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そして新たな魔法少女の誕生へ

 怪人が消え去った後、優花も緊張がほぐれたのか地面へとへたりこんでいた。


「消えた…。終わった…の?」

「ええ。今回はね。助けてくれてありがとう。無様な姿を見せてしまったわ…。」

「いえ…私も何が何だか…」


 この数分で色々ありすぎて全く頭に入っていない。説明を求む!


「そうね…訳が分からない貴女の為に、説明するとしましょうか。私の格好も含めてね。その前に…こいつの紹介からかしら。」


 そう言って、彼女は自分の横に浮いているものを指さした。


「僕は彼女のパートナーのアリエだよ。テレビアニメとかでよくいる妖精みたいなものだね。」


 うさぎのぬいぐるみみたいなものがふわふわと浮きながら喋っている。…てか自分でそんな事言って大丈夫なのか?本人は気にしていない様だが。


「へぇ、うさぎみたいで可愛い。……パートナー?」

「そう。私は以前、こいつを仲介として、ある者と契約して"魔法少女"というものになったの。この姿もそれによるものよ。」


 彼女は自分の服装を少女に見せる。普通の人とは全く違う。目立つ服に始まり、アクセサリー、さらには髪の色まで。


「魔法…少女…」

「分からないのも無理はないわね。聞いた事ないでしょ?」

「…ごめんなさい。聞いた事無いです。」

「謝る必要は全くないよ。基本、魔法少女の存在は隠されてるからね。」


 魔法少女の後ろからアリエが飛び出してきた。それより今聞いてはいけない言葉を聞いてしまった気が。


「隠されてる…?じゃあこの事を知ってしまった私はどうなるのですか…?」

「…何か勘違いしてるかな?大丈夫、危害は何も加えないよ。但し、家族を含めて他人に口外するのはNGだ。」

「つまり内緒にしといてという事ですね。」


 こういうのはよくある話だ。私はすぐ事情を察した。


「そういう事。話が少しずれたね、本題に入ろう。君、魔法少女になってくれる気はないかい?」

「…えっ、私が?」


 いきなりアリエに言われた。しかし、あまりにも唐突すぎる。二つ返事で了承はしづらい。それより何故私が魔法少女になれる?


「うん。君の中にかなり強い魔力を見つけたんだ。敵と戦っていける程のね。」


 アリエにそう言われ、彼女はかなり戸惑っている様だ。無理もない、急によく分からない事を言われたのだから。魔力?敵?なんのことやらさっぱりだ。


「敵って…さっきの変なものみたいな…?」

「そうよ。…しかしさっきみたいな強力な奴とは初めて戦ったわ。今まで敵に遅れを取るなんて事無かったのに。…こんな風に危ない目にも遭うし、遠慮なく断っていいのよ?よく考えなさいね。」


 魔法少女は腕を擦りながら話す。先程の痛みが完全には引いていないのだろう。あれだけ派手に吹き飛ばされてたから、この短時間で痛みが引くのはおかしいだろう。魔法少女とやらのお陰で自己治癒能力が高まっているのなら別だが。


「恐らくあれは下級を束ねる上級怪人だろうね。僕も初めて見たよ。」


 冷静にそう言いながら、アリエは優花の方を向く。


「もう1度言おうか。この子は少々頼りないからね。君に魔法少女になって欲しい。やってくれるかい?」

「頼りないって失礼ね!この〜っ!」

「痛い痛い痛い!」


 頼りないと言われ怒ったのか、魔法少女はアリエの頬を引っ張りまわした。私はすっかり置き去りにされている。


「あの〜…」

「…あっ、ごめんなさい。ついカーッとなってしまったわ。」


 小声で言われ、少し恥ずかしくなってる魔法少女をよそに置き、優花はアリエに決意した様に言った。


「…私、魔法少女になります。」…と。

「えっ、いいのかしら?かなり危険よ?しかも長く戦わなければならないし…」

「いいんです。これで住んでる所の人達を守れるのなら…。いつも助けて貰ってるから、今度は自分が助ける番になりたいんです。」


 実を言うと、それだけではなかった。戦ってる姿を見て「格好いい…」と思ってしまったのである。簡単な理由だが、自分に同じ事が出来るのならやる価値はある。それで人を守る力が得られるのなら充分だ。


「そうなのか…本当にいいんだね?」

「はい。」


 アリエの確認に優花は凛とした顔ではっきりと答えた。そして、優花はアリエが発する光に包まれた。


 眩しくて閉じていた目を開くと、見知らぬ場所にいることに気付いた。また、目の前に大きく、煌びやかな女性がいることも。優花と女性の目が合った瞬間、いきなり女性は話しかけてきた。


(貴女の思いを聞き入れましょう。魔法少女の力を譲渡します。この力、貴女の信じるままに使って下さい。)

「これは……」


 声ではなく、優花の頭に直接、女性の言葉が響いてきた。先程の敵の声の様に。しかし、おっとりとした、優しい声だった。


「ありがとうございます。貴女は…?」

(今はまだお伝えできません。私の存在もいつか知る事になるはずです。その時にまたお会いしましょう。)

「はい!」

(最後に一つだけ尋ねます。魔法少女は必ずそれぞれに合った武器を持っています。貴女にも用意しましょう。どのようなものがいいですか?)

武器か…それならあの人は弓なのかな…でも、いきなり言われてもちょっと考えにくいな…


 などと思っていると、女性の声が再び頭の中に響いてきた。


(決まりましたか?)

…えっ、早くないですか。時間はあんまり経ってないのに。仕方が無い、今頭に浮かんだものにしよう。

(ちなみに、武器にはそれぞれ大きな意味が込められてます。安易に選ばないようにして下さいね。)

…ちょっと待ってください、そういうのは最初に言って欲しいです…

(仕方が無いですね。貴女に合う武器をある程度絞りましょう。貴女の場合…銃か、長剣になります。)

"仕方が無い"って…大丈夫ですかこの人…。まぁそれは置いておくとして、銃と長剣か…それならばこれにします…!


 そう思い、少女は女性に言った。

「決めました。私は─」


 気が付くと、優花は地面の上へと倒れ込んでいた。どうやら魔法少女の契約が済んだようだ。


「お疲れ様。無事に貴女も魔法少女になれた様ね。」

「そうだといいんですけど…まだ実感が湧かないです。」

「そりゃそうよ。私だって実感湧くまでしばらくかかっだもの。…そろそろ起きられるでしょう?」

「へっ?」


 彼女は魔法少女の膝の上で寝転がっていた様だ。その事に気付くと、顔を赤らめて飛び起きた。


「ごごごごめんなさい!気が付きませんでした…」

「あははっ、いいのよ。」

「………。あっ、そういえばまだ名前を言ってませんでした。」


 ここでアリエ以外お互いに名乗っていなかったことに気づく。


「そういえばそうだったわね。でも、貴女の名前は分かるわよ。優等生の朝比奈 優花さん。」

「なんで私の名前を知ってるんですか!?」

「そりゃ勿論。今まで誰にも言ってなかったけどね、私、魔法少女なの。」


 彼女はそう言って変身を解くと…優花がよく知っている顔が出てきた。


「え…えええーっ!!」

「そ。びっくりした?だから敬語なんて必要ないよ。いやー、初めて優花に敬語で話しかけられたなぁ。あはははっ」

「ち、ちょっと!恥ずかしいじゃない!」

「まぁ、私もあんたにいつもと違う口調で話すなんて変な感じだったけどね〜」


 魔法少女だったのは、さっきから優花が必死に探していた…谷端 楓だった。

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