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誰かバンビに顔をつけて

多彩な霊感講師さとみが、世の中をぶった切る、冒険譚です。

「誰かバンビに顔をつけて」


そうタイトルを付けて、Instsgramに自作の水彩画を投稿したのが、賢治さんとの出会いのきっかけだった。水彩絵具で、ささっと、森の背景画を描いていた。背景画を描くのは好きだったが、昔から顔を描くのが嫌いで面倒だったこともあり、そんな面倒な顔の描写は、ちゃちゃっと、他人に任せたほうが良いのです。サブメッセージに小さく、「どうか子鹿の顔を描いてくださいな」と、わかりやすく書き添えたのが、効果てきめんだったようだ。


いつもよりは「いいね」の数も多かったようでした。そして、翌日になって、「バンビの顔を描いてみました」との投稿があった。賢治さんといういつもの常連さんでした。


気付くと、インスタのメッセージから、同じ「バンビの顔を描いてみました」との投稿とともに、バンビの画像が送られてきたのです。私の投稿した画像の上に、とてもチャーミングな顔をしてたたずむバンビが描かれていました。もうびっくりです! ちゃちゃっとと描けたらと思っていた以上に、意外にもちゃんとした絵が描かれていたのです。「ベリーナイス!」と返信しました。


人生は一度きりの旅のようなものです。面倒なことや自分が嫌いなことは、人にやってもらうのが手っ取り早い。あざとさも必要不可欠。バンビ効果はまさに、てきめんでした。来年のわたしの個展開催まで、ばっちり作品準備はオッケー! きっと成功して、一流アーティストの仲間入りをするだろう!


それから数回、インスタでメッセージのやり取りをして、賢治さんと東京都内の喫茶店で会うこととなりました。「賢治」と名乗っていたそのおじさんは、見た目は中年初老のジェントルマン、中肉、中背、当世代の中ではやや高身長、といったところだ。アーユルヴェーダ的にみれば、「ヴァータ」的体質のようだ。「ヴァーダ」とは、アーユルベーダ的に、好奇心が旺盛で活発的、想像力豊かで、芸術的、創造的な性格を持っている。新しいことや変化にとんだ環境を好む傾向がある一方で、気まぐれで飽きっぽい性格もあるとされている。悪くない。そう思って賢治さんとの交際をスタートさせたのだ。


賢治さんに会った印象は、アーユルヴェーダ的には「ヴァータ」的体質のようだった。それは間違いないが、少々印象的に違っていたのが、耳のかたちだった。耳とは血統を大きく印象付けるものであるとされ、賢治さんの耳には、特別な血統的優位な印が見てとれなかったのである。それが気がかりの一つであった。血統的優位性の高い王子を期待していた私にとっては、いささか不如意な出会いになってしまったことは否めなかった。


彼は「賢治」と名乗っていたが、その名前が本名だとは限らないし、こうしたネット世界の住民だから、仮名であると考えておいたほうが良いだろう。宮沢賢治の話題をよく持ち出すことを見れば、きっと宮沢賢治かぶれの元文学青年、文学崩れの中年初老だと考えた方がいい。身元も何もわからない相手だから、油断は禁物です。しかし興味半々で会うこととなったのです。


この私、現実的には先月に会社を退職したばかりであり、今はまさに無職の身であり、これから華々とした独立起業計画を立てて忙しい中で、何て面倒な! 賢治さんからの「会いたい」というメッセージで会うことになったとはいえども、勘弁してほしいというのが率直なところだ。それでもシャカリキになって独立準備をするよりも余裕のよっちゃん的に過ごしていくほうがいいのかと、会うことにしたのでした。よゆうのよっちゃん! これが大事!


私の一番のテーゼは? と問われれば、「人生は解決すべき問題でなく、経験するべき旅」ということ。ちょっと抽象的かもしれないけれど、わかりたい人はわかって下さい。わからない人は別にどうでもいいです。好きなことはおもいっきり。くらげみたいにゆるっと。焦らずテキトーに楽しく。夢を叶えていこう。がモットー!





霊感の無い人生なんて



「霊感、本当にほしいですか? 恐くはないですか?」


と、昔の友人から聞かれたことがあった。たしか東京の美大の同級生だったか? こんな質問が、ずっとゾンビのように付きまとっていて、私にとってはこれこそが恐ろしいくらいだ。


「べつに恐いことは何も無いですよお」

即座にそう答えた。会話はぽつんと途切れたように、気まずい空気が広がっていたことを、当時の空気を未だに強く記憶している。私だって、吉本ばななさんみたいに強くはないけど、人並み以上の霊感は持っているのよ! 誤解しないでねっ!!


霊感のない人生なんて、まるで酒のない晩餐、天然温泉のない旅、予定調和のプロレス、エトセトラと同じくらいつまらなくて味気ないもの…、本当はそう答えたかった、時間がたっぷりあったら。そして相手の同級生が聞く耳を持っていた人だったならば…。


そりゃあ私だって、悪い霊につきまとわれて困っちゃうこと、ときどき頭痛の種となっちゃうケースなんかもあるけど、それも一過性の儀式、ストーリーだと考えていれば、今ではそれほど難儀ではなくなったのだ。広い心で受け入れようじゃあないか!


霊と云ってもそれらすべてが死んだ人たちの霊だとは限らない。死霊というのは厳かに存在するのだが、それらは特別な存在です。そうじゃない、生霊なんていうものがうじゃうじゃこの世には居るのです。それこそが頭痛の種。早く消えてくれっ! と叫びたくなるのは決まって生霊たちがほとんどなのだ。悪さをするのは決まって生霊たちなのだと思っているこのごろの私です。

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