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僕を取り巻く感情  作者: ちぃたろ
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三十三話 記録の復旧を試みました

建物を取り囲む柵の一角に鍵のかかった柵の扉があります。

ギギギと鈍い音を立てて、マヨルが扉を開けました。


 「あちらに見える高い塀の向こうはアスラ、向こうの塀がディアクア。十字に塀が建てられているので、ここからは見えませんがこの向こうがクアンベリです」


建物をまるで無視しているように塀が立ちはだかっています。


 「塀を建てる際に、塀部分の建物を壊したようで、崩れている部分がありますから念の為、ご注意ください」

 「分かりました」


扉から建物に続く道も雑草をかき分けて歩きます。


 「建物には崩れている部分から侵入出来てしまうので扉は空いたままです。さぁ、お入りください」


建物の上に塀が突き出ていたように、中にも塀がありました。


 「この国は四方八方、高い塀の中にあります。森に囲まれていますから普段は閉塞感を感じませんが、このように壁を目にすると、分断された事実を身に染みて感じます」

 「歴史も国王様にお会いした時に知ったので、このような塀で囲まれている事を初めて知りました」

 「私達も塀が見えない暮らしをしているので、普段はそのような事を気にも留めていませんが、歴史を振り返ると、どうしてこのような事になってしまったのかと胸が痛みます」

 「た…建物の中央は…広場でした。ここが塀の十字になっている中心です。それぞれの領地を同じ広さだけ提供していて、ここがその中心となります。当時の研究員達がここで談笑している絵を一枚見た事があります。そこにロボットの姿はありませんでしたが…」


建物の中にガラス張りの広場があります。

塀を建てる時に脆くも粉々になったのでしょう。

多くのガラスが散らばって花や草の隙間、土の中に刺さっています。

きっと踏み荒らされたと推測しますが、また芽を出し、咲いたのでしょう。

色とりどりの花が何事もなかったかのように咲いています。

空から差し込む太陽の光と共に、花の色が散らばったガラスに反射して残ったガラス壁に映り、自然のステンドグラスのようです。


 「あの休憩所は四つ、それぞれの領地に建てられていたようです」


天井が無くなった事で雨にさらされていたのでしょう。

白い地の上が黒ずみ、藻が生えています。

僕はありとあらゆる場所に目を向け、ここで博士や他の研究員、そして僕の他に三体居るロボットについても記録を辿りました。


 「機械類も全て運び出して新しい研究所で使用されている為、残されている物は瓦礫くらいです」

 「ここを見て何かを思い出すという事は難しいかもしれませんね」

 「そうですね。記録の復旧はありません」

 「そうですか…」


それでも各部屋を周り、僕も出来る限り記録の復旧を試みている時、聞き覚えのある足音が近付いてきました。

僕の音感センサーは森の入り口付近まで聞き取る事が出来ます。

なので、森の中に護衛であろう大人の足音や声もずっと感知していました。

その他にも動物が喉を鳴らす音や鳴き声も聞こえます。

必要ないと判断した音だけをシステムが消音したり、音を小さくしたりしてくれるので、とても便利です。


 「だから付いてくるなって言っただろ」

 「アイヴァンがいつも一人で危ない事するから!」

 「マリルに関係ないだろ!」


聞き覚えのある足音の正体はアイヴァンとマリルです。

危険が起きていないかずっと感知していましたが、喧嘩が始まりました。


 「森の中で迷子になったら、もう帰れないよ…」


二人は護衛に見つからずに侵入したようですが、子供には背丈の高い雑草もあり、護衛所を過ぎた辺りをグルグルと回っていて一向に進んでいません。


 「ラーニン、マヨル。アイヴァンとマリルが森で迷子になっています。救出へ向かいます」

 「え⁉アイヴァンとマリルが⁉私も一緒に向かいます」

 「…や…やっぱり…つ…付いてきて…たんですね…」

 「お二人はここに居てください。何やら獰猛な動物の音も聞こえます」

 「それなら尚更…私は装備を常備しています」

 「分かりました」

 「ぼ…僕は…足手…まといに…なりそうなので…ここに…います…」

 「救出次第戻ります」

 「分かりました」


獰猛な動物はアイヴァンとマリルに気付いたようで、二人の方に匂いを頼りに近付いているようです。


 「ねぇ、アイヴァン…」

 「…。」

 「マリルはいつも心配してるんだよ」

 「…関係ないだろ!」

 「関係あるよ!だってマリルはアイヴァンの事が…」


僕は人感センサーを頼りに、獰猛な動物よりも先にアイヴァンとマリルの元へ辿り着かなければなりません。


 「アイヴァンの事が好きなんだもん‼」

 「⁉マリル‼危ない‼」

 「グルルルルル…」


勇気を出したであろうマリルの告白はまるで無かった事のように、獰猛な動物はアイヴァンとマリルを見つけてしまいました。


 「マヨル、先に向かいます」

 「ハァハァハァ…わ…分かりました…」


マヨルは僕の速さに息を切らしながらずっと付いてきましたが、それでは間に合わないと判断し、僕は先を急ぎます。


 「グルルルル…」

 「アイヴァン…」

 「マリルは逃げて」

 「アイヴァンも…」

 「僕がおとりになる。早く!」

 「やだ‼」

 「マリル!」

 「足が…足が動かないよ…」

 「くそぉ…」

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