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僕を取り巻く感情  作者: ちぃたろ
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三十六話 侵入者の意図が分かりません

 クリエア広場の方まで行くと、騒々しい声や戦闘の音などを感知しました。


 「何が目的なんだ⁉」

 「くそぉ…全く歯が立たない…」

 「逃げろ!建物が崩壊するぞ!」


ただならぬ事が起きていると僕にも判断できます。

急いで向かっている道中、ジュディに追いつきました。


 「さすがゼロワンですね」


ジュディに跨るマヨルが僕に気付き声をかけてきます。

すると荷台に乗るメノルが顔を出しました。


 「宮殿の者とは連絡が付かず、状況が分かっていません」

 「そうですか。建物が崩壊するという声が聞こえました。全く歯が立たないとも言っています」

 「…急がなければなりませんね」


ジュディはよりいっそう駆け出します。

僕も後を追いました。

その後、マヨルがジュディを停止させると、メノルとラーニンが窓から顔を覗かせて辺りを見回しています。

この辺りはすでに破壊された後のようで、眉間にシワを寄せているメノルと、この世の終わりかのような青ざめたラーニンの顔が見えました。

家々は崩れ、至る所から煙が上っています。


 「これは…」

 「な…なんという…こ…事を…」


ジュディの前へ出ると、侵入者の姿が遠くに見えました。

僕が最善策を辿っていると、マヨルとメノルはジュディの前に立ち、銃を取り出して、侵入者に向けながら進んでいきます。


 「マヨル!メノル!よく来てくれた!だが…あいつに銃は効かない…」


血を流し、壁に寄り掛かる人が声を掛けてきました。


 「戦闘部隊長…⁉」

 「あぁ…ほとんどの部隊員は負傷し、今は家々を壊されるがまま…住人の避難は済んでいるが…我々ではもうどうする事も出来ない…訓練はしていたが、このような事は一度も起きた事がない…完全に我々の実戦不足だ…」


戦闘部隊長はうなだれています。


 「銃が効かないとはどういう事ですか?」

 「物凄い速さで攻撃をしてくる…弾が当たらない程のな」

 「他国の戦闘能力者でしょうか…」

 「兄さん、…どうしましょう?」

 「遠くから射撃するしかないのでしょうか」

 「無理だ…あいつは弾を避けて向かってくる…」

 「なんと…」

 「兄さん、何か策を…」


二人が頭を抱えている間、僕も最善策を辿り、システムが出した答えを二人に伝えました。


 「僕が行きます」

 「ゼロワン⁉」

 「何を言っているんですか⁉」

 「僕の身体でしたら攻撃を受けても大丈夫かもしれないと予測します」


荷台から下りれず、固まっていたラーニンにも聞こえていたようで、窓から顔を出しています。


 「だ…大丈夫だと…ほ…保障は…で…出来ませんが…に…人間よりはるかに頑丈ですから、侵入者に対抗出来るのではないでしょうか。しかし、ゼロワンは人に危害を加えてはいけないという掟を守ってしまうと思います。ですから今だけはそれを解除しましょう。ここまでの事をする者であれば、万が一死に至っても致し方ないでしょう」

 「そうですね…そうでもしなければこの国は…」

 「国王様の判断・指示・許可を待つ猶予はありません。私、マヨルも賛成します。人に危害を加えないという掟は一時解除し、ご協力を願います」

 「危険を感じたらすぐさま引いて下さい。ゼロワンでさえ歯が立たないのであれば、この国に対抗出来る者はいません。私、メノルも掟一時解除に賛成します」

 「分かりました」


僕は『人に危害を加えてはならない』という掟を一時解除しました。


 「私達は負傷者をこちらへ運びましょう」

 「分かりました、兄さん」

 「ぼ…僕も…で…出来る事があれば…」


ラーニンは震える足を叩きながら荷台から下りてきます。


 「ラーニンはこの辺りの負傷者の手当てをお願いします。荷台に簡単なものがありますから、それを使ってください」

 「はい…!ま…まずは戦闘部隊長の手当てから…始めます!」

 「…面目ない…」


手当てを始めるラーニンを背に、僕は侵入者の方へと向かいました。

侵入者は武器を持っておらず、素手で建物を破壊し続けています。

侵入者の声が感知する範囲に入った時から今まで、侵入者は何も言葉を発していません。

僕は歩みを進め、建物を破壊する侵入者まで十メートルの所まで来ました。


 「こんにちは、ゼロワンです」


僕は挨拶が大事な事を知っています。

立ち止まり、挨拶をしました。


 「?」


侵入者は僕の方を振り返り、素早い速さで僕に近付きます。

そして、いきなり僕の顔を殴りました。

やはり痛くありません。


 「どうしてこんな事をするのですか?」


僕の挨拶も問いかけも無視して、服に付いた帽子を深くかぶったまま、こちらを見る事もなく僕を殴り続けます。

顔を狙ってくるので、僕は顔を腕で隠すと、今度は脇、脇を隠せば顔…と、戦闘をした事のない僕は殴られるがままです。

見様見まねで僕も殴ってみましたが、のけ反って避けられてしまいました。

その拍子に侵入者の帽子が外れ、顔が露わになった侵入者を見ると、色黒で健康的な、およそ二十歳前後の青年だと判断します。

片方の口角を上げて、笑っているように見えました。

しかし、どのような感情なのか分からないような表情をしていて、相手の表情からは何も読み取る事が出来ません。

挑発しているような、嘲笑っているような、その表情は少しも変化する事なく、ずっと片方の口角を上げて笑っています。

そして、今も尚ずっと僕を殴り続け、僕は避ける事も出来ず、ただただ時間が過ぎていきます。

僕が殴られている間は、街を破壊される事がないので、今現在の最善策を実行する事が出来ていると言えます。

しかし、この状況をどうにかして打破しなくてはなりません。

僕は殴られ続けながらも、最善策を辿り続けます。

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