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僕を取り巻く感情  作者: ちぃたろ
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三十五話 不思議な手紙が届きました

 「僕が開いて良いのでしょうか?」


誰に宛てた手紙か分からないので、マヨルに確認を取りました。


 「ここは博士の家ではありますが、現住人はゼロワンですから、ゼロワンが開けてください」


マヨルにそう言われ、封筒の中に入っている手紙を取り出し、僕は読み上げます。


 「『おにいちゃんたすけて マリンメイ』」

 「それだけですか?」

 「はい」

 「マリンメイ…どなたかご存じですか?」

 「いえ、僕は知りません。マリンメイという人がお兄ちゃんに宛てた手紙という事のようですね」

 「博士には兄弟の登録はありませんでしたし、ラーラさんのように家族登録のないご家族だとしても、博士の妹となるとご存命も危うい年齢なのではないかと思われるのですが…」

 「そうですね」

 「それと…山奥にある家はこの家くらいなので配る家を間違える事が難しいのではないかと思います。宛名が無くてはこの国の配送人も配送出来ません。…不思議な手紙ですね」

 「兄さん、マジョルドに国民登録の照合依頼をお願いしてみたらどうでしょうか?」

 「そうだね。ゼロワンの許可があればすぐにでも依頼します」

 「はい。よろしくお願いします」


マヨルは遠隔通信機でマジョルドへ連絡を取りました。


 「はい、そうです。よろしくお願いします。失礼致します」

 「兄さん、どうでしたか?」

 「少し時間がかかるそうです。折り返しの連絡を待ちましょう」


それから皆マリンメイの事や手紙の事を気にしながらも各自仕事をします。

そして夕刻になり、遠隔通信機でマジョルドから連絡が来ました。


 「そうですか。分かりました。ありがとうございます」

 「兄さん、マジョルドは何と言っていましたか?」

 「マリンメイという名前の国民は居ないようです。マジョルドから国王様にご報告はしていただきました。どこの誰かも分からない状況で助けに行く事も出来ないので、現状何も出来ません」

 「そうですよね」


結局、マリンメイが誰なのか、お兄ちゃんが誰なのかも分からないまま、手紙は戸棚で保管する事になりました。

その後、マリンメイからの手紙が再度来る事はありませんでした。

そんな不思議な手紙が来てから数週間後の日中、宮殿用の遠隔通信機が鳴りました。

僕はマジョルドから新たな情報が入ったのではないかと推測しましたが、違ったようです。


 「はい、マヨルです」


遠隔通信機の向こうからいつもより大きな声が聞こえてきます。


 「街に侵入者あり!宮殿から戦闘部隊派遣済み!しかし多数負傷者あり!応援を要請する!」

 「⁉」

 「繰り返す!街に侵入者あり!宮殿から戦闘部隊派遣済み!しかし多数負傷者あり!応援を要請する!」


そのまま遠隔通信機は切れました。


 「何事ですか?」

 

メノルがマヨルに問いかけますが、遠隔通信機ではそれしか言っておらず、事態の把握は出来ていないようです。


 「メノル。戦闘準備をして、街に向かいましょう」

 「このような事は今までありませんでしたが…嫌な予感がしますね」

 「僕も一緒に行きます」


僕に何が出来るか分かりません。

しかし、何か出来る事があるかもしれません。


 「えぇええ…ぼ…僕は…ゼロワンが行くのであれば…行かなくては…」

 「宮殿の戦闘部隊に負傷者が出ているとの事ですので、街の被害も出ている可能性があります。ゼロワンには救助をお願いする事になるかも知れません」

 「分かりました」


準備をしていると庭先から慌ただしい声が聞こえてきました。


 「ゼロワン!街に来てください!」

 「助けて!」

 「火事の中、人命救助するゼロワンを見ました!あなたならこの事態を助けてもらえるのでないかと!」

 「どうかお願いします」


手と手を握り祈るような国民や土下座をする国民など、庭先に数十人の国民が集まっています。


 「今、街へ行く所です」

 「あぁぁ…お願いします」


街を見下ろすと、一部から煙が上がっていて、まるで火事が起きているかのようです。

ここまでは街の騒ぎは聞こえません。

坂の方を見ると、次々と国民が登ってくる姿が見えました。


 「皆さんはここに居る事が最善だと判断します。マヨル、メノル。僕は後から追いかけます。先に向かってください」

 「分かりました」


マヨルとメノルはラーニンを荷台に乗せるとジュディに跨り、先に街へ下りていきました。

僕は急いで家のキッチンテーブルや椅子、タオルやシートを出します。

 

 「足りないかもしれませんが、お使いください」

 「ありがとう、ありがとう」


震えている者、泣いている者、子供を抱えてオロオロとしている者、老人の背中を支えている者、続々と増えていきます。

僕はお昼ご飯で出す予定だったご飯やおかず、お菓子や果物、飲み物などをテーブルに並べました。


 「僕は街へ向かいます」

 「ありがとうございます」

 「ありがとう」


僕に頭を下げ続ける国民達を背に僕は走り出します。

フォラムス地区とクリエア地区のちょうど真ん中辺りで、侵入者が暴れているようです。

すれ違う国民達は逃げ惑い、僕は一人一人に聞こえるように発声器を使います。


「山の上に避難してください!」


街の付近に居るよりも山の方が安全だと判断したからです。

その声を聞いた国民は博士の家だけでなく、いくつかある山の方へ逃げていきました。

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