四十八話 三人は震えています
僕は充電全回復まであと半分という所で、ラデスの物音に反応し、目を開きます。
「何かありましたか?」
「俺、充電出来たっぽいぜ!」
「早いですね。僕はまだ半分です」
「そんじゃ、マヨルやメノルと遊んでくるな!ラーニンが起きたか見てくるか~」
ラデスは楽しそうな表情でコードを抜きました。
そしてまた扉を叩く音が聞こえます。
「マヨルです。どうしましたか?」
「ラデスの充電が完了したそうです。僕の充電はあと半分程、しなければいけません」
「そこにも差異がありましたか」
「そのようです」
「なぁ!ラーニンは起きたか?」
「ラーニンは少し前に起きてきて、食事を食べるとまた寝てしまいました。メノルは交代で仮眠中です」
「そっか~じゃあマヨル!俺と遊ぼうぜ!」
「私と……遊ぶんですか?」
マヨルは困惑しているようです。
「おう!何して遊ぶか~アスラでは肩車が人気だぞ!」
「私は大人ですので……」
「遠慮するなよー」
ラデスはマヨルを肩に乗せると、そのまま庭へ走り出しました。
「わわわあああ!ゼロワンは引き続き充電を!」
「分かりました」
マヨルよりも背の低いラデスが、マヨルを肩に乗せて、庭を走り回っています。
「どうだー?楽しいだろ?」
「皆が起きてしまいますから、静かな遊びをしましょうあわわわわ!」
「騒いでるのはマヨルだけだ!ひゃっほー!」
「ラデスもでぁあああ」
メノルやラーニンが庭に出て行く音が聞こえましたが、僕は再び充電を始めました。
僕は充電中も聴覚が反応しているので、ラーニンとメノルの叫び声が聞こえていた事は言うまでもありません。
しかし、この叫び声の中には笑い声も含まれている為、僕の出番は無いと判断します。
しばらくして僕の充電はあと少しという所でしたが、起きている三人に食事を作る為にコードを抜いてキッチンへ向かいました。
「おはようございます」
「おはようございます」
「お、おはよう……ございます」
「兄ちゃん、起きたのか!」
皆で朝の挨拶をしましたが、三人はぐったりした様子です。
「肩車は楽しかったですか?」
「肩車したままラデスが走り回るのですが……早いんですよ!」
「め、目が……回り……ました」
「その後は石積み遊びとか薪割りもやったぜ!」
「す……素手で…割ってましたね」
「鉱山でも俺は素手だからなぁ!」
「素手で掘っていたんですか⁉」
「掘るっつーか砕くっつーか?」
「それでは高価な鉱石が粉々になってしまうのでは⁉」
「わっかんね~けど、ドーンってやってバーンってやってだな~でっけぇー塊のまんま運ぶ!それが俺達のやり方だ!」
「ドーンとバーン……」
「ルワゴマタ王国に運ばれてから細かく鉱石に分けているんですか?」
「そうだな。俺達は石の種類とかよく分かんねぇーんだよ。だから運んだ後はルワゴマタの奴らの仕事だ」
「鉱石の選別が終わった後で、その価値によって報酬が決められていたんですか?」
「いや、毎回同じだな。鉱石の塊を置いていく代わりに、数日分の食料と水を樽で持ち帰る。日持ちするようなもんも貰えるから、後回しにしといたそれを今は食ってる。それと果物の中に水みてぇなのが入ってるのを飲んでるぜ」
「過酷な環境ですね……」
「私も鉱石に詳しくはないですが、それではどんな高価な鉱石を納品しても見合わない報酬になっていた可能性がありますね」
「まぁ~価値のない石がいっぱいの時もあっただろうから仕方ねぇよ」
「それでは国の経営というものが立ち行かなくなっても致し方ないですよ。アスラ国内で、選別や加工まで出来ればこのような事にはならなかったかもしれません」
「そりゃそうかもな~でも知識がねぇから。六十年前だって他の領土に頼り切ってたんだぜ」
「そうは言っても一つの国でしたから、支え合っていたのです。でも今は……差し出がましいようですが、今後のアスラの事を考えれば、国営のやり方を学ばないと近隣国と対等に渡り合ってはいけないでしょう」
「俺にはよくわっかんねぇけど、ウッドフォレスはすっげー変わったし、やっぱウッドフォレスの力が必要だと思うんだよ!」
「今後の事は私達にも分りかねますが、こちらからはどうする事も出来ませんし、アスラの国王様が何とおっしゃるか……」
「そうだなぁ……あいつはあいつなりに頑張ってるし、頑固もんだからなぁ」
「自国の国王様にあいつとは、無礼な……」
「だって俺が育てたんだぜ?あの肩車が大好きなんだよ!」
「あの肩車が……」
そう言うとマヨルとメノルの身体が震えました。
「ラデスは拳で鉱山を掘り続けてきたのにも関わらず、拳には傷ひとつなかった。強化プレートの材料が分かれば、様々な物に使えるのに……何で作られてるんだろう。ロボットや兵備品にもプレートは使ってるけど、こんな強度は出ない。何種類か混ぜて……いや、形成の方法が違うのか……?」
マヨル達が会話をしていた最中も、ラーニンはブツブツと呟きながら、ずっと考え込んでいます。
そこへラデスが問いかけました。
「そういえば、ラーニンも二人居ねぇーか?」
「いいい、いないですよ!」
「ハキハキ喋るラーニンと、なんつーかオドオドしてるラーニンと……別人過ぎて双子なのかと思ったぜ!」
「ぼ、ぼぼ僕は一人です。く……癖?ですかね?け、研究の…事になると、ひ、ひひ人が変わると…よく言われます」
「へー!そんだけ研究が好きって事だな!」
「そう……なんですかね?」
「いつも夢中になって喋れば、ハキハキ喋れるんじゃねぇーか?」
「そ……そんな…簡単な事では……」
「そうだよな!なんか変な事聞いちゃって悪かったな!ただ、なんか辛いんならって思ってさ。俺はそのままで良いと思うぜ!なぁ?兄ちゃん!」
「はい。無理して変わろうとする必要はないと判断します。僕も六十年、変わる事が出来ていないので、すぐに変えられない事もあるのではないかと推測します」
「そ……それは。ぼ、僕の事は、べべ別……問題です」
ラーニンはそう言うと、眉をひそめて俯き、身体を震わせています。




