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17/20

最近の流行りは携帯ゲームらしい

一話にまとめたかった(過去形)

前半です


めっちゃ忙しかったので、更新が遅いです。

多分次も遅いです。許してください。


 それは、ある夜のことだった。

 私たちはやっとこさ一日の授業を終え、また明日にもある授業に備えるべく、一日の疲れを癒していた。……っと、その前に説明しておくことがひとつ。


 『学園』においては、通い方が二通りある。


 寮に住み、寮から直接『学園』へ向かう方法。

 自宅から『学園』へと、毎日登校をする方法。


 とはいえ、寮、そしてそれに付随する商店や公的機関はもはや一つの都市と言ってもよく、寮生活というか、その生活はほぼ借家での一人暮らしと言っても過言ではない。ある意味学園における独り立ちの練習期間としても機能している。

 そんなわけで、生徒のほとんどは前者となっているのだ。


 では後者はどんな人たちなのかというと、大抵が実家金持ち勢である。その中でも特に、5~6子くらいが多い。


 貴族や王族で、後継に関わらないような人間が冒険者になりたいと言い出したとして、当然反対されるわけもなく、彼らはここに通うことになる。由緒ある学園で正しい知識を身につけてもらわないと、冒険者になった後で家の格が落ちるからだ。

 しかし、とはいえ彼らも親である。実家を離れたとはいえ、いい暮らしをしてほしいと思うのが正しい親心というもの。そして彼らはこう思うのだ。


 ────寮なんかじゃなくて、一等地の家に住まわせてあげたいなぁ、と。


 まあそんなわけで、親たちは学園都市内に卒業まで一つ別荘を買って、そこから子供を通わせるようになるのだ。

 これが、毎日登校する連中のほとんど全ての理由である。


 ……ここ、結構地価は高い方なのだが……まあ、それをポンと払えるのが金持ちというものなのだろう。こわいね。


 ああ、一応言っておくが、都市外から登校するやつはいない。

 さっきも言ったが、ここはほぼ一つの都市だ。外から来ようものなら、どれだけ短くても片道5時間は馬車に揺られなければならない。そんな生活、誰だってごめんである。


 で、当然私はそんな金持ちでもないし、たとえそうでも設定と矛盾するので、残念ながら寮生活勢だ。

 別に、悔しくなんかないんだからねっ!


 そして私はその日、疲れを取るために男女共有スペース(学園には男女それぞれの寮がある)でゆっくりコーヒーをいただいていたところだったのだ。

 まあ、それを踏まえた上で、話を戻そうと思う。



 その日、私が優雅にコーヒーを啜っていると、隣から声が聞こえてきた。


「深夜に珈琲とはな。眠れなくなるという話を聞いたことがないのか? それとも、ただの考えなしか」


 すでに出会いから数ヶ月たち、すっかり聴き慣れたその憎まれ口を華麗にスルーしながら、私は声の方へと振り向く。

 するとそこには、なにやら小さな縦長の箱のようなものを抱えた、小柄な青髪の少年が立っていた。師匠である。


 私は彼を視認すると、小さくため息をついて机にコーヒーを置いた。それから、彼に視線で対面に座るように言う。

 そして、彼はいう通りにそのまま向かいの椅子に着いた。地面に着いていない足がプラプラと所在なさげに揺れている。


「……報告(しゅくだい)は終わったのか、ラニア?」


 目の前に座った彼を見下しながら、私は師匠に問う。

 勿論、口調や単語は周りに当たり障りがない程度の、だが意味を知る者には意味がわかる言葉で、だ。


 すると師匠は、視線をぶら下げた脚の方へ移すようにして、その言葉に答えた。


「ああ……まあ、ちょっと色々面倒だったがな。一先ずは終わらせてきた」


 その気まずげに放たれた言葉に、私は少し、「珍しい」という感想を抱く。


 師匠は、基本的に言葉を濁さない。濁すのは嘘をつかずに人を騙す時や、情報を隠そうとする時、皮肉を言う時くらいのものだ。いつも火の玉ストレートで相手の悪口を言うのが、彼の口調の癖である。

 ……言葉にすると非道いが、事実なのだからしょうがない。


 だが、どうも今回はそのどれでもない理由から、言葉を濁しているように感じるのだ。

 なにか、自分の恥ずかしいところを誤魔化している時のような……


 ま、考えすぎだろう。婉曲表現を使っているから偶然そう聞こえるのかもしれない。

 そもそも、数ヶ月しか共に過ごしていない私が、長く生きている彼ら(レベル10)の深遠な心内を理解できるはずもないのだから。


 私はそう思うと、それ以上この件について触れるのはやめにすることにした。


 私は話題を変える。


「……それで、今日はどうしたんだ 共有スペース(こんなところ)で。 普段は師匠の部屋で(いつもは会わない)だろう」


 私は、早速目下の疑問、何故彼がここにいるのかを問うた。


 普段は、師匠はほとんど共有スペースに出てこない。

 どうも師匠は厭世思考を持っているようで、基本的に人とは関わりたがらないのだ。まあ、存在を全く知られていないレベル10な時点でお察しだが。


 あとついでに言うと、私の数少ない友人二人も共有スペースには出てこない。多分、あの性格故に人と関わることがないからだろう。

 ひどい言い方だが、なんか前に友達いないとか言ってたし事実だろうからセーフだと信じたい。

 まあ、普通に彼らが真面目かつ健康なので自習と早寝を心がけているのもありそうだが。(そも、平民が精鋭クラスな時点で努力家なのは間違いない)


 そんな友人関係だからこそ、私はこうして、夜の時間をひとりリラックスに使っているのである。

 知り合いがいると休まらない心だが、この周りの雑音の中に溶け込むことで、癒すことができるのだ。


 だが、今日はそうもいかなかったようで、師匠が何故か現れた。

 その真意が何なのか、聞きたいのである。


 あいや別に、嫌とかではない。どうせいつも部屋で一緒に今日の振り返りとかしてるし、会うこと自体がアレなのではない。決して。

 ……ホントダヨ?


 心の中で必死の言い訳を私がしている間、師匠はずっと足を組み、自身の腹ほどしかない高さの机を、じっと見つめていた。

 そして私が我に帰った頃、漸くその口を開いた。


「────いや、すこし暇になってな。珍しく明日は予習もなく、丁度魔法研究(しゅみ)の材料も切らしている。故に、何か児戯にでも興じようとここにきてみたのだ」


「ほー、それは珍しい。明日は槍が降るかもしれないなあ。……で、その箱がその『児戯』用の道具なのか?」


「ああ、暇つぶしに『創世』()からパクっ(持っ)てきたやつだ」


 ……なんか、いま言葉の裏に変な意味混じってなかった? ちょっと物騒なヤツ。気のせいかな? ま、いいや。


 私は改めて視線を彼の脇腹に落とす。そして、そこに抱えられた箱を見つめた。


「それで? ラニア君は一体暇潰しに何を持ってきてくれたのかね」


 それは、私が一通り観察してみた感じ、何かしらのボードゲームらしく見えた。最近開発された、ボードが折り畳み式になっているどこでもゲームができる便利(?)グッズだ。

 どうも、私はアレが何の役に立つのかいまいちピンときていないのだが、今時の若者はゲームは外でやるのがトレンドらしい。みんなやってる、と言う噂だけは私の耳にも届いている。


 ……家でやれよ、と言ったら話をしてくれた冒険者に笑われたのは、今ではいい思い出……では、ないかな。

 なーにが「おくれてるんですね」だ。私のが年下だっつーの。たぶん。


 とまあ、あまり良い思い出があるとは言えないそれだが、とりあえずみた感じそう思ってしまったのだから仕方あるまい。

 多分私の固有魔法は発動してないので、確証も自信もないが、多分合っていると思う。


 私はとりあえず、自分の答えの成否発表を待つことにした。

 まあ、こんな観察とかしなくても、そもそも師匠がさっさと発表してしまえば終わる話なのだし。


「あー、そうだな、何を持ってきたかって言われると……まあ要はゲームなんだが。俺も適当に引っ張ってきたからよくは知らん。何のゲームだろうな?」


 いやお前よくわからんもんを貰うなよ。


 と言いかけたが、私はこれを強靭な理性で見事にセーブ。

 今日の一件で私は沈黙は金という事実を学習したのだ!


 早速その教訓を実践して、私は彼がボードを広げるところじっとを眺める。

 余計なことは喋らず、陰に徹することで、波風立てずにいられるのだ! 冒険者世界は兎に角言ったもん勝ちだから、今まで全然知らなかった。友達もいたことなかったし。


 普通みんな知っていることなのかもしれないが……まあ、今学べてるからヨシ!

 そう言うことにしておこう!


 さて、師匠が持ってきたボードは、どうも木製のものらしい。それに中にも何か入っているらしく、カタカタとした木特有の音が中から発せられている。

 一方、師匠はきっちりと留められたあの……なんか箱についてる鍵みたいなヤツ。名前なんかわからん。を、その短い爪でカリカリ引っ掻いて開けようと四苦八苦している。


 おお、無様無様、レベル10でも難しいことがあるんだねぇ。


 そして私はその様子を見て、なんかまだ時間かかりそうかな、なんて思い、机上のコーヒーカップに手を伸ばす。一先ず箱が開くまで彼の醜態でも笑ってようかと思ったのだ。

 だが、その目論み虚しく、その瞬間私はその腕を師匠に捻り上げられた。その力は見た目に見合わず凄まじい。流石レベル10だ、馬力が違いますね。


「ぐ、ぐおぉ……ししょっ、ラニア、やめろ、やめてくださいぃ……」


 私はその痛みに、師匠へと抗議を送る。だが、当然それが改善されることはなく、寧ろ師匠の表情はさらに冷たいものへとなっていった。

 

「うるさい。俺がこんなにも苦労しているのに、何をお前は優雅に珈琲を嗜もうとしている。普通手伝おうとするんじゃないのか?」


 そう言うと、師匠は吸い込まれてしまいそうなほど真っ直ぐの目をこちらへと向けてきた。

 こ、コイツ……やってることと外面の乖離激しすぎんだろ!


 私はその行動に憤りながら、それでも理性的にその腕を引き剥がそうとする。


「た、たとえそうだとしても、人に頼む態度じゃないでしょこれぇ」


「俺がやれと言っているんだぞ、人の言うことは聞くもんだ……!」


「あ、相手を困らせることを目的にした力は悲しみしか産まないぞ!!」


「ふん、人が困っている時にまずやることが一服な人間(クズ)が言うな」


「うん? おかしい、私は純情パワー系美少女のはずなのに」


「目腐ってんのか」


 いや酷っ


「………と、冗談は置いといて、わかった、手伝うよ。私結構爪鋭い方だからさ」


 しばらく師匠と取っ組み合って、そろそろ飽きてきたなと言う頃合いを見計らって、私は師匠へと降参の意を示した。

 尚時期を見るのは、師匠は普通に降参してもネチネチ言ってくるタイプだからだ。飽きが来てから謝らないと、それを揚げ足取って師匠は追い詰めてくる。ああ、何と恐ろしい……!


「ほら、だからその箱を私に寄越してくれ。私が開けるから」


 私はそう言って、片手をずいと師匠のほうへとだした。

 一応、師匠の機嫌を損ねることがないように声色はなるべく子供にかけるような当たり障りないものにしておいたが。


 一方師匠は、その伸ばされた手にさっさとその木箱を乗せ、「頼んだぞ」などと生意気な口を聞いていた。あと、顔もめっちゃうざい。


 コイツ、マジで人に頼む態度じゃないだろ。私見習えや。


 一瞬師匠の顔をはっ倒してやりたい衝動に駆られたが、しかしそんなことをすれば怪我するのは私である。なので、私は心の中でそれをやるだけに済ませておくことにした。


「じゃ、ちゃっちゃと開けるかね」


 理性と感情のせめぎ合いをしながらも、私はなお平静を保ちその箱へと向き合った。

 そして、その鍵?の小さなとっかかりに爪をかけると、小さくそれを弾いた。


「………おっ、開いたか。それじゃ、早く広げよう」


 私は木箱を手前の机に置くと、その箱を開く。

 すると、その中には木でできた小像のようなものが入っていた。


「………? なんだこれ、王冠に、馬? あ、人間っぽいのもある。なんの共通点が……」


 私は中のそれが何なのかを知らなかった。ここに入っているのだから玩具であることはわかるのだが、まさかこれでお人形劇をするわけでもあるまい。

 不思議に思った私は、そのいくつかを手にとり、よく観察してみることにした。


 中に入っている像は二色に分かれていて、色は黒と白だ。

 一見するとどれも色以外同じような塔の見た目をしているように見えるが、ごく少数、塔でないものや特別な形に彫られているものがある。

 像の形は下の方が丸く円形をしていてそれが土台なのだろうと推測できる。そしてその上部に、それぞれ塔があしらわれているのだ。


 だが、それ以外はよくわからない。正直、遊び方もさっぱりだ。


「えっと……これ、何かラニアは知ってるか? 私は見たことないんだが……」


 私は途方に暮れて、師匠へと尋ねることにした。

 まあ数百年近く暇してたらしいし、色々娯楽知ってるだろうと思ったから。


 するとその私の予想は的中したようで、師匠はすぐに答えてくれた。


「ん、ああ。ここ二百年で急激に流行り出したヤツだな。駒────この木像を盤上に並べて、「王」と言われる駒をとる遊びだ。昔は戦術構想のためのものだったらしいが」


 ここ二百年流行ってるって、もはやそれは伝統と言ってもいいんじゃないかなぁ。


 なんて云うツッコミは、もう師匠と過ごした数ヶ月の間にやりすぎて、もう言う気が起きなかった。

 まじでコイツ時間感覚イカれてるんだよなぁ。


 と、まあそれは置いといて、私は師匠の説明を聞いて一つ思い出したことがあった。

 そういえば、冒険者の間でもそんな感じの遊びが流行っていたなぁと。


 プレイに二人必要だから私には完全に縁がなかったけれど、そういえばギルドでよく男衆がカチャカチャしてるのを見かけたことがある。あれ、これをやってたのかぁ。

 見たこともいったこともないが、時々ギルドで大会もやっていたような気がする。たしか、その時の名前は────


「えと………確か名前は、“獣狩り(チェイス)“だったか?」


「違う。“王取り(チェス)“だ。これは追いかけっこではなく戦術遊戯だぞ」


 おおう、恥ずかしい。


「というか、お前チェスやってないのか? 庶民間で流行りのゲームだと聞いたことがあるぞ」


「………………まあ、何と言いますか。昔はそんな余裕なかったので」


 ウチ、昔からお金なかったんだよなぁ。いや、設定上だけじゃなく。

 ほんと、食うのに困らない程度のギリギリの金しかなかった。庶民街に住めてはいたけど、生来のケチ臭さも手伝って、あれはほとんどスラムの生活だったと思う。


「いやぁ、あの頃は大変だったなぁ……」


 私がしみじみと当時のことを思い返して感慨に浸っていると、また唐突に師匠が私の頭を叩いてきた。


「いたっ……。なにするんです────何をする、痛いだろうラニア」


 至極軽いチョップだったので、実際はあまり痛くはないが、なんとなくで私は自分の頭をさする。

 そして、そのことへの非難めいた視線を師匠に送るが、しかし彼はまったく興味なさそうに駒を弄っていた。


「いや、なに。お前の過去などより今はチェスがしたいだけだ。というか、正直興味がない」


「あ、はい。すいません。自語りはマナー違反ですよね」


 隙自語(隙有らば自分語り)は冒険者間では最高に嫌われることだぞ!!! パーティーメンバーじゃあるまいし、相手の過去なんか全く興味ないからな!! みんなも気をつけよう!


 冒険者マナーをまさかの師匠に教えてもらってしまった。

 こいつずっと山奥に引きこもっていたくせに何でこんなことは知ってるんだ。これってそんな昔から言われてることなのか?


 隙自語って最近の言葉っぽいのになぁ、なんて思いながら、私は師匠の方を見ながらせっせとチェスの盤面をそろえていた。

 


・チェス(王取り)


本編時空から約200年ほど前にルールの整備が行われ、貴族間で流行り出した。ルールや見た目はほぼ現実と同じ。

現在では庶民の間でもすっかり浸透しきっており、大会も一部地域でよく催されるなど、ある程度の市民権を得ている。

ただし、ルールの難解さからローカルルールが多かったり、ある程度の教養がある人間しかできなかったり、まだまだ発展途上。


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