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僕を取り巻く感情  作者: ちぃたろ
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七話 この国の歴史を初めて知りました

 「さぁ、着きました」

 「足元にお気をつけて」

 「ありがとうございます」


 マヨルとメノルの後に続いて馬車から降りると、執事やメイドが僕にお辞儀をしました。


 「はじめまして。僕はゼロワンです」

 「ようこそおいでいただきました。私は国王の執事を務めているマジョルドと申します。長い移動でお疲れの所、申し訳ございません。早速ではございますが、王の間で国王がお待ちでございます」

 「こちらへどうぞ」


大きな両開きの扉をメイド二人が開け、僕は促されるまま中に入りました。


 「失礼します」


僕はマジョルドの後ろに付いて長い階段を上がり、僕の後ろにマヨルとメノルが付いて歩きます。

広い廊下には靴の音だけが響き、豪華な扉の前で止まりました。


 「こちらが国王の間でございます」


今度はマヨルとメノルが扉を開け、先に入ったマジョルドが一礼しました。


 「失礼致します。ジャグワス国王様、お客様をお連れ致しました」

 「うむ、入りたまえ」


ステンドグラスの色とりどりな光が差し込む長いカーペットの先から国王様の声が響きました。

先程同様、マジョルドの後ろに僕、そしてその後ろにマヨルとメノルが付いて、国王様の元へ向かいます。

数段の階段の上、立派な玉座に座って、両隣には腰に剣を下げた兵士が二人立っています。


 「はじめまして、国王様。僕はゼロワンです」

 「お初にお目にかかる我がウッドフォレスの国王ジャグワスだ」


偉い身分の者に対する振る舞いを学んでいる僕は、片膝をついて頭を下げました。


 「うむ。ゼロワン、先日の勇敢な人命救助活動、誠に大儀であった。クリエア地区の国民より、多くの署名もあって、名誉国民の授与を行う事にした」

 「ありがとうございます」


僕はまた頭を下げました。


 「そして、もう一つ…ゼロワン以外は席を外してくれたまえ」

 「はい、かしこまりました」


マジョルド、マヨルとメノル、そして兵士の二人までもがこの国王の間を後にします。

扉が閉まる音が響くと広々とした国王の間は静けさに包まれました。


 「その人命救助の際、炎にも燃えず、黒煙にも中毒にならず、無傷であったと消火隊より報告を受けている。間違いはないか?」

 「はい、間違いありません」


僕は結局、国の機関で調べられるのだと予想しました。


 「うむ。君について調べさせてもらったが、今日迎えを送った通り、君はドクタナ博士の家に住んでいる」

 「はい」

 「君と博士との関係を教えてもらいたい」

 「博士は…」


 僕は博士に作られたロボットであり、博士との制約でロボットだと知られてはいけません。

あらゆるシステムを辿ってもプログラムが停止してしまい、何も言えなくなりました。


 「我は君に悪意を持って接しているわけではない事をここに誓う」

 「はい」

 「君は…ドクタナ博士の作ったロボットではないのか?」

 「……」


国王様を前にしても、それだけは知られてはいけません。

知られてはいけないのです。


 「では、こちらから話をしよう。今から六十年前、この国に隣接する三国、クアンベリ・アスラ・ディアクアそして我国ウッドフォレス、この四国が一つの国であった事は知っているな?」

 「いえ、知りません」

 「なんと…この事実は学校でも学ぶ事であり、全ての国民が知っている歴史であるが…」

 「知りません」

 「そうか。では、話を戻そう。この四国が一つの国カトルフィアという名前だった頃、隣接する領土の合わさる土地にチェト研究所があった。いや、我も幼い頃だった為、記憶にはなく、宮殿書庫に残された歴史書や前国王の父からの話でしか知り得ない。今ではもう領土添いに研究所の中までも高所塀で隔たれ、研究所の中は荒れ果てている。この話を博士から聞いた事は?」

 「いえ、聞いてません」


 国の歴史を始め、その国々の名前も、一つの国だった事も、研究所の事も初めて知りました。

博士の書物、文献にはそういった情報は一つもありません。

国王様は低い唸り声を上げて、自らの立派な髭を撫でました。


 「君はウッドフォレスの国民全員が知っている国の歴史やチェト研究所の存在に関して、本当に何も知らないと?」

 「はい」

 「ふぅ…ドクタナ博士が現在もご存命であれば百歳。しかし、この国の平均寿命は七十歳。君は見る限り三十歳前後であろう。君と博士は何年間を共に過ごしたと言うのだ?生まれたばかりの君を一人置いて、博士は亡くなったというのか?平均寿命を越え十年、二十年共に過ごしたと?今も生きていると?他の誰かが君を育てたのか?」

 「質問に答えられる項目はありません」

 「何故だ?」


僕の見た目が三十歳前後であっても、三十年間もの年月を博士と共にし、三十年前に博士とはお別れをしていて、今現在、生きているかどうかも僕は知らないのです。

嘘を付こうにも最善の答えが見つかりません。

嘘を付いても不思議だと思われる事を僕はアイヴァンとの会話で学んでいます。


 「博士の目撃情報は三十年前が最後だ。君が三十歳前後であれば、博士が亡くなった後、博士の家に勝手に住んでいる者という事になる」

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