表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/41

25:恋をしていると実感

お茶会の日から二日後。

ローレンス皇太子は二人きりで会おうと言ってくれた。しかも制服でまた来ていいと言われた。そこで私は屋敷に戻らず、直接宮殿に向かっていいか父親に尋ねると。


「シャーロット、構わないよ。いつもより早く宮殿に着くと伝えておこう。……屋敷に戻らず宮殿にすぐ行きたいのか。そうか、そうか。一刻も早く、ローレンス皇太子さまに会いたいのだね」


それは……考えてもいなかった。

単純に私がズボラだから、どうせ制服からドレスに着替える必要がないのなら。屋敷に戻らず、宮殿へ行く方が……“楽”だと思ったのだ。本当にもう、ただそれだけ。


でも父親の言葉を聞いて……気が付いた。そうか。いつもより早う会うことができる。それはつまりいつもより長くローレンス皇太子と一緒にいることができるわけだ。


いいことづくめではないか。


ということで授業を終えると。そのまま馬車に乗り込み、宮殿へと向かう。二人きりで会う日は、ローレンス皇太子はいつもエントランスに迎えに来てくれる。だからエントランスが見えてくると……自然と胸がドキドキしてしまう。


あ、ローレンス皇太子!


その姿を見てビックリした。だって彼もまた制服を着ていたのだ。


その制服は、紺色のブレザーで胸ポケットにはエンブレム、シャツにネクタイ、ズボンはグレーというもの。とてもよく似合っていた。何よりローレンス皇太子は品がある。ただの制服なのに、一級品に見えてしまうから不思議だ。


御者が扉を開けると、ローレンス皇太子が駆け寄ったのだが。私をエスコートするのかと思いきや。彼が馬車に乗り込んだ。


「ローレンス、どうしたの!?」

「制服だったら身分も分からないよね。街へ行こう、シャーロット」

「! いいの……?」


ローレンス皇太子はニコリと笑い、私の頭をさりげなく撫でる。もうその動作にドキドキしてしまう。


「大丈夫だよ。レイモンドも制服を着ているし、他の護衛の騎士も既に着替えさせてある。後ろの馬車でついてくるから」


「そうなのね……!」


こうして思いがけず、街へ出ることになった。

てっきり今日もいつも通り宮殿でキャラメル、ホワイト、ソックス、ティー、コットンを愛でながら、読書でもして過ごすのかと思っていた。でも街へ行けることになり、俄然嬉しくなってしまう。


「シャーロット、嬉しそうだね」

「それは……こんなサプライズは嬉しくなります!」


すると。

ローレンス皇太子の頬が少し赤く染まる。


「喜ぶシャーロットを見ると……わたしもとても嬉しい気持ちになるよ」


……!

これはもう胸にズキューンと来る。

そんな風に言われるとドキドキが止まらない。

でもなんというか。

このドキドキを感じると、自分が恋をしていると実感できた。


「街に行くことを思いついて、今日、ローレンスも制服にしたのですか?」


私の問いにローレンス皇太子は「違うよ」と即答し、脚を組むと、私の手を握る。またもやドキドキが加速されてしまう。


「お茶会の時、初めてシャーロットの制服姿を見て……。わたしはみんなのことを帰して、シャーロットと二人きりになりたくなっていた。いつも見慣れているドレスではなく、制服。ただそれだけであんなに気持ちが昂るなんて。自分でも驚いたよ。でもわたしがそんな我がままを言い出したら、シャーロットをガッカリさせてしまう。だからあの時は我慢した。次に二人きりで会う時に。シャーロットに制服で着てもらえばいい、そう思ったんだ」


そ、それはつまり、それだけ私の制服姿をローレンス皇太子は気に入ったということだ。そんなに制服って良いのかしら? その感覚は……私に分からない。いや、そんなことはない。さっきエントランスで初めて見たローレンス皇太子の制服姿には、確かにときめいた。これまで見たことがない装いだし、新鮮に感じている。


「シャーロットが制服でわたしが私服というのも、なんだか釣り合わない気がしてね。それでわたしも制服で会えばいいと思いついた。そうしたらレイモンドが『制服だったら身分がバレないんじゃないっすか? それにシャーロットの馬車に乗れば、皇族って分からないと思いますよ』と言ったんだ。それでなるほどと思い、街へ行くことを決めたわけだよ」


思いがけずローレンス皇太子のレイモンドの真似が上手くて笑ってしまう。でもそうか、レイモンド。ナイスアドバイスだ。


ちなみにレイモンドは最初、制服姿で馬に乗り、街への護衛について行くことも考えたらしい。高校の制服で馬に乗る……想像するだけでシュールだ。馬車に落ち着いてよかった。


そんなことを話しているうちに街へ到着した。

馬車から降りると、まずは本屋へ行き、その後は文具屋に足を運んだ。そこには美しい羽ペン、様々な色のインク、上質なレターセットが売られており、眺めているだけでも楽しい。さらに香油の専門店、トイ・ショップも見て回った。


迷子にならないようにとローレンス皇太子が手をつないでくれて、もう本当にずっとドキドキしっぱなし。


前世での心残りが恋愛経験がないことだったが。現在進行形で思いっきり恋愛を楽しめている。こうやって手をつなぎ、ウィンドウショッピングをしてドキドキする――これこそまさに恋愛だろう。


ヒロインであるリンの登場には緊張したが、今のところは多分、大丈夫だと思う。このまま何事もなく、時が流れてくれることを願いながら、ローレンス皇太子との制服での街の散策を楽しんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリ作品をご紹介】
●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●終わりから始まるハッピーエンド●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢の決断
『悪役令嬢の決断』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●先手必勝!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●結末を知らないまま転生●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●食に敏感、恋に鈍感●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は異世界でラーメン屋台を始めることにした
『悪役令嬢は異世界でラーメン屋台を始めることにした』

●じれじれの両片想い●
バナークリックORタップで目次ページ
陛下は悪役令嬢をご所望です
『陛下は悪役令嬢をご所望です』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●ピンチの連続!でも負けない!●
バナークリックORタップで目次ページ
ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!
『ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!』

●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●端役過ぎて重要な情報が……●
バナークリックORタップで目次ページ
闇落ちする息子の父親とは結婚しません!公爵令嬢はバッドエンドを回避したい
『闇落ちする息子の父親とは結婚しません!公爵令嬢はバッドエンドを回避したい』

●隙間時間でサクサク読める●
バナークリックORタップで目次ページ
愛のない結婚から溺愛を手に入れる方法
『愛のない結婚から溺愛を手に入れる方法』

●続編開始●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』もぜひお楽しみください☆

●おじいさんと魔女!?●
バナークリックORタップで目次ページ
森でおじいさんを拾った魔女です~ここからどうやって溺愛展開に!?
『森でおじいさんを拾った魔女です~ここからどうやって溺愛展開に!?』

●断罪回避の鍵はお父様!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●頑張れ!悪役令嬢!●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢です。ヒロインがチート過ぎて嫌がらせができません!
『悪役令嬢です。ヒロインがチート過ぎて嫌がらせができません!』

●笑えるドタバタ劇●
バナークリックORタップで目次ページ
旦那様、離婚してください!~悪妻化計画を実行中。溺愛されてもダメなんです!~
『旦那様、離婚してください!~悪妻化計画を実行中。溺愛されてもダメなんです!~』

●もふもふも登場します●
バナークリックORタップで目次ページ
周回に登場する中ボス(地味過ぎ!)魔女に転生!~乙女ゲーなのに恋とは無縁と思いきや!?~
『 周回に登場する中ボス(地味過ぎ!)魔女に転生!~乙女ゲーなのに恋とは無縁と思いきや!?~ 』

●表紙は蕗野冬先生●
バナークリックORタップで目次ページ
だから断る
『運命の相手は私ではありません!~だから断る~』はモブ転生した私が溺愛を回避しようとするお話です。

●やがて溺愛に至る迄の物語●
バナークリックORタップで目次ページ
皇妃の夜伽の身代わりに〜亡国の王女は仇である皇帝の秘密を知る〜
『皇妃の夜伽の身代わりに〜亡国の王女は仇である皇帝の秘密を知る〜』

●のんびりほのぼの●
バナークリックORタップで目次ページ
転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました
『転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました』でお待ちしています!

●すれ違いからの溺愛エンド●
バナークリックORタップで目次ページ
わたしにもう一度恋して欲しい~婚約破棄と断罪を回避した悪役令嬢のその後の物語~
『 わたしにもう一度恋して欲しい~婚約破棄と断罪を回避した悪役令嬢のその後の物語~』

●表紙は蕗野冬先生の描き下ろし●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女に全てを奪われた聖女―絶対絶命からの大逆転―
『悪女に全てを奪われた聖女―絶対絶命からの大逆転―』

●俺様ツンデレ溺愛系●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄の悪役令嬢は娶られ、翻弄され、溺愛される
『婚約破棄の悪役令嬢は娶られ、翻弄され、溺愛される 』

●さくっと読めます●
バナークリックORタップで目次ページ
浮気三昧の婚約者に残念悪役令嬢は華麗なざまぁを披露する~フィクションではありません~
『完結●浮気三昧の婚約者に残念悪役令嬢は華麗なざまぁを披露する~フィクションではありません~』断罪の場で自ら婚約破棄宣告シリーズ第四弾。

●一番星キラリの最新作●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた~回避成功編~
読者様の声に応え、続編開始&完結!
『完結●断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた~回避成功編~』もご覧ください☆

●一番星キラリのオススメ●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約者のことが好きすぎて婚約破棄を宣告したバナー
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ第二弾
『婚約者のことが好きすぎて婚約破棄を宣告した』一気読みがおススメです☆

●一番星キラリの新連載●
バナークリックORタップで目次ページ
身代わりの悪役令嬢~断罪されたいVS.断罪を阻止したい~
『身代わりの悪役令嬢~断罪されたいVS.断罪を阻止したい~』毎日更新中!

●ラストは仰天展開!●
バナークリックORタップで目次ページ
ずぼらな悪役令嬢×空から降って来たヒロイン=溺愛ルート??
本編全20話『ずぼらな悪役令嬢×空から降って来たヒロイン=溺愛ルート??』

●一番星キラリの断罪終了後シリーズ●
イラストクリックORタップで目次ページ
断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?バナー
本家本元『断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?』もぜひお楽しみください☆

●一番星キラリの短編●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢を超える悪女の復讐劇~悪役令嬢のメイドに転生~
『完結●悪役令嬢を超える悪女の復讐劇~悪役令嬢のメイドに転生~』おススメです!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ