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父親

あなたの不幸をひとつだけ嘘にしてあげる。


不幸と聞いて思い浮かんだのは父親だった。

会社ではそれなりの地位にいて、人望があって、いいお父さんね、と言われる男だったが、家の中では暴君だった。


「父親を嘘にしてください」


わかりましたと返事がくると自分の体が透けだした。


「なんで?」


消えていく体に戸惑っていると、声が言う。

だって、あなたの半分が嘘になりました。

人間半分嘘になったらいけません。


私は全部聞き終える前に消えてしまった。


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