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僕を取り巻く感情  作者: ちぃたろ
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四話 火事の中でも無傷です

 翌朝、僕は庭から街を眺めました。

庭からは街を一望出来ます。

アイヴァンには来てほしいと言われ、母親には来ないでと言われ、僕はシステムを繰り返し繰り返し辿っていますが、答えが見つかりません。

まだ人通りの少ない街の中、昨日行った広場を見ると、近くの家から煙が上がっているのが見えました。

火事だとしたらきっと家の中には人が暮らしていて、火が回れば逃げ出せずにいたり、扉が開かなくなったり、崩れる可能性もあります。

そうこうしているうちに周りの家にも広がりを見せていきました。

子供達に関わらなければ、街へ行く事はアイヴァンの母親に許されています。

僕はその煙の方へと山を走って下りました。

誰かに頼まれたわけでもなく、自分の意志があったわけでもなく、システムが最善策を出した結果が僕の行動に反映されたに過ぎません。

しかし、今までの僕は街を眺める事や火事に気付く事もほとんどありませんでしたし、また火事に気付いた時にこんな風にシステムが反応した事はありませんでした。

僕はただ、走って走って、煙の方へと吸い込まれていったのです。


 「火事だ!」

 「すでに2~3軒延焼している!」

 「急げ!」


消火隊がすでに到着していて、四方八方からホースで家々に水がかけられています。


 「中に人は居るのか⁉」

 「誰か分かる者は⁉」


周りで見ている人々は息を飲んで口に手を当てていたり、自分の両手を握りしめていたり、穏やかな雰囲気ではありません。

僕のシステムの一つである人感センサーによって、二人の人体反応を感知しました。

燃え広がる家には一匹の動物の反応もあります。

物々しい雰囲気の中、僕は燃える家に入っていきました。


 「君!何をしている!離れなさい!」

 「危ないぞ!」

 「何を考えているんだ!」


怒号が聞こえる中、僕は燃え盛る炎をかき分けてセンサーが反応する方へ進んでいきます。

僕は防水加工に加えて、不燃加工もされているので燃えることも溶ける事もありません。

おまけに熱さだって感じないのです。


 「大丈夫ですか?」


一人を見つけ、抱えて声をかけると、ぐったりとしていました。

もう一人は別の部屋にセンサー反応があり、瓦礫に埋もれています。

積み重なる瓦礫を持ち上げ、片手ずつ二人を抱えて家を出ました。


 「人が居たのか!担架に乗せてくれ」

 「勇敢な行動に感謝するが、とても危険な…なぜだ…君は…火傷もしていない…のか…?」


消火隊員は僕を恐ろしいものを見るかのような目で見ています。


 「お兄ちゃん!私のお家にミーチェがいるの!助けて…」


規制線の向こうから、少女が泣きじゃくりながら大声で訴えています。

少女の言う〝ミーチェ〟はセンサーに反応した動物だと判断しました。


 「はい、いってきます」

 「な、な…何を…する気だ!やめさない!危ないぞ!」


消火隊員が止めようとしている中、僕は黒煙が噴き出す隣の家に入りました。

崩れ落ちた木片を踏み分けながら、センサーが反応している所まで向かいます。


 「あなたがミーチェですか?」


その動物は白黒のまだら模様の猫でした。

抱えて声をかけ続けましたが、反応はありません。

僕は痛みを感じない事と同時に相手の体温や鼓動も伝わりません。

だから生きているのかも分からないし、ミーチェを見てあの少女がどのような気持ちになるのかも想像がつきません。

僕はミーチェを抱えて黒煙の中から外へ出ました。


 「あれ?ゼロワン⁉ゼロワン!」


少女の元へ歩みを進めていると、僕の名前を呼ぶ声がしました。

そこに居たのはアイヴァンです。


 「おはようございます、アイヴァン」

 「火事にもゼロワンが居る事にも驚いたよ。こんなに汚れて…中に入ったの⁉︎」

 

アイヴァンはどうやら心配してくれているようです。


 「そこにいる少女の猫だと認識していますが、ミーチェが生きているのか分かりません。」

 「ミーチェ!ミーチェ!」


少女は今にも規制線から出てこようとして大人達に止められています。

僕は子供達に接してはいけないと言われているのに、少女やアイヴァンとまた関わってしまいました。


 「そこの女の子!ミーチェを病院で診てもらおう!」


アイヴァンは僕からミーチェを受け取り、抱きかかえて広場の方へ走っていきました。

その後を追うように少女は走りだし、その後ろをご両親であろう大人達が付いていきます。

僕もその後ろをついていこうとした時、消火隊員から話しかけられました。


 「君は!体は大丈夫なのか?」

 「はい、何ともありません」

 「燃え盛る炎にも燃えず、噴き出す黒煙の中、二酸化炭素中毒にもならないなんて…君は何者なんだ?」


何者かと問われて、分かりませんという答えは間違っていると知っています。

また僕は嘘を付かなければなりません。


 「僕は人間です」

 「それは見れば分かる。しかし…」

 「どうしますか、隊長」

 「人命救助してくれた事は助かるが、任意同行願う。悪いが従ってくれ」

 「僕が何か悪い事をしてしまったのでしょうか?」

 「そういう事ではない。人間の常軌を逸している君から話を聞かねばならない」


炎や煙の中にいた人間や動物は命に関わる状態であった事は間違いないです。

その中で、僕は無傷でした。

どんな嘘も通用しないでしょう。

しかし、博士との制約に反する事は出来ません。

きっと僕は身体中、調べられてしまう事でしょう。

僕のシステムが警告を鳴らしています。


 「あ!君!どこへ行くんだ!」

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