7 君を想って私は
今回で幼少期開始と言ったな。
あれは嘘だ。
本当にすみません。内容的に分けることにしました。
身体がスパゲティ状に引き伸ばされ、意識が混濁する。どれほどの時間が経ったのだろうか。
鳥居をくぐった直後に感じた背中の痛みは時間が経つごとに増していき、襲い来る眠気を払っていく。
意識と記憶の混濁がひどく、自分の存在があいまいに感じる。身体の自由は一切利かず、ただただ時間と真っ白な世界が流れゆく。
(私は・・・・何を・・・・・桜華・・・・・・君ともう一度・・・・・)
うまく思考することのできない状況の中、国香は亡き愛妻のことを想い続けた。
周囲に音は一切なく、五感の内、視覚と背中に這い回る痛み以外が機能していない状況に国香の精神は発狂しかけていた。
(桜華・・・桜華・・・・・桜華・・・・・・・・・桜華桜華桜華桜かおうかおうかおうかおうかおうかおうかおうか桜華おうかおうか桜華おうかおうかおうかおうか桜華おうかおうかおうか桜華桜華桜華おうかおうかおうかおうかおうかおうか桜華・・・・・・・・・・・・・・・)
高天原での別れ際に記憶を失うと言われ、国香は忘れてなるものかと想い続けた。
背中に這い回るドロドロとした痛みはより一層ひどくなる。
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国香のいた世界とは異なる、ある世界でそれは行われていた。
「さて、命令を忠実に守ることのできない無能も、このようにして役に立てるのだから光栄に思うべきだな。」
血を頭から浴びたように紅く、焔に照らされたように赫い髪を腰まで伸ばした男が黒く輝く玉座に腰を掛ける。
その左手には首から下に脊髄がぶら下がる頭部を鷲掴みにしていた。男に掴まれている顔は死してなお恐怖に染まっており、今にも恐怖の叫声を上げそうな表情をしていた。
男の前には十数名の家臣と思しき者たちが頭を垂れる。
その者らは皆一様に、目の前に座する者の気分を害することのない様に、息を潜め、意識を霧散させ衣の擦れる音一つさせずに肩を震わせていた。
男の傍らには焦点の定まらない虚ろな瞳をした女が、口の端から涎と血が混じった薄ピンクの液体を垂らしながら呆然と立ち尽くしていた。
その姿は痛ましく、美しい絹糸のようであった長い黒髪は雑多に切られ、大国の姫とも称されても遜色のない整った顔は日々の暴力によって腫れ崩れ、身体に残る拷問の痕は癒えることなく、全身に打ち込まれた杭からは絶え間なく赤い血が滴り落ちる。
彼女の名はマリス。今、男の手に握られる頭部であった者を打倒さんと戦った勇者の成れの果てである。
「歴代最強か・・・・・・教会の枢機卿共の目も腐ったな。半年も持たないとは笑わせる。」
鎖につながれた彼女の腹は膨れ、わずかに胎動しているのが見て取れる。
彼女の前には先ほど脊髄ごと引き抜いた首無し死体と、かつて彼女の仲間であった者らの死体が転がされている。それを目にしても尚、彼女の瞳に感情の色が出ることはなく、田畑にささる案山子のように立ち尽くすのみであった。
「ニスカ様、もう間もなく時間でございます。」
マリスとは反対側に侍る老齢の男がニスカと呼ぶ玉座の男に小さく耳打ちする。すると、今まで不機嫌であったその顔に不敵な笑みを浮かべて立ち上がる。その一つの所作にはまさしく皇たる風格を漂わせる。
「お前達、もうよい下がれ。これよりこの部屋に踏み入れる者は全員生贄にしてやる。それを望むものは残るがいい。」
すると今まで頭を垂れていた者たちが我先にと一目散に、だが一切の物音を立てないよう静かに退室していく。
部屋に残ったのはマリスとニスカ、そして側に侍る老齢の男のみ。
「今回はお前も下がれ、邪魔になる。」
先ほどよりはいくらか落ち着いた声音で男を追い出す。
ニスカは部屋から己とマリス以外の気配が消えたのを確認すると、おもむろに懐から短剣を取り出す。大小さまざまな宝石がはめ込まれたその剣はおおよそ実戦的ではなく、儀式に使うための古代の聖遺物を彷彿とさせる。
ニスカはその剣を片手に、物言わぬ死体たちを一つ一つ引きずっては部屋の御中央に置き並べ、その短剣で死体に深々と刺し、傷をつけていく。
最期の死体を運び終えたニスカは先ほど見せしめにした頭部を死体に囲まれた中央で踏みつぶす。
ドパッ!
骨の砕ける音と脳髄が飛び散る音が広い玉座の間に響く。
「命令だ。ここに立て。」
未だ不動を貫くマリスに対して平坦な口調で命令するニスカ。
そして、何かに引きずられるかのように、マリスは杭から延びる鎖を鳴らしながら、今しがた頭部がつぶされた場所に歩いてゆく。
「あと・・・・・・23秒」
何かを待つように窓から見える暗闇に染まる空を見上げる。
呼吸音ですら聞こえるほどの静寂が二人を包み込む。
きっかり23秒後、空とニスカ、そしてマリスに変化が訪れる。
まず初めに光の一切なかった空に、突如として黒より黒い深淵のごとき漆黒が浮かび上がる。それを合図にニスカが呪文を唱え、周囲に生えた赤い触腕が床に置かれた死体を捕らえる。マリスは今まで守ってきた沈黙を破り、大声で悶え始めた。
「ヴガァァァァァ」
おおよそ人の口から出るような音ではない声を上げながらも彼女はなおもその場に立ち続ける。
マリスの叫声が止んだのは10分ほど後の事だった。
空は何事もなかったかのように元通りに、うねらせていた触腕も、死体もろとも消え失せ、残されたのは腕をだらりと下げ、肉が焦げたような香りを漂わせる精魂尽き果てた男と、人一人を容易く覆うような規則的に胎動する黒い繭だけだった。
書き方というか、段落や改行などまだ模索中です。
こういう書き方のほうが読みやすいなどのアドバイスください。
月末から節分まで白馬村行ってました。
昔から白馬村と伊賀の水だけは体に合わなくて、手がガサガサでタイピングが難しい今日この頃、保湿クリームで何とか凌いでおります。
冬場には必須のこのアイテム、女性だけでなく男性にも使っていただきたい。
今ではめっきりしなくなりましたが、握手などするときに手汗でギトギトなのも、乾燥でカサカサなのも生理的に厳しいものがありますし、何より不潔!
皆さん皮膚科に行けばもらえますので是非に