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僕を取り巻く感情  作者: ちぃたろ
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五十話 馬車の中で僕達は話をしました

 「それではソフィアナに聞いてみるというのはいかかですか?」

 「ソ…ソフィアナは……元々、フォラムス地区の出身なので……け、研究所に……就職してからの付き合い……です」

 「そうでしたか」

 「以前、お話した通り、ラーニンは女性からの人気はあります。地位目当てなんて言われる事もありますが、それだけではなく、やはり研究の事になると人が変わり流暢に説明を始める所など、かっこいいと惚れている女性が多いです」

 「そ、そんな事……ないです」

 「私は見合いの話を全て断り続けている事を知っていますよ」


ラーニンはまた俯いています。


 「重圧、嫌がらせ、家庭内の事……原因となる出来事が何なのか分からないままではどうにも出来ません」

 「分かるまでには時間かかりそうだなぁ~」

 「そ、そうですね……」

 「まっ、今すぐどうにかしなきゃいけないわけでもねぇし、ラーニンも辛そうだからこの辺にしとくか!」

 「あ、あの……メノルに……お、お願いしたい事が……あります……」


ラーニンは拳をギュッと握って、顔を上げました。


 「何でしょうか?」

 「ぼ、僕に……な…何があったのか……級友達に……き…聞いてみて……もらえま……せんか?」


メノルは驚いた表情をした後、優しく微笑んで、ラーニンの手を握っています。


 「……分かりました。引き受けます。一歩前進、ですね」

 「ラーニン!やるじゃねぇーか!」

 「何か分かると良いですね」

 「ゼ、ゼロワンの……さ…最善策っていうの……真似……してみました」


馬車の中は喜びに溢れます。

その時、木々の隙間からちょうどクリエア広場の様子が見え、メノルが唇をキュッと締めました。


 「このような状況なので、少し時間がかかってしまうとは思いますが、待っていてください」

 「は、はい……い、いつでも……大丈夫……です」


 クリエア広場には炊き出しの仮設のテントが張られ、まだ人の往来はありません。


 「国民に気付かれないようこの時間に出てきてよかったですね。まだ炊き出しの準備前でジュディに気付かれていないようです」


森の木々から朝露が垂れ、少しずつ昇り始めた朝日が照らします。


 「今日は森を抜けて行くのですね」

 「街中を走ると国民を不安にさせてしまう可能性もありますし、今は道が壊れてしまっているので、車輪が上手く回るかどうか……宮殿からの馬車も旧道の森林道を使用しています」

 「そうですね。それではこの時間をお借りして、ラーニンにご報告があります」

 「な、何でしょうか?」

 「昨日のラデスの件ですが……」


僕はラーニンに昨夜の充電の事を報告しました。


 「なるほど。重要な情報をありがとうございます。ラデスは戦闘を主に考えられていますし、領土の状況も兼ねて充電速度を早め消耗速度を遅らせるように設定されているのかもしれませんね。アスラに電気も通っていないというのは驚きではありますが……」

 「石で灯りは作れるからな!」

 「アスラは原石の塊ですね」

 「そうかぁ?」

 「これは原石が何か分かっていませんね」

 「おい!メノル!また回すぞ!」

 「やめてください」


馬車の中が笑いに包まれる中、ラデスが急に声を上げます。


 「あ‼」

 「どどどうしましたか⁉」

 「急に大きな声を出して、何事ですか?」

 「マリンメイ!」

 「マリンメイがどうしましたか?」

 「どうしましたか?じゃねぇーよ、メノル!」

 「何でしょうか?」

 「マリンメイから手紙が来たんだよな⁉」

 「はい。『助けてお兄ちゃん マリンメイ』と手紙がきました」

 「って事は、アグゼストがディアクアにも行ったって事だろ⁉」

 「手紙が届いた時期からすると、ラデスより先にマリンメイと接触した可能性はあります。しかし、その後は何もありません。ラデスはウッドフォレスを手に入れるという目的で接触されたと推測しますが、マリンメイもそういった目的を持って接触しているのでしょうか?」

 「わっかんねぇけど!でもマリンメイを助けに行かなきゃいけねぇだろ!」

 「それは……国王の判断次第です」

 「メノルはそればっかりだな!」

 「しかし、国に関係する事を私達に決定する権利はありません」

 「今もアグゼストが何か悪い事してっかもしんねぇじゃん!壊されたくねぇとかそういうんじゃねぇーぞ?兄ちゃんだけじゃなくて、俺も居ればマリンメイを助けたり、アグゼストを倒したり、手助けになれると思ったんだよ!」

 「ラデスの言い分も分かります。しかし、一つ一つ、解決していく事です。見計らって私からも国王に提案してみますから」


ラデスは不服そうな表情をして腕と足を組んでいます。

 その後も森林道を走り続け、いつもより早く、宮殿の門に辿り着きました。

宮殿の門番達は様子を伺いながらざわつき、そのうち、門番長がマヨルに近付きます。


 「な、何用でしょうか?」

 「国王にご報告の為、参りました。マヨルです」

 「お、お伺いしております」

 「中にはメノル、ラーニンそしてゼロワンと侵入者が乗っています」

 「し、侵入者……か、確認させていただきます」


門番達は馬車の中を覗くと、ラデスを見るなり腰を抜かす者も居ました。

ラデスはそんな様子を不思議そうな表情でキョロキョロと見ています。


 「ど、どうぞ」


門番達は大きな重い門をギギギ……と開くと、マヨルはジュディを中へ歩ませました。

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