十一話 初めて充電が切れました
それから僕はソファに腰かけると、明日の授与式で話す事、そしてラーニンへの上手な嘘の付き方、これからの事をたくさん予測しました。
ですが、ラーニンへの上手な嘘の付き方は決定する事が出来ません。
僕がロボットではない証拠を見せなければなりません。
ですが、僕は否応にもロボットでしかないので、判断が及びません。
何度も何度もシステムを辿り、外をふと見ると空がオレンジ色になっていました。
そして、僕の充電が少なくなっている事をシステムが知らせます。
充電器は家にあります。
充電は十分してきましたが、今日は何度となくシステムを辿った事で、予測外の消耗になってしまったようです。
この残量だと明日までもちません。
今から家に走って帰り一時間、充電に六時間、戻ってくるまで一時間です。
朝には間に合いますが、僕がここを出るには門番に説明が必要です。
そして、最も重大な問題ですが、一時間走って帰る際に、充電が切れる予測です。
どうしたら良いのでしょうか。
静止状態であっても、充電切れ予測時間はあと二時間です。
グルグルと最善策を検索し続け、そのまま初めての充電切れとなりました。
しかし、まだ最小限のシステムは予備電力で起動しているようで、聴覚システムが働き続けています。
そのうち扉を叩く音がしました。
音声は使用できないようで、応答する事が出来ません。
「マヨルとメノルです。ご不在ですか?簡単ではありますが、夕食をお持ち致しました」
「兄さん、寝ているのでは?」
「うーん…でも困った事になっていたら大変だ」
「そうだね、兄さん」
「開けてみよう」
マヨルとメノルが扉を開けた音がしました。
「寝てるのかな」
「兄さん、寝ているみたいだよ」
「また時間を改めようか」
「そうしよう、兄さん」
マヨルとメノルは食事を運ぶカートロボットを操作し、出ていったようでした。
それから一時間後、またマヨルとメノルの声がしました。
「ゼロワン?夕飯をお持ち致しました」
「まだ寝ているようだね、兄さん」
僕はまた応答する事が出来ません。
このままこうしていれば充電が回復していくのかさえ分かりません。
「それにしてもこの物音で目を覚まさないとは」
「ラーニンに相談する?兄さん」
「そうしよう」
マヨルは遠隔通信機を使って、ラーニンに連絡を取っているようです。
「ラーニン、聞こえますか?マヨルです。ゼロワンが寝てしまっていたようで、一時間後にまた来てみましたが、この物音でも起きません。そうですね、お疲れなのかもしれません。はい、また後程、様子を伺いに来てみます」
マヨルとメノルが部屋を出た後、今度はラーニンが来ました。
「だ…大丈夫…で…ですか?」
無反応な僕を見て、ラーニンは慌てているようです。
「ぼ…僕が…せ…責めるような事…い…言ってしまったから…ですか?わわわ、ど…どうしよう…と…とりあえず、研究所に運ばないと…」
今度はラーニンがマヨルとメノルに遠隔通信機で連絡を取りました。
「ラララララーニンです…ゼ…ゼロワンを…ゆ…揺らしてみたの…ですが…う…動きません…い…今から…け…研究所に…は…運んで…もらえま…せんか?は…はい、い…医務室ではなく…はい…」
それからすぐにマヨルとメノルが部屋へ入りました。
「ラーニン、担架を持ってきました」
「あ…ありがとう…ございます…」
「メノルは足を持ち上げて」
「はい、兄さん」
僕には元々感触が分からないので、どのような状況か分かりませんが、担架に乗せられて運ばれているようです。
「このお方がゼロワンですか?」
「は…はい…」
初めて聞く声がざわめきとなって複数聞こえてきます。
「ラーニン、どちらへ寝かせますか?」
「こ…ここへ…」
「分かりました。メノルは足を」
「はい、兄さん」
僕は担架から下ろされたようです。
僕はこれから何をされるのでしょうか。
ここが研究所である事は間違いなさそうです。
「マ…マヨルと…メ…メノルは…、は…外して…ください」
「分かりました。何かあればご連絡を」
「は…はい。あ…ありがとう…ございました」
僕はただ充電が切れているだけなのですが、ラーニンに気付いてもらえるでしょうか。
研究所内がざわめく中、ラーニンはブツブツと小さい声で何かを言っています。
「ラーニン、何か分かったか?」
「れ…例の起爆装置は付いていないようです。装置らしきものは映っていませんし、火薬のような反応もありません。現在の状況は…ゼロワン、聞こえますか?聞こえているはずです。聴覚システムがわずかながら反応しています。他のシステムは全停止。何が起きているのでしょう。しばらく考えさせてください」
「分かった」
ラーニンはまたブツブツと呟いています。
それからどのくらいの時間が経ったでしょう。
「そうか…なるほど。電力源に繋いだ⒮端子のコードを持ってください」
「分かった」
「ここがゼロワンの充電口です。⒮端子のコードを繋げて様子を見ます」
ラーニンは僕の充電口を見つけました。
充電口はとても分かりにくくなっていて、凹凸もなく、プログラムの指示で開くので、何らかの形で僕のプログラムを操作しているようです。
他の研究員は動揺した様子が声から予測出来ますが、ラーニンはその声だけでも、勇ましく堂々としている姿が予測されました。
本当に、博士に匹敵するほどの天才なのかもしれません。




