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僕を取り巻く感情  作者: ちぃたろ
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三十二話 僕は今の僕の事がますます分かりません

マヨルが博士の寝室へ行き、メノルが見張りの交代をしました。

それほどまでにラーニンの検査は長時間に及んでいます。

そろそろラーニンも就寝した方が良いと判断しますが、今のラーニンはとどまる所を知らないといった様子です。


 「そうだよ!ロボット自身が検査依頼をするなんて聞いた事もない。ロボットは壊れたら停止する、自分の不具合にだって気付かない。故障や不具合に気付くのは人間でしょう。ゼロワンとずっと過ごして、そういう感覚が当たり前になってたけど、博士が言った書物を読み自らに活かすまでは所有者の指示だから理解出来る。でも自分の不具合に疑問を持った。そんな事有り得ない…」

 「ラーニン」


ラーニンは僕の声にハッとした顔をしました。


 「ご、ごめんなさい…つい、む…夢中に…」

 「寝なくて大丈夫ですか?」

 「そうだ、ゼロワンはいつも周りを気遣うんだ。ロボットが気遣うなんて…最善策を割り出すシステムが心配までするというのか?」

 「睡眠不足は身体に良くない事を知っています。なので心配をしているわけではなく、睡眠をとった方が良いのではないかという判断であり、提案です」

 「ますます興味深い…例えば、僕が泣いていたらどうしますか?想像してから答えてください」

 「僕はマヨルに励まし方を教ったので知っています。肩を叩いて励まし、話を聞きます」

 「では、ソフィアナが泣いたらどうしますか?」

 「同じことをします」

 「レミーナがまた泣いたらどうしますか?」

 「同じことを…」

 「マヨルに聞いた後に出来なかった事が出来ますか?」

 「レミーナにも…同じ事を…」

 「これは…⁉︎空間であったこの部分が少し光っています。何でしょう…」


先程、僕のシステムは嘘を付いていました。


 「レミーナが泣いたら動作システムが誤作動を起こすのではないかと予測します」

 「きっと特別な存在なのでしょうね」

 「ラーニンやソフィアナも特別な存在だと判断します」

 「それだけじゃない感情というものがあります」

 「そうなのですか」

 「ソフィアナの僕に対する感情は察する事が出来るのに、レミーナのゼロワンに対する感情は察せないとは、その辺りも人間さながらです。僕もソフィアナの気持ちは皆から聞くまで分かりませんでしたが、レミーナのゼロワンへのよそよそしさは感じました。人間もそうなのです」

 「僕には今回の出来事がとても難しいです」

 「人間だっていつも自分の感情が分かるわけじゃありませんから。ぼ…僕だって…ソフィアナの事…じ…自分が…ど…どう思っ…てるか…分かりませんし…」

 「人間の感情が複雑だという事は知っています」

 「だからゼロワンの感情だって複雑です。誤作動だって人間にも起きますし、今のゼロワンは新たな自分の発見に戸惑っている状態かもしれません。自分に感情が生まれたと思って生活してみてください。そうだ、一度検査は終了して、朝になったらチェト研究所へ行ってみましょう」

 「分かりました」


ラーニンと僕は蓄電池の部屋を出てメノルに終わった事を報告すると、メノルは博士の寝室へ、ラーニンは書庫へ、僕は蓄電池の部屋の鍵を閉めて充電器を挿しました。

僕に感情があるとするならば博士は喜んでくれるでしょうか?

僕にとってレミーナが皆以上に特別な存在という事はどういう事でしょう?

書物から得た情報では自分の身に起きている事が解読不能です。


 翌朝、レミーナが家を出た後、メノルはアイヴァンと留守番をする事になりました。


 「今日は休日だったのですね」

 「うん、だから僕も行きたい!どこに行くの?」

 「お仕事なので、アイヴァンはメノルとお留守番していてください」


アイヴァンは頬を膨らませて拗ねているようです。


 「じゃあ友達と遊んでくる」


結局、途中までアイヴァンが付いてきてしまい、マヨルとラーニンは焦っているようでしたが、街の入り口まで来ると、アイヴァンは街の方へ向かいました。


 「いってらっしゃい」


そして、アイヴァンの姿が見えなくなり、少し時間を空けてからマヨルとラーニンと共に僕はチェト研究所へ向かいます。

僕達は街の入り口から山際に沿って森の方へ進んでいきました。


 「アイヴァンは賢い子ですから付いてこないか心配ですね。護衛に保護されるとは思いますが…」

 「よ…予定を…へ…変更すれば…良かったのですが…昨日の今日でもう居てもたってもいられず…」

 「ラーニンらしいですね。私もチェト研究所へ研究員の護衛で何度か訪れていますが、昔はどのようなお姿だったのかと知りたくなります。何だか異様な雰囲気さえ感じますよ」

 「そうなのですか」

 「はい。もう少し歩くとこの先、護衛所があります。塀の向こうからの侵入者やチェト研究所への侵入を阻止する為に配備されている者の詰所です。一度も侵入された事はないのですが」


マヨルがそう言うと、護衛所が見えてきました。


 「国王様の従者マヨルです。こちらは研究所のラーニン。宮殿より通達があったかと思いますが、こちらがゼロワンです」

 「かしこまりました。お気をつけて」


護衛の方へ挨拶を済ませると、森の細道をまだまだ歩いていきます。

細道の方へも雑草が生い茂り、手や足でかき分けながら進んでいきました。


 「も…もう…ず…随分来ていませんから…ざ…雑草が…凄い…ですね。し…資料は全て回収済みですが、何か新しい情報があると良いです。昨日のゼロワンの胸の辺りの反応について、とても興味深く…チェト研究所でも何か反応があるでしょうか」

 「どうでしょうか」


随分長い間歩くと、目の前に木々に囲まれた大きな建物が見えてきます。


 「もう少しです」


建物の周りは一層雑草や木々が生い茂り、立ち入る者を拒んでいるようにさえ見えました。


 「ここがチェト研究所です」

 「何か思い出しましたか?」

 「いえ、何も分かりません」

 「そうですか…」

 「鍵を開けます」

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