五十一話 国王様の元へ向かいます
ここからもまだまだ長く続く宮殿の門まで、ラデスはキョロキョロと目を丸くして見回しています。
「すっげー何ここー」
「国王の住む宮殿の敷地内です」
「ウッドフォレスの国王様ってすげーんだな!」
「ご無礼のないようにお願いしますよ」
「分かったぜ!」
相変わらずニカッと笑うラデスを見て、メノルとラーニンは呆れた表情で笑いました。
宮殿までの長い道のりの合間には所々道が分かれていて、家並みや大きな建物が並んでいます。
まるで小さな街のようです。
不安そうな面持ちで見守る人々と、その後ろに隠れている子供達が顔を覗かせています。
「父様ぁ!」
その中から一人の男の子が満面の笑みで馬車の方へと走り寄ってきました。
「ダメよ!マルクス!」
母親らしき女性が呼び止めると、男の子は立ち止まり俯いています。
「……はい、母様」
ラデスはその様子を見て、辺りを伺いました。
「父様って?誰だ?」
「彼は……兄さんの息子です」
「マヨルの子供か!なぁ、止まってやろうぜ!」
「なりません。私達は任務中です」
メノルはいつになく引き締まった表情をしています。
「マルクスは父ちゃんに会えて嬉しそうだったぞ⁉」
「ですが、私達は国に仕える者として公私混同してはなりません」
「何でだよ~」
「久しぶりに家族と会える事はとても嬉しい事だと知っています。マヨルとメノルは僕の所へ来てから、家で過ごす時間はなかったのではないでしょうか。僕と過ごした時間の長さは、人間にとってとても長い時間なのではないかと判断します」
「そう……ですね。こちらへ出向く事があっても家族に会う時間はありませんでした。ですからマルクスが兄さんを見て駆け寄ってきた気持ちは分かります。ですが、兄さんがジュディの歩みを止めないという事は私と同じ考えだからです」
「ハァア、人間ってめんどくせぇーな」
「それでは、国王様とのお話が終わってからご家族の時間を過ごされてはいかかでしょうか?」
「有難い提案ですが、そのような時間が取れるでしょうか……」
「ぼ、僕も……ど、どのような……は、判断が下されるか……わ、分かりませんが……け、研究所で……ラデスを……詳しく検査したいので……」
「その時間を家族との時間にあてるとご家族も喜ぶのではないかと判断します」
「分かりました。ありがとうございます。お心遣い感謝します」
メノルは胸に手を当てて、お辞儀をしました。
「何だそれ!かっこいいな!」
ラデスはメノルの真似をして胸に手を当て、お辞儀をしています。
真似をされたメノルは少し微笑むと、また真剣な面持ちへと表情を変えました。
「そろそろ宮殿の門へと到着致します」
「おう!」
「……い、いよいよ……ですね」
しばらくしてジュディの歩みが止まると、マヨルが荷台の扉を開けます。
「到着致しました。足元にお気をつけて降りてください」
順番に降りていくと、目の前にはいつものように凛々しく立つマジョルドと怯えたように震えるメイド二人が出迎えてくれました。
「お待ちしておりました」
マジョルドは僕の方を見て一礼すると、ラデスに鋭い視線を向けます。
震えるメイド達は宮殿の扉を開き、僕達を招き入れました。
僕が初めて宮殿に来た時のように、マジョルドの後ろには辺りをキョロキョロと見渡すラデス、そしてマヨルとメノル、その後ろに僕とラーニンがついて歩きます。
長い階段を上り、僕も一度来た事のある国王の間の前へと立ちました。
それからマジョルドはラデスに向かい、小さな声で声を掛けます。
「今から国王にお会いしていただきます。くれぐれもご無礼のないよう、よろしくお願い致します」
「分かったぜ!」
相変わらずの調子でラデスが返事をすると、マジョルドは一度咳払いをしました。
「マジョルドです。侵入者を連れて参りました」
「入りたまえ」
マヨルとメノルが扉を開けると、国王様の玉座へと続く長いカーペットの左右に兵士がずらりと並んでいます。
マジョルドが一礼し、ラデスに声を掛けました。
「前へ」
ラデスは終始キョロキョロとしながら国王様の前へと歩みを進めます。
「すっげぇ~みんな水持ってんじゃん!」
「……お静かに」
マジョルドが静かに注意すると、ラデスも真っすぐ前を向いて、国王様の前で止まりました。
「我はウッドフォレス国王ジャグワスだ。その者、名を何と言う?」
「俺の名前?」
「そうだ」
「ラデスだ!戦闘のラデス!ゼロワンは俺の兄ちゃんなんだぜ!」
国王様は大きな咳払いをしてから、ラデスに厳しい表情を向けています。
「聞かれた事だけ答えるように」
「んじゃ、質問は何だ?」
国王様に対してもいつもの態度を見せるラデスに、マヨルとメノルの表情は益々引きつっていきました。
「我はマヨルから報告を受けている。ルワゴマタ王国からの支援が得られず、生活難に陥ったアスラに対し、アグゼストという者にそそのかされ、感染させられたラデスは自己コントロールを失い我が国を破壊した。間違いないな?」
「そうだぜ!悪い事をしたと思ってる!本当にごめんなさい……アスラにまだアグゼストが居るかも知れねぇし、行って俺が倒してくる!あ、あと!マリンメイは妹なんだ!手紙が来たって、アグゼストかも知れねぇって思って!だから助けに行く!その後なら、壊されてもいいから!」




