五十三話 僕達は宮殿の研究所にいます
マヨルは居住地の方へと向かい、僕達は宮殿の研究所へ向かいました。
「ラーニン!!!」
勢いよく駆け寄ってきたのはソフィアナです。
「心配したんだからね!!!」
オドオドしているラーニンを思い切り抱きしめてソフィアナは泣いています。
「ご、ごめんなさい……ぼ、僕は……大丈夫です……い!痛いですよ……」
ラーニンは顔を真っ赤にして、ソフィアナから離れようとしました。
それに気付いたソフィアナもパッと手を放し、焦っています。
「ご、ごめんなさい……無事で良かった。さぁ、奥へどうぞ」
ソフィアナは涙をぬぐうと、僕達を研究所の奥へと招き入れました。
「おかえりなさい、所長。これがラデスか……」
「おう!俺が闘争のラデスだ!」
研究員達はラデスの勢いに押され、後ずさりしています。
「ほ、本当に大丈夫なのか?」
「俺は何もしねぇーよ!検査ってやつをしてくれるんだろ?頼むぜ!」
ラデスは怯える研究員達を尻目に、台へと寝そべりました。
「ま……まずは……ぜ、全身を……見て……いきます」
ラーニンがラデスの体へとコードを這わせ、持ち上げたり、曲げたりと動きを見ています。
「……ラデス、君は潤滑剤を使用した事はありますか?」
「んいや?じゅんかつざい?って何だ?」
「これです」
ラーニンは僕が使用している潤滑剤と同じような容器を取り出して、ラデスの可動部へと注入しました。
ラデスはその様子を不思議そうに見ています。
「終わりました。腕や足を動かしてみてください」
「ん?んん?なんかすっげー動かしやすいぜ!何だこの水!!」
「これは機械を動かしやすくする液体ですよ」
「見た事ねーな!」
「ラデスの可動部は摩耗を起こすほど鈍くなっていました。このまま使い続けていたら急に壊れていた可能性が高いです」
「そうなのか⁉ラーニンに出会えてよかったぜ!」
その後もラーニンと研究員達は専門的な会話をしながらデータをまとめました。
「今日の所はこの辺にしておきましょう。ハロウに関してもまだまだ分かりかねる事が多く、他の兄弟の事も調べる必要があると思います」
「俺には分からない事だから協力しか出来ねぇけど、何かあったら言ってくれよな」
「僕も出来る限り協力します」
「ありがとうございます。アグゼストの目的はハロウという可能性もあります」
「なるほど」
「だからマリンメイにも近付こうとしてるのか⁉」
「もしくは四国を混乱に巻き込み、乗っ取ろうとしている他国からの使いの可能性もありますし、今は何とも言えませんが、マリンメイやメアベールへの危害が心配です」
「だな!早くこの国を直して助けに行くぜ!なぁ!兄ちゃん!」
「そうですね。早急に復旧作業を行う事が最善です」
僕達が話をしているとソフィアナがソワソワしている様子を感知しました。
「ラーニン。ソフィアナからお話があるようです」
「え⁉」
ラーニンがソフィアナの方へ振り向くと、ソフィアナは首を振っています。
「大丈夫よ!話を続けて」
「いえ、僕達の話は終わりました。ラーニンとソフィアナも現況の報告等があるでしょう」
「そ、そうですね……きゅ、宮殿での……け、研究進捗の……報告を……」
「分かったわ」
ラーニンを見てすぐさま駆け寄ってきたソフィアナはラーニンの事をとても心配していると推測し、二人の時間を設けた方が良いと判断しました。
ソフィアナは僕の方へ軽く会釈をして、ラーニンと共に奥の部屋へと向かいます。
入れ違うようにマヨルが研究所へ来ました。
「只今戻りました」
「お時間が足りなかったのではないですか?」
「いえ、有意義な時間を過ごす事が出来ました」
「それはよかったですね」
「おぉー良かったな!子供も喜んでただろ?」
「はい、ありがとうございます。この後はメノルに家族の時間を過ごさせていただいてよろしいでしょうか?」
「是非、行ってあげてください」
「ありがとうございます」
「楽しんで来いよー!」
ラデスとメノルは胸に手を当ててお辞儀した後、ラデスはニカッと笑い、メノルに手を振り見送っています。
こうしてそれぞれ家族や同志と交流し、束の間の時間を過ごす事が出来たのではないでしょうか。
これからまた、街の再建に向けて多忙となり、宮殿に帰ってくる事もしばらくないのではないかと推測します。
そして夜も更け、国民が寝静まった頃を見測り、馬車に乗り込みました。
帰りの馬車でラーニンの首飾りをしている事に気付いたラデスが声を上げます。
「ラーニンのその首飾りは何だ?」
「こ、これは……ソ、ソフィアナから……」
「何か意味のある首飾りなのですか?」
「お、お守り……だと……言ってました」
その様子を見ていたマヨルとメノルが微笑みながら、服にしまっていた首飾りを見せました。
「マヨルとメノルも貰ったのか⁉」
「はい。私達も妻から貰いました」
「飾りの造りはそれぞれ違いますが、これは愛する想いの人を案じるお守りです」
「え、えぇえ……」
ラーニンの顔は見る見るうちに赤くなっていきます。
それまで掛けられたままにしていた首飾りを服の中へ慌ててしまいました。




