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僕を取り巻く感情  作者: ちぃたろ
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四十一話 一刻の猶予もないようです

 家に着くとすぐさま、僕は侵入者を蓄電池の部屋へと運び、台に寝かせました。


 「ゼ…ゼロワンもマヨルもここに居てください。ゼロワンのビリビリを先に解明し、自由に使えるように出来た方が侵入者復活の際には重要になりますが、いつ復活するか分からないので……侵入者が再度暴れ出さない事を祈って……」


ラーニンはそう言いながら目を瞑ると、両手をグッと力強く組んでいます。


 「それでは……始めます」


ラーニンはまず僕の充電口と同じ所を調べました。


 「ゼロワンの充電口と同じ場所に充電口があります。ロボットである事は確定しましたね」


それからいつも僕に繋いでいるコードを侵入者へ繋いでいきます。


 「身体もゼロワンと同じく、強化プレートが使用されています。更に、拳には強化プレートを何層にも使用している為、かなりの強度があります。これでしたら、ゼロワンがへこむのも頷けます。それから防火塗料も。稲妻のようなものに打たれて焦げていなかったのはこの塗料のおかげと言って良いでしょう。しかし、防水塗料は使用されていません。弱点は水です。暴れ出したら水をかける事で、回路が停止するのではないかと思います。防水塗料が使用されていない代わりにゼロワンにはない撥水・防汚加工がされています。ゼロワンのように水を浴びる事は出来ないにしても、汚れにくくする事で少量の水分を使用して清潔に出来る想定の加工でしょう。何故、ゼロワンと同様の防火塗料を使用しておきながら防水塗料を使用しなかったのか疑問です」

 「確かにそうですよね。水耐性にすれば撥水・防汚加工は不必要であったと私でも思うのですが…」

 「防水塗料の開発が出来ていない別の国のロボットの可能性も……また、チェト研究所で作られたロボットであるとすれば、それぞれ別々の特性を用いて実験する目的もあったと思います」

 「なるほど。……となるとゼロワンも実験対象……なんだか複雑な気持ちになります」




検査を進めているラーニンの眉間にシワが寄りました。

そして以前見た光景のように、紙を何枚も使って図形や数式を書いていきます。


 「こ…これは…」

 「どうしましたか?」

 「外側の検査が終了し、システムの検査を開始したのですが…」


 ラーニンは唾液をごくりと飲みました。


 「何かありましたか?」

 「機械にのみ影響のあるウイルスがシステムに感染しています。今はそのビリビリによって全システムが停止していると考えられるので、システムが復旧すると、現在停止しているこのウイルスも稼働し始めるでしょう」

 「機械にのみ影響のあるウイルス…とは何ですか?」

 「人間で言うと病気にかかっている状態です。しかし、街を出歩いていてかかるものではなく、人為的に、尚且つ意図的に行われなければかかる事はありません」

 「誰かが、このロボットを利用して攻め込ませたという事ですか?」

 「その可能性が高いです。このウイルスを使って、何者かが侵入者をコントロールしていたと考えられます」

 「侵入者が何か言おうとした時に、遠方から国王様の命令という言葉が聞こえました」

 「やはり…どこかの国の国王様が関わっていそうですね…チェト研究所のロボットであれば、アスラ・ディアクア・クアンベリ……」

 「今までこのような事は一度もなかったのに、何かあったのでしょうか…」

 「……まずは、このウイルスを取り除く事が先決です……ですが、僕の実績として、研究の為にウイルスを作成し、暴走の危険がない仕様のプログラムにわざと感染させ、取り除こうとしたのですが、思い付く全ての実行を拒否され、最終的にチップを分解し、感染出来ないようにして処分しました……ですから僕には……取り除く事が出来ません…もちろん、その作成したウイルスも厳重に処分しました」

 「それでは…策はないのですか?」


マヨルは不安そうな顔をしています。


 「ラーニンは以前、僕の検査をした時にウイルス防除と言っていました」

 「そうですね。あの時は驚きました。ゼロワンはウイルスの感染を防ぎ、尚且つそれでも感染してしまった際に自己除去出来るんです」

 「僕のそれを使用する事は出来ませんか?」

 「ゼロワンの中にあるプログラムやシステムですよ?僕には何も出来ません」

 「何をすれば僕の中のものを侵入者に使用する事が出来ますか?」

 「……ゼロワンのウイルス防除を複製し、移植……またはその構築された文字数式等の羅列を僕が侵入者の中に構築するしかありません。ですが、ゼロワンは外部からの接続に対し、役割の題名のみ公開されていて、複製も羅列の閲覧も不可能でした」

 「手立てはないのですね……」


マヨルが肩を落とし、落胆しています。

更にラーニンは頭を抱えてため息を吐きました。


 「……ハァ」

 「どうしたのですか?」

 「……最悪の事態です。侵入者のプログラム及びシステムが自己復旧を開始しました……。このままではウイルスもいずれ稼働を始めます」

 「私は念の為、水を用意してきます」」


マヨルは慌てて部屋を出ていきます。


 「ですが、先程の対処はあくまでも僕の仮定に過ぎません。どの程度有効化は不明です。今からゼロワンのビリビリを解明するか……それにしては時間が……」


マヨルは樽に水を汲み運び始め、ラーニンは髪の毛を掻きむしり、二人とも焦った表情をしています。


 「先程、システムを辿ったところ、ウイルス防除の文字数式の羅列を確認する事が出来ました」

 「本当ですか⁉ゼロワン、椅子に座ってください!接続を開始します!」


ラーニンは素早くコードを繋ぎ、ウイルス防除の項目を選択しました。


 「ダ……ダメです……こちらからだと、拒否されて閲覧出来ません」


マヨルはその言葉を聞いて、眉間にシワを寄せながら樽を近くに置きます。

その様子を見ながら僕はまた最善策を辿りました。


 「それでは僕が読み上げるので、それをラーニンが打ち込むというのはどうでしょうか?」

 「何文字ありますか?」

 「二千文字です」

 「に……せん……復旧完了予測時間は十分です。間違え入力は許されません。勝負は一回です。早急に取り掛かりましょう」


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