1:プロローグ
よくやったと思う。
私は、現代社会から中世風の世界観の乙女ゲーム『ハッピー・ラブ・タイム』――通称『ハピラブ』の世界に悪役令嬢として転生していた。
何もせずにいたら、悲惨な末路しかないと分かり、悪役令嬢を完璧に回避するプランを計画し、それを実行。見事、悪役令嬢になることを回避し、80歳となる今日まで生きることができた。
前世の世界であれば、人生100年と言われている。だから80歳まで生きても珍しいことではない。だがここは中世風の世界観、しかも私は乙女ゲームの悪役令嬢として転生したのだ。それが80歳まで生きることが出来たのは……奇跡だ。
何せ前世に比べたら医療のレベルが全然違うのだから。質素倹約と言いながら、ちゃんと野菜中心の食生活にしたのが良かったのかしら? 普通に貴族をやっていたら、肉料理ばかり食べていただろうし。
もう、思い残すことは何もない。
それなりに美味しい物も食べることができたし、良き友人にも恵まれた。
このまま安らかな眠りにつこう。
そう思っていた。
思っていたのだが。
心残りがあった。
それは……恋愛だ。
私は未婚だ。
悪役令嬢にならない道を選んだ結果、恋愛することなく、勿論結婚するもことなく、つまりは喪女として終焉を迎えようとしている。
ちなみに転生前の前世でも喪女だった。
いや、今さらそんなことを嘆いても。
恋愛より生存を選んだ結果なのだ。
恋愛していたら悪役令嬢街道を一直線、私は悲惨な末路を辿っていたのだから。
これで良かったのだ。そう思い、目を閉じた瞬間。
全てが終わった。
◇
臨死体験をすることになったのは8歳の時だった。
家族でピクニックに来ていて。
二人の兄と弟の4人で遊んでいた私は、誤って足をすべらせ、湖に落ちた。
そこで溺死しかけたところを助けられたのだ。
この国の皇太子に。
そこで私は覚醒する。
そして自分が何者であるかを思い出した。
私の名前はシャーロット・スウィーニー。
スウィーニー公爵家の長女。
そして覚醒して思い出したこと。
それは私が乙女ゲーム『ハッピー・ラブ・タイム』――通称『ハピラブ』の悪役令嬢であることだ。
え、なぜ?
私は悪役令嬢シャーロット・スウィーニーに転生し、でもフラグを折り、80歳まで生き、天に召されたはずだ。なぜにまた悪役令嬢シャーロット・スウィーニーに転生しているの?
え、これが乙女ゲームの世界だから?
リセットボタンでまた悪役令嬢のやり直し?
悪役令嬢を回避する方法は……もう分かっている。なにせそれで一度回避を成功させているのだから。それなのにまた、悪役令嬢シャーロットに転生しているって、どういうこと?
もう生き延びる方法は分かっている。だから……この後、私がすべきこと、それは悪役令嬢回避のレールの上を、前回同様辿るだけだ。しかも回避後の人生も、すべて分かり切っている。
え、同じことをまた繰り返せって言うの?
なんのために?
悪役令嬢の回避ルートを周回しろということ?
もう正直、訳が分からない。
一度、断罪回避したのだから、もういいでしょうと思ってしまう。しかも早速、ヒロインの攻略対象の一人、皇太子に出会っている。出会っているというか、命を救われた。それだけではない。皇太子と共に彼の護衛騎士もいた。勿論、攻略対象。さらに、皇太子の学友である宰相の息子もいた。いうまでもない攻略対象だ。
もう世界は私を悪役令嬢に仕立てるためにやる気満々なのだと思ったのだが。
気づいたのである。攻略対象との年齢差に。
今の私は11歳だ。
だが、皇太子も護衛騎士も宰相の息子も14歳なのだ。
悪役令嬢シャーロットが断罪されるのは、18歳。
学園の卒業記念の舞踏会の場だ。
だがしかし。
私と攻略対象は3歳の年の差がある。
私が18歳の時、攻略対象は21歳。
既に彼らは学園を卒業している。
つまり……私を舞踏会の場で断罪することは……できないのだ!
そこでもしやと私は気が付く。
80歳という人生を全うする刹那。
私はこう考えていた。
心残りがあった。
それは……恋愛だ。
転生前も転生後も、喪女として死ぬことを嘆いた。
もしかすると運命の神様は。
2度も喪女として生を終える私に同情したのではないか?
何より、再度私を悪役令嬢に仕立てようとしたところで、私はそれを難なく回避できるのだから。意味がないと分かっていると思うのだ。
だから間違いない。
これは2回も喪女として死ぬことになった私へのセカンドチャンス(やり直し)なのではないか。悪役令嬢になる必要はない。心残りの恋愛を好きなだけすればいいと。
念のため、残り二人の攻略対象の年齢も確認した。学園に留学してくる隣国の第二王子。公爵家の次男。共に14歳だ。
ちなみにヒロインは男爵家の長女でこちらの年齢も確認したが、14歳だった。
攻略対象とヒロインは勝手に同学年で学園に入学し、そこで出会い、恋に落ち、結ばれる。そこに悪役令嬢の私はいない。
私は私で勝手に自分と同世代の若者と恋愛を謳歌する。
これで2度も喪女で終わった私の人生の汚名も返上できるというもの。
そう理解した瞬間。
心は晴れやかになり、この2度目の乙女ゲーム『ハピラブ』の転生を心から喜んだのだが……。
なぜだろう。
攻略対象がやたらと私に絡んでくるのですが……?
お読みいただき、ありがとうございます!
一度断罪回避をしているのに、二度目の転生!?
ということでこれからシャーロットはどうなっていくのか。
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