四十七話 充電を開始します
「確かに、メノルの言いたい事は分からなくはありません。自分の家族が殺されていたら事情が何であれ許せないと思いますが、人間で言えばラデスはまだ少年ですからね」
「なんか……ありがとな!俺、覚悟は出来てんだ!」
マヨルとメノルは寂しそうな表情で笑顔のラデスを見つめています。
僕には三人の表情の理由が分かりません。
静けさの中、僕の野菜を切る音だけが響いていました。
「なぁ、兄ちゃん。本当に何か手伝う事ないのか?」
「ありません。これが終わったら充電しましょう。残量はどのくらいありますか?」
「残量?何だそれ?」
「全てのロボットが充電残量を把握出来るわけじゃないんですね」
マヨルとメノルは目を丸めています。
「僕の充電残量は残り十パーセントです」
「分かんねぇ」
「どのくらいの頻度で充電しているのですか?」
「んー……鉱石をルワゴマタ王国に運ぶ時、充電させてもらってたんだよなぁ~だから二日三日しない時もあるぜ!」
「僕は一日に一回、必ず充電しています。普段は半分ほどしか使用しませんが、今日は色々な事がありましたから、充電切れを起こす前に充電しなければいけません」
「ルワゴマタ王国の方々はラデスがロボットだと知っているんですか?」
「国王様は知ってるなぁ~」
「よく悪用されませんでしたね」
「国王様はいい奴だからな!」
「他国の国王様をいい奴とは……」
マヨルは呆れたように笑いました。
「最後に充電したのは確か……」
ラデスがそう言うと、そのまま動かなくなり、マヨルとメノルが慌てています。
「どうしましたか⁉」
「ラデス⁉」
「故障してしまったんでしょうか?」
故障であればラーニンを起こさなければいけません。
僕は最善策を辿り、自らに起きた充電切れを元にラデスを充電した方が良いと判断しました。
「充電をしてみましょう。少し充電した後に、動くようであれば充電切れを起こしていると考えられます」
「分かりました。では、蓄電池の部屋へ運びましょう」
「僕が運びますので、お二人は温かいうちに食事を食べた方が良いと判断します。僕もラデスの再起動が確認でき次第、充電する必要があります」
「分かりました。お言葉に甘えさせていただきます。ゼロワンとラデスが充電中、私とメノルが交代で見張りをします」
「何かあればすぐ呼んでください。いただきます」
僕は出来立ての料理をテーブルに並べ終わると、ラデスを抱えて、蓄電池の部屋へ向かいました。
動かなくなったラデスを台に横たわらせ、充電コードを挿します。
しばらくすると、ラデスの身体に反応が見えました。
「分かんねぇや。いつだったかなー」
急に話始めたラデスでしたが、充電が切れてしまう前の話の続きをしているのだと判断します。
「先程、ラデスの充電が切れて停止しました。停止中の会話は聞こえていましたか?」
「え‼俺、充電切れた⁉ぜっんぜん聞こえてない‼」
「そうですか。このまま朝まで充電しましょう。僕も一緒に充電を開始します」
「兄ちゃんと充電するなんて久しぶりだな~」
そう言うとラデスは嬉しそうな表情をしました。
「僕はラデスと初めて充電します」
「もぉぉぉ‼記録どこ行っちゃんだよ‼」
今度は拗ねている表情です。
ラデスの表情は人間と同じように様々な変化が起こります。
すると、足早な足音が聞こえてすぐに扉を勢いよく叩く音がしました。
「マヨルとメノルです!」
「はい」
「よぉ!」
「ラデスの声が聞こえたので……充電切れだったようですね」
「そのようです。今回の件はラーニンと顔を合わせた時に報告します」
「お願いします」
「それでは、ラデスの充電を再開します」
「マヨル!メノル!兄ちゃん!また明日な!」
「見張っていますからね。おやすみなさい」
僕が充電切れを起こした際には聴覚だけ反応していましたが、ラデスの場合はそうではないようです。
それと充電容量も違いがありそうなので、報告対象とします。
ラーニンであれば検査の時に気付いているかもしれませんが、念の為、明日記録を提供する事としました。
「それでは、僕も充電を開始します」
「私達がラデスを見張っていますから、安心して、ゆっくりしてくださいね。おやすみなさい」
僕には安心を感じる事も時間の流れをゆっくり過ごす感覚もありません。
そうお伝えしようとしましたが、優しさを無下にしてしまう可能性があります。
「ありがとうございます。おやすみなさい」
僕はそれだけ言うと、充電を開始しました。




