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僕を取り巻く感情  作者: ちぃたろ
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四十六話 メノルが帰ってきました

 「そろそろ庭の片付けをします」

 「一緒にやるぜ!」

 「ありがとうございます」

 「これはどこに運べばいいんだ?」


 ラデスは持ち上げた食器を僕に見せています。


 「キッチンに運んでください」

 「キッチン?」


僕はラデスを連れてキッチンへ向かいました。


 「ここです」

 「これがキッチンっていうんだなー」

 「初めて見ましたか?」

 「初めてだ!アスラにはキッチンねぇ~からな!チェトにも俺達が生活してる部分にはなかったぜ」

 「アスラにはキッチンがないのですか?」

 「そうそう~何でも石の上で切ったり焼いたりしてるぜ!鉱石の中には燃える石もあるからな!」

 「燃える石があるんですね」

 「名前は知らねぇけど!」


アスラの生活はウッドフォレスとは別物だとラデスは先程も言っていました。

キッチン以外の調理場と言えば野外調理しか知りません。

調理に使える石があるという事を僕は記録に追加しました。


 「これが最後です」

 「片付け終わったな!」

 「はい。これから食器を洗って、皆の食事を作ります」

 「食器洗いは出来ねぇけど、俺に出来る事があったらやるぜ!」

 「椅子に座っていてください」


ラデスは椅子に座ると、不満そうな表情をしています。


 「いつも兄ちゃんが作ってんの?」

 「はい。博士と暮らしている時から僕が家事をしています」

 「ほ~んと、兄ちゃんは万能だなー」

 「書物を見れば同じものを作る事が出来ます。しかし自ら生み出す事は出来ません」

 「そりゃそうだろ。味知らねぇもんな」

 「そうですね」


 ラデスが笑っていると庭先から物音がしました。


 「何だ?」


身構えるラデスを制止し、僕は玄関に向かいます。


 「メノルです。ただいま戻りました」

 「おかえりなさい」

 「侵入者は落ち着いていますか?」

 「キッチンの椅子に座っています。今、マヨルとラーニンは仮眠を取っている所です」

 「マヨル……こんな時に仮眠など……」


玄関先で僕とメノルが会話をしていると、奥からラデスが顔を覗かせました。


 「って‼マヨルじゃねぇーか!寝たんじゃなかったのかよ」

 「侵入者……ですよね?」


戦闘中のラデスの様子とは違い、とてもにこやかに話すラデスを見て、メノルは驚いた表情をしています。


 「はい、侵入者のラデスです。そしてメノルはマヨルの双子の弟です」

 「えぇえ!そっくりじゃねぇか!」

 「ちょ、ちょっと待ってください……どういう事ですか?」


僕は帰宅してからの事を記録から抜粋し、簡潔に説明しました。


 「なるほど……ラデスはゼロワンの弟で、アグゼストという者によってウイルスに感染し、事件を起こしたと。そのウイルスというものが直り、このような状態になっているのですね」

 「はい、そうです」

 「何もしねぇって約束したけどよ、何かあったら俺に水をぶっかけてくれよな!」

 「は、はい。……何だか調子が狂いますね……急に力が抜けてきました」


メノルは頭を掻いて、大きな息を吐いています。

混乱状態を回復しようとしているようです。


 「今、食事を準備しています。食事を摂ってから仮眠する事を推奨します」

 「ありがとうございます。実はクリエア広場にて炊き出しを行ったり負傷者を病院へ送ったりと慌ただしく、食事を摂っていませんでした」

 「大変でしたね」

 「あ、あの……」


ラデスは両手をモジモジとさせて、あちらこちらに目を向けています。


 「ラデス?どうしましたか?」

 「……メノルにもちゃんと謝んねぇといけねぇな……本当に悪かったと思ってる。ごめんなさい」


ラデスはメノルに頭を下げました。


 「私からはその言葉に返答する事は出来ません。街は悲惨な状態です。国民も戦闘部隊にも多数負傷者が出ていますし、国王がどのような判断をなさるか……」

 「分かってるよ!俺、多分壊されるって事も分かってる……けど、直接謝れる人には謝りてぇんだ!」

 「そうですか。ではお気持ちだけ受け取らせていただきます」

 「おう!」

 「それでは、僕は料理を再開します」


 僕達はキッチンに戻り、メノルは水が汲まれている樽を傍らに置いて、ラデスの隣に座ります。


 「本当にこの水で停止するのですか?」

 「そのようです。身体を綺麗にした時も固く絞ったタオルで拭いていました」

 「アスラは雨も降らねぇし、濡れた事がねぇから分からねぇけど、ラーニンがそう言ってたから間違いねぇよ!」

 「そうですか。かけてみても良いですか?」

 「いいいいい良いわけねぇだろ⁉明日までは待ってくれよ!メノルってマヨルと本当に双子なのかよ⁉」

 「冗談ですよ。マヨルが聞いていたら怒られていますね」

 「メノル、私が何ですか?」

 「兄さん、起きたのですね。では、私が仮眠を交代しましょう」

 「逃げるんじゃありません」


 マヨルは生真面目で、メノルは少しお茶目な所がある事を僕は知っています。

ちょうど起きてきたマヨルにメノルの冗談を聞かれてしまいました。


 「ラデスは確かに悪い事をしました。しかし、ラデスの話が真実なのであれば……今日は笑っていてほしいと思ったんです。自分がもし操られて悪事を働いてしまい、処刑される事になるかもしれないと思ったら、最期くらいは家族と笑っていてもいいんじゃないかって。報われないじゃないですか。……そう思ったんです」


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