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22/41

22:本当にお可愛い

お茶会の会場につくと。


そこには、白シャツにサファイアブルーの上衣とズボンのローレンス皇太子、白シャツに黒の上衣とズボンのレイモンドが着席していた。二人は話をしていたが、私達に気付き、椅子から立ち上がる。


ローレンス皇太子は私を見て輝くような笑顔になり、そしてアルトに声をかけた。この会話の中で理解したことがある。ローレンス皇太子とレイモンドは同じクラスだが、グレアムはクラスが違い、アルトと同じクラスだった。さらにデュークとヒロインがクラスメイトで、今回ヒロインをお茶会に呼ぶことを提案したのもデューク。


そして私をのぞく今日のお茶会のメンバーで、学園内で集まったことはないという。ローレンス皇太子とレイモンドが学園の食堂で昼食をとっている時、アルトを連れたグレアムが二人に声をかけ、そこで昼食を共にとった。それがきっかけで、今日のお茶会招待へとつながる。


勿論、アルトが留学でディナール皇国に滞在するとなった時、公務の場でローレンス皇太子はアルトに会い、挨拶をしていた。ただ、ディナール皇国はこの世界において大国であり、周辺には沢山の小国がある。そこの王族や上流貴族の子息子女が留学で訪れることはよくあること。


公務の場で、この春からディナール皇国へ留学する王族や上流貴族の子息子女を紹介されても、その数は相当なもの。本当に挨拶程度で終わってしまう。だから今回アルトを招待することで、ローレンス皇太子は初めてじっくり彼と話す機会を得たことになる。


つまり、ローレンス皇太子は今日のお茶会で、アルトと話せることを楽しみにしていた。だからだろう。彼の左隣にアルト、右隣に私が座ったのだから。


「シャーロットちゃん! なんだ、今日は制服なの? すごく可愛いね!」


デュークの声に振り返ると、そこにいた。

デュークにエスコートされたヒロイン、リン・コルビーが。

乙女ゲームの主人公なのだ。プレイヤーの憧れを投影した、とても美しい女性。


まずはその瞳の色。登場キャラクターの中で唯一のピーチブロッサムという柔らかいピンク色をしている。そして髪はピンク色の発色が強いストロベリーブロンド。今日は両サイドに後れ毛を残し、後ろでお団子にしてまとめている。


小顔で、首も手足もウエストもほっそり、だけど胸は私よりもずっと大きい。ドレスは明るいレモンイエローでただもうそれだけで、自然とリンに目がいってしまう。現に今、この場にいるデューク以外の全員がリンのことを見ていた。


皆の視線に気づいたデュークがリンのことを紹介する。


「ローレンス皇太子さまとレイモンドは、食堂で軽く紹介したと思うけど改めて。彼女はリン・コルビー男爵令嬢。僕のクラスメイトだよ。実は彼女、ものすごく優秀で、小テストではいつも満点、運動神経も抜群なんだ。その上、自分でもお菓子作りをしているそうだよ。今日もお菓子を作って用意してきたんだよね?」


デュークに言われたリンは、頬をうっすら苺色に染め「はい」と言うと、手元のカバンからスマホサイズぐらいのパウンドケーキを取り出した。ホワイトチョコレートでコーディングされ、砕いたピスタチオとドライストロベリーがトッピングされたそのパウンドケーキは、とてもオシャレ。


しかし。


取り出したのはその一つ。この場で切り分けて皆で食べるのかと思ったら。


「皇太子妃さまへのお土産です。ぜひお屋敷に持ち帰って召し上がってください」


そう言ったリンが、透明な袋にラッピングされたパウンドケーキを私に差し出した。


「え、あ、そ、そうなのですね。ありがとうございます」


驚きながら受け取ると、再びリンの頬がうっすらと苺色になる。


「デューク、コルビー男爵令嬢を席に案内してあげて」


ローレンス皇太子に言われたデュークが、「そうだった」と頭を掻き、空いていたグレアムの隣の席に案内しようとすると。リンは目で「違う」とデュークに訴えた。デュークは「え」という顔をしたが、こういう場では、スマートな行動が重要。すぐにもう一つの空いている席、すなわち私の隣の席にリンを座らせた。


私の隣に座りたかったデュークは、残念そうな顔でグレアムの隣の席に腰をおろす。同時にローレンス皇太子が、「初顔合わせのメンバーが多いから紹介しよう」となり、まずは自身について話した。次に私のことを紹介する。


「彼女はシャーロット・スウィーニー、エスクード学院中等部の一年生で、わたしの婚約者です。見ての通り、シャーロットはとても愛くるしい。髪は、神々の祝福を受けたかのような見事なホワイトブロンド。シルクのような指触りで、一度触れると虜になります。そしてこの澄んだ美しい透明感のある碧い瞳。見つめられると時間が過ぎるのを忘れてしまいます。さらにミルクのような潤いのあるすべすべの肌。触れると放しがたくなることでしょう。それにこの薔薇色の頬。加えて……」


ロ、ローレンス皇太子がとんでもなく私をべた褒めしながら紹介している。しかも脚が細いとかなんで知っているのかしら!? 見せたこともないのに! というか、このままでは全身くまなく紹介されそうだ。今もほくろがどうのとか言っているし。嬉しいのだけど、みんなドン引きしていない!?


不安で皆の顔を見ると。


なんということだろう。熱く語っているのがローレンス皇太子だからだろうか。みんな嫌な顔一つせず、むしろ、ニコニコ楽しそうに聞いている。アルトなんて他国の皇太子の婚約者賛歌に付き合う必要なんてないのに、ちゃんと嬉しそうに聞いている……。


え、ではリンはどうかしら。

そう思い、チラリと隣に座るリンを見ると。

微笑んでいる。しかも頬が苺色に染まっている。しかも今……。


「うふっ。本当にお可愛い」


え。

これは誰に対する言葉? 私について語るローレンス皇太子が可愛い……ということ? まさか私に対する可愛いではないと思うから、きっとそうだ。こんなに無邪気に自身の婚約者について熱く語るローレンス皇太子を、可愛いと思っているんだ……。


まさか、リンはもうローレンス皇太子を好きになっている……?

焦りで背中に汗が伝った。

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