四十話 ラーニンの考察により状況が一変しました
「アイヴァンは今メノルと広場に向かっています。大きな擦り傷を負ってしまいましたが、命に別状はないと思います。ですが、念の為、検査を受けた方が良いでしょう。……それと、侵入者は…まだ公表出来ない事なのですが、今後どのような対応になるか分からないので、またこちらから連絡をするまで街に残っていただきます。……では、よろしくお願いします。……はい、何でしょうか?……はい、ゼロワンは大丈夫ですよ。その件につきましても、説明出来る時が来ましたら……はい。では失礼します」
マヨルは通信機を切って、ラーニンへ返しました。
「レミーナがゼロワンの事を心配していましたよ」
「そうですか。後程、お会いした時に感謝を伝えなければなりません。それと、アイヴァンに怪我を負わせてしまった事を謝罪します」
「ゼロワンは悪くありません。止められなかった私にも責任があります」
そんなやりとりをしていると、僕の身体はラーニンの方へと引き寄せられました。
「…………ちょちょちょちょ……ちょっと待ってください……‼ゼ、ゼロワン…このへこみは、どどど…どうしたんですか⁉」
「これは、侵入者に殴打され続けてへこんでしまいました」
「あ…あの時…、し…侵入者に…せ…戦闘部隊…では…歯が立たないと…聞いて……気が動転して…いて……い…今更ですが…これは…軍事利用に…当たるのでは…ないですか?」
「僕はシステムの最善策に従っただけです。それに、行きますと言ったのは僕からです。利用されたわけではありません。国民は助け合うものであり、僕は常日頃、国民の皆さんに助けられています」
「…ゼロワンが居なければ、ウッドフォレスは壊滅していたでしょう。遅くなりましたが…心より感謝申し上げます」
「あ、ありがとう…ございます…‼」
「いえ。こちらこそ、いつもありがとうございます」
深々と頭を下げる二人に、僕も深く頭を下げます。
「か…帰ったら…しゅ…修理しましょう」
「ありがとうございます」
「そ…そういえば、し…侵入者との…た…戦いは…どのような…じょ…状況…だったん…ですか?」
僕は簡潔に説明しました。
「ビ…ビリビリ?バチバチ?ですか?」
「はい。私は目撃していますが、稲妻のようなものがゼロワンから上へと集まり、侵入者へ直撃しました。」
「そ…そんな事が出来るなんて…」
ラーニンは眉間にシワを寄せ、顎を触りながら侵入者の身体を隅々まで見ています。
「それでは、宮殿へ侵入者死亡の連絡を入れます」
マヨルが宮殿用の遠隔通信機を取り出すと、ラーニンが手を伸ばして阻止しました。
「ま…待ってください…」
「どうしましたか?」
「い…稲妻のようなものが侵入者に当たったんですよね?」
「はい。それがどうしたのですか?」
マヨルは首を傾げています。
「ビリビリの正体は何か分かりませんが、稲妻のようなものが当ったとすれば…火傷をしているはずです。この通り、服は所々焦げていますが、侵入者の身体には外傷ひとつありません。そして、侵入者は一人で暴れていたのにも関わらず、人々や家並みに甚大な被害を出しました。また、銃弾が弾かれる、銃弾を避けて物凄いスピードで襲ってくる、そんな事が人間に出来るでしょうか?他国の上級戦闘員だとしても銃弾が弾かれるなんて事は考えられませんよね?それから…ゼロワンの強化プレートをへこませられる人間が居るとするならば、その人間の拳も粉々に砕けてしまいます。しかし、汚れているだけで、骨の異常は見られません」
「…どういう事ですか?」
「外傷なし…異常な戦闘能力…そんな事が可能であるとすれば、それは……ロボットであるとしか考えられません。それも、ゼロワンと同等の高性能ロボットです」
「…ロボットなのですか⁉」
「検査をしてみないと確証は持てませんが、現状からほぼ間違いないと思います。他国にそのような上級戦闘員が居ないとも限りませんが…。なので、また復活し、暴れ出す可能性もあります。侵入者がロボットであれば、脈が測れなくて当然です。ロボットには脈がありません。早急に検査が必要です」
ラーニンは眉間にシワを寄せ、肩で息をしながら侵入者を見つめています。
「それでは…私は宮殿へ、そのように連絡を入れます」
マヨルが慌てた様子で遠隔通信機を使用し、宮殿の者へ先程のラーニンの話を伝えました。
「宮殿の研究所へ運ぶよりも、ここから近いゼロワンの家で検査をお願い出来ないかゼロワンへ取り急ぎ確認してくださいとの事です」
「僕は大丈夫です。しかし、避難してきた人々が居ましたので、まだ街の様子を知らないとすれば、街へ下りてきていない可能性があります」
「それでは看護員へ連絡し、広場に停車している馬車で迎えを要請しましょう」
マヨルもラーニンも、遠隔通信機で慌ただしく連絡を取っています。
「か…看護員に…取り急ぎ…ゼ…ゼロワンの…家へ…む…向かって…もらいました」
「分かりました。こちらも話がまとまりましたので、荷台に侵入者を乗せ、ゼロワンの家へ戻りましょう。侵入者がまた暴れ出した際は、稲妻を発射させてくださいとの事を仰せつかりました」
そう言われたので、稲妻の発射方法を辿りましたが、どのシステムが作動したのか分かりません。
「僕はどのようにして稲妻が発射されたのか分かりません」
「え…⁉そうすると、復活してしまった際には…どうしたら良いのですか?」
戦闘を目撃していたマヨルは動揺しています。
「早急に侵入者の分析をしましょう」
マヨルがジュディへ跨ると、僕は侵入者と共に荷台へ乗り込み、ラーニンは座席に座るとすぐに目視での分析を始めたのでした。




