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僕を取り巻く感情  作者: ちぃたろ
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九話 実は凄い人なのです

 国王様がベルを振ると、ゴーンゴーンという音が廊下に鳴り響きました。

ベルを振る事により、外にある音響装置から音が出るしくみのようです。

残響が鳴りやむと、大きな両開きの扉をマヨルとメノルが開き、扉の真ん中、三歩下がった辺りにマジョルドが頭を下げて立っています。

まずは一礼した兵士が二人入り、その後ろをマジョルド、マヨルとメノルが室内から扉を閉めて、国王様の前へと歩いてきました。

兵士が二人、また国王様の両隣に立ちます。


 「マジョルド」

 「はい」

 「ゼロワンの出生時に国民登録の手違いがあった。すぐさま国民登録を済ませたまえ」

 「かしこまりました」

 「それと、彼には知識が豊富にあり、才能がある事が分かった。今日からウッドフォレス研究所の一員として今宵はラーニンと共に過ごす事とした。マヨルとメノルは今後、ゼロワンの従者として仕える事とする」

 「かしこまりました」


さすが双子です。

声がぴったりと合わさっています。

マジョルド、マヨルとメノルは席を外されていたから、僕のロボット問題について、きっと聞かされていないのでしょう。


 「以上だ。下がりたまえ」


僕とラーニン、マジョルド、マヨルとメノルは国王様に深々と頭を下げて、大きな扉から国王の間を後にしました。


 「私は仕事をしてまいりますので、後の事はマヨルとメノル、頼みましたよ。ゼロワン、また後程お会い致しましょう」

 「では、客室にご案内致します」


 マジョルドと別れて、マヨルとメノル、ラーニンと共に客室へと向かいます。

いくつもの扉があり、その一室の扉をメノルが開けました。


 「こちらです」


客室の扉が開かれると、その先には広々とした部屋がありました。


 「こちらがトイレ、こちらがシャワールームとなっております。お着替え、タオル等はこちらのクローゼットに。テーブルにはお飲み物やお菓子のご用意もありますので、お気軽にご利用ください。御用がございましたら、こちらのボタンを押してください。私達の耳に直接届きます」


マヨルとメノルの指差す耳の穴には小さな機械が付けられていました。


 「ありがとうございます。この機械は何ですか?」

 「この遠隔通信機も先程のベルも、ラーニンの研究により生まれた発明です。私共では構造などさっぱり分かりません」

 「研究、発明、開発、技術、その全てを一人で行う…まるでドクタナ博士のような偉大な人材であるというのに」

 「あ、あ、あ、あるというのに…?ぼ…僕はドクタナ博士のような、い…偉大な事は…出来ませんよ…」

 「見ての通り、自信というものがないのです」

 「お掃除ロボットやご飯を運んでくれるロボット、赤ちゃんのゆりかごを揺らすロボット等もラーニンが作ったのですか?」

 「そうですよ」

 「ぼ…僕は、満足していません…」

 「僕の知り得る知識の中で、ラーニンの技術はこの国の最先端技術です。まだまだ探求心があるという事は可能性も無限大です」

 「そういう事になりますね」

 「ラーニンは国王様より仰せつかっている事があるでしょうから、私達はこの辺で失礼致します」


 マヨルとメノルが部屋を出て扉を閉める音がしてから、客室はとても静まり返りました。

僕から何か話しかけた方がいいのか、ラーニンの言葉を待った方がいいのか、僕は少し間を持つことにしました。


 「ぼ…僕は」


ラーニンが絞り出すような小さな声で切り出しました。


 「き…君に悪意もなければ、く…国のたたた…為に、か…解明するなんて気持ち…これっぽっちもない…ぼ、僕は、き…君に興味はあるけれど、起爆装置発動だけは…困る…。ぼ…僕は、僕のきょ…興味のある事に、じ…人生を注ぎたいんだ…だから…」

 「ラーニンの興味のある事とは何ですか?」

 「ド…ドクタナ博士が…、つ…作ったような…ロボットを…つ…作る事…です。こ、こんな事をい…言ったら、こ…国王様に…し…失礼だと分かって…います。で…でも、ぼ…僕は…く…国の為に…君を…解明したいのではなく…自分の為に…き…君の事が…知りたい…」

 「ありがとうございます」


先程までずっと俯いていたラーニンが急に顔を上げました。

それと同時に、まるで別の誰かが入れ替わったかのように、流暢に話し出しました。


 「ド…ドクタナ博士は、僕の尊敬する偉大な博士です。僕は足元にも及びません。祖父から父へ、父から僕へその偉大さは語り継がれています。前研究所の所員はみなロボット開発の事は口を閉ざし、ドクタナ博士の提出した情報のみを公表出来る内容としました。そのロボットの名前も作り方も非公表でしたので、祖父も父に何も教えてくれる事はなく、後の研究者達にもその内容は伏せられ、僕達は何も知りません。しかし、最近になって祖父が描いたデッサンが発見されました。研究の結果、それがロボットのデッサンなのではないかと結論が出ました。この事は国王様にはまだご報告していません。そして、そのデッサンの顔とゼロワンの顔はあまりにも違い過ぎるのです」

 「そうですか」

 「だ…だから、き…君が、その…が…該当するロボットじゃ…なかったとしても…そうだとしても…ぼ…僕は…君を…調べたいです…」

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