体のあちこちがローレンス皇太子に触れることになる。声も耳元で囁かれる形になるし、相当緊張するし、落ち着かない。上手く馬の動きに自分を合わせることができず、そうなるとお尻も痛いし、馬にも迷惑をかけている気がする。


しかし。人間、慣れるものである。それに私は4歳から乗馬を習っているのだ。どれだけハンサムなローレンス皇太子と体のあちこちが触れ、緊張して落ち着かなくても、馬の動きにあわせ、ちゃんと乗れるようになってしまう。


「シャーロット、ようやくわたしの愛馬、シルキーにも慣れてくれたね」

「……そ、そうですね」

「きっとシャーロットは乗馬が得意なのだろうね」


そう、そうなのである。だから二人乗りではなく、私にも馬を用意してほしい。そう思い、それを伝えると……。


「ダメだよ、シャーロット。乗馬は決して可愛らしい令嬢にとって、安全と言えるものではない。わたしの愛らしいシャーロットが怪我をしたら大変だ。二人乗りであれば、いざという時はわたしがシャーロットを守ることができる。シャーロットを守れるなら、わたしはどんな犠牲を払ってもいいと思っているから」


乙女ゲーム『ハピラブ』では。4年後の未来に。

断頭台送りを命じるその人の言葉とは思えない。


どうしてしまったというの……? 私が悪役令嬢にならないと分かっているからこんな言葉を言ってくれるの?


呆然とした瞬間、思わず力を抜いてしまい、シルキーの動きにあわせ、体が傾いた。


「ほら、言わんこっちゃない。あぶなかったよ、シャーロット」


ローレンス皇太子が手綱を器用にさばきながらも、しっかり左腕で私を抱きしめている。もう大人みたいに見える彼はしっかり腕に筋肉もあり、少年ではなく青年と思える力強さだった。それに咄嗟に私を守ろうとするその行動力は……本当にもう、ザ・王子様。11歳の少女ながら、中身は2度目の転生者なので。このハンサム皇子には普通に胸キュンしてしまう。


「どうして……どうして皇太子さまはシャーロットに優しいの?」


11歳という幼子の姿だから聞ける質問だ。

同い年の14歳ならもう思春期始まっているし、絶対に聞けない。


「だってシャーロットは小さくてこんなに可愛らしい女の子だから。わたしが守ってあげないと。それにわたしはシャーロットだけの皇子様だから」


大変優等生な回答をいただけた。

本当に彼が攻略対象でなければ。

2度の喪女返上、そして初めての恋を彼とだって始める気持ちになれたのに。


「ローレンス皇太子さま、30分経ちました。交代っす!」


護衛騎士のレイモンドが気さくにローレンス皇太子に声をかける。

二人は兄弟も同然で育った。だから公ではない、プライベートな時間ではこんな風に砕けた会話が許されている。


「分かったよ、レイモンド」と答えたローレンス皇太子は、私の耳元で囁く。


「30分ってなんてあっという間だね。わたしはもっとシャーロットと乗馬を楽しみたいのに。でもみんなもそれは同じ気持ち。彼らは未来のわたしの臣下でもあるから。気持ちを汲んであげないとね。でもシャーロット、忘れないで。シャーロットの特別は、わたしだからね」


ローレンス皇太子、弱い14歳にてなんて甘い台詞を!

一体、どこで覚えました!?と問い詰めたくなる。


今はまだ11歳だけど、精神年齢は間違いなくうんと上の私なのに。完全に今の言葉でメロメロにされている。


気持ちはぐらぐら揺れるが、このローレンス皇太子と何かあれば、断頭台送りなのだから。勿論、そんな未来を感じたら速攻で逃げますけどね、前回同様。


そう心の中で思い、馬から降りた。

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