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僕を取り巻く感情  作者: ちぃたろ
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十二話 制約は無効です

 それから何時間経過したのでしょうか。

僕の最低稼働充電に達しました。


 「発声システムと応答プログラムがわずかに反応しました。一旦、⒮端子を外します」

 「分かった」

 「ゼロワン、聞こえますか?」

 「はい、ラーニン。ありがとうございます」

 「充電切れで間違いないですか?」

 「はい。今日はシステムの消耗が予測以上となってしまい、充電が切れてしまったようです」

 「き…きっと僕が責めてしまったせいです。ゼロワンなりに答えを探し、答え方を探し、いつも以上に消費させてしまったのでしょう」

 「ラーニンのおかげで僕は復旧出来ました」


僕はまだ完全稼働可能充電に達していなかったからか、自分がロボットである事を隠す事が出来ませんでした。


 「ゼロワンは本当に高技術な高性能ロボットです。驚きました。さすがドクタナ博士です。恐れ入りました。またしばらく充電します。最大まで充電したら外します」

 「ありがとうございます」


僕は再び充電の為、目を閉じました。

その後、僕の充電は完全に復旧し、全てのシステムとプログラムが作動しました。

他の研究員は居なくなっていて、隣にはラーニンだけが居ました。


 「充電終わりました。少し調べさせてもらいましたが、ゼロワンの体内には火薬及び起爆装置は発見されませんでした。その他、危険個所もなく、骨組みの潤滑剤も十分でした。ドクタナ博士とお別れしてからはどなたが潤滑剤を?」

 「ドクタナ博士との制約で自らメンテナンスを行っています」

 「それは凄い…充電も自分で?」

 「はい、それが制約の一つです」

 「制約は他に何があるのですか?」

 「一、人間に危害を加えてはならない。二、自ら充電及びメンテナンスを行い、清潔に過ごすこと。三、書物、文献を読み、自らに活かすこと。四、ロボットだと知られないようにすること。です」


 「なるほど。それでゼロワンは頑なにロボットではないと言っていたんですね」

 「はい、僕はロボットではありません」


 ラーニンはアイヴァンのように笑いました。


 「何か面白い事がありましたか?」

 「君はこんなに高性能なのに、そういう所が本当にロボットなんだと感じます」

 「僕はロボットではありません」

 「分かりました。制約に違反した際の罰則は何ですか?」

 「罰則は分かりません。博士は何も言っていませんでした」

 「そうですか。制約書は交わしていますか?」

 「いえ、博士からそう言われた事を守っています」

 「なるほど。制約の四つ目はロボットだと知られないようにすること。ですよね?」

 「はい」

 「僕はゼロワンがロボットだと知っています。肌材には強化プレートを使用、防火防水の塗料も塗られていて、火事の救出で無傷だったのも納得しました。それと人感センサーが搭載されているので、短時間で救出の情報も納得しました。そして、システムも多種に渡り、人感・聴覚・視覚・発声・会話応答・記録・学習機能・最善策対策・考察・判断・ウイルス防除…凄い量です」

 「僕がロボットだと知られているのならば、僕はこれから何が変わってしまうのでしょうか?」

 「何も変わりません」

 「どういう事ですか?」

 「ドクタナ博士は違反した際の罰則を告げていない…それは罰則がないという事です」

 「そうなのですか?」

 「通常、制約というものは制約書を交わし、違反した際の罰則を記し、お互いの同意であるという証明を刻印と共に残して成立するのです。博士との制約は簡単な口約束と同じで、知られる事によるリスクを最小限にする為のものでしょう。ありもしない起爆装置と同じようなものです。ゼロワンは何年間、この罰則のない制約に縛られていたのですか?」

 「僕は博士とお別れしてから三十年間、制約を守ってきました。最近になって人と関わるようになり、知られない為に嘘をついたり、説明を考えたり、僕にはとても難しい事でした」

 「頑張りましたね。もう知られても大丈夫です。制約は無効なのですから」


ラーニンは僕が制約に違反したのではなく、制約自体が無効だと確かに言いました。

僕はもう嘘をつかなくて良いという事になります。


 「あ、一つだけ。これは制約書とは関係なく、ロボット全てに適用される事なのですが、人に危害を加えない事、これは絶対の決まり事です。忘れないでください」

 「分かりました」

 「ぼ…僕も…寝ます…。ゼ…ゼロワンは…お…お部屋に…戻られ…ますか?」

 「はい。ですが、客室の場所が分かりません」

 「そ…そうです…よね…。え…遠隔通信機で…マヨル…に…」


 それだけ言うとラーニンは僕が先程まで横になっていたベッドに突っ伏して寝てしまいました。

部屋にある時計を見ると、早朝に差し掛かる真夜中の時間を針がさしています。

ラーニンは僕の為にこんなに遅くまで奮闘してくれたのです。

マヨルもきっと寝ている事でしょう。

僕はラーニンの寝ている隣の椅子に腰かけて朝を待つことにしました。


 「おはようございます。あら、ラーニンたらゼロワンを差し置いてこんな所で…」

 「おはようございます。僕の為に四時間ほど前まで頑張ってくれていましたから、ゆっくり寝る事が最善だと判断しました」

 「ゼロワンって優しいのね。ラーニンは普段はおどおどしてるけど、頼りになるのよ。むしろこの研究所ではラーニンが居ないと何も回らないの」

 「そうなのですか」

 「えぇ、ゼロワンがシステム停止していた時に聴覚システムは聞こえてるはずって言ってたけど、周りの誰もが何も分からずにアタフタしてたでしょう」

 「ラーニンは本当に凄い研究者だと思います」

 「そうでしょう。本当に素敵な人よ。…あ、自己紹介がまだだったわね。私はソフィアナよ。ラーニンの下で働いている研究者なの」

 「よろしくお願いします」


僕には恋心など分かりませんが、書物で知り得た恋の描写によく似ています。

頬を赤らめながらラーニンを褒めるソフィアナはラーニンの事が好きなのではないかと判断しました。

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