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これまでのあらすじ!

 突然だが、いま僕は絶体絶命の状況にいる。

 

 都心部から離れた自然溢れるこの村には、古来より人を襲う化け物が住み着いているらしく、討伐要請を引き受けた僕は2人の仲間と満を持して森へ入っていったのだが……

 

「ま、待て! 1回落ち着こう!」


 目の前には体長5メートルはある亀型の魔獣が鋭い目でこちらを睨んでいる。

 硬く分厚い甲羅には魔獣の見た目とは反して美しいエメラルドグリーンの水晶が天高く貫き、大きく開かれた口には刃の様に鋭い歯がびっしりと並んでいて、今にも食い殺されそうだ。

 この魔獣は人間の言葉を理解しない種なので、何を言っても無駄なのだが、人間というものは日常的に会話をする種族だ。どんなに危機的状況に陥っても会話で乗り切ろうとしてしまう。


「ってそんなこと考えてる場合じゃない!」


僕の腕を噛み千切ろうとしてきた攻撃を何とか避けて、人生最大のダッシュでこの場の離脱を図る。


『キョースケ生きてる?』

「生きてる? じゃないよバカ星歌(せいか)!」


 連絡用にと耳につけてあるインカムから仲間の声が聞こえてくる。

 言葉の内容こそ心配をしているが、その声色は全くの無関心って感じだ。


『そのまま走って。後ろから援護するから』

「了解! しっかり狙えよ!」


 次の瞬間、ドン! という重々しい音が響く。狙撃銃型の魔導兵器特有の音色だ。

 ややあってから魔獣に着弾したのだろう。背後が激しく光った。


「流石だなっ!」


 滑り込みを決めながら、彼女の腕前に心の中で拍手を贈る。おかげで何とか眼のつかない所まで逃げられたようだ。


「星歌、この魔獣は僕達だけではどうしようもできない。1度離脱するぞ!」


 再びインカムを起動させ、木陰に隠れながら連絡を取る。


『分かった。移動装置の場所までは私が案内するから、インカムはつけておいて!』

「了解した!」


 狙撃役の彼女は移動装置から近い高台に身をおいている。要するに僕が移動装置まで行けばいつでも離脱は可能なのだ。

 だが安心はできない。あの魔獣はオスとメスの2体で常に行動している。

 僕が今まいた個体はメス。つまりまだオスとは遭遇していないので、見つからずに移動しなければならない。しかもオスはメスより狂暴なのでなおさらのことだ。


『そこから東に走ったらすぐに岩山が見えるはず。そこまで来ればもう安心だよ!』

「東だな! すぐに行く!」


 辺りを再度見回し、一気に走り出す。

 

「えーっと、岩山……岩山……」


 周囲を警戒しつつ、星歌の言っていた岩山を探す。

 しばらくそうしていると、巨大な岩がそびえ立つのが見えてきた。


「なんだ、案外近かったんだな」


 勢いよく森を抜けると、

 

 何故か先ほどの魔獣が目の前にコンニチハしていた。


「……」

「……」


 やっぱりこの魔獣は言葉が通じないって話は撤回する。もはや魔獣ですら無防備に突っ込んできた僕に呆れかえっているのか、何も反応してこない。


「あー、ははは。すみませんお邪魔しました~!」

「グルウアァァァァァ!!!」


 僕は素早く回れ右。魔獣の怒りの咆哮を背に全速力で逃げ出した。


「おい星歌! どういうことだよ!?」

『あれー? 確かに東には魔獣はいなかったのに、なんでだろ?』


 この能天気バカ娘め!

 なぜ僕だけこんな目に合わなければならないのか……


『て言うか、なんでキョースケは南に走ったの!?』

「なに言ってんだ! 僕はお前に言われた通りに東へ向かったよ!」


『……あっ、ごめん。私から見て東だった!』

「お前ぇぇぇ!!」


 地鳴りの様な足音をならしながら、魔獣は僕を追いかけてくる。

 必死に逃げながらも、どうにかして移動装置までの道に戻ろうと試みる。


「しかもあれよく見たらオスだし!」

『わはは』

「ぶっ殺す!!」


 これが仲間にする仕打ちなのか。自分で言うのも何だがほとほと統率がなっていない。


『じゃ、私先に帰る』

「えっ!? ちょっ!?」

『こっちにも魔獣が近づいてるからさ、ごめんね!』


 ブツッと回線が切られる。今の僕にはその音が鎮魂歌に聞こえた。

 星歌に怒りを覚えるのもつかの間、同じ方向に逃げすぎたためか、目の前に崖が広がっていた。

 追いかけてくる足音も徐々に大きくなってくる。


「あ、これ詰んだわ」


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