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レティシアは足繁くローゼ家に通うように成った。


アンディに会いに行くためだが、祖父のサイラスがレティシアの訪問を喜んでいるので、祖父や祖母に顔を見せてから、アンディの部屋に行く。


アンディの部屋に二人きりでいるのは始めこそ気まずいものがあったが、数を(こな)せばお互いの存在に慣れて来て、領地の話や親族の話など、元々共通点が多いので話題に困る事はなく、そこそこ話しやすい相手となった。


レティシアは、アンディにエミールの結婚相手を今検討中だという話題を振った。


「エミールは、生粋のローゼ門下の家よりも、中立派か、もしくは母上のご実家の伯爵家の令嬢が良いのでは無いかと思っていたが、レティシアはセレーネ嬢を薦めるつもりなのか…」


「ええ。…オルグレン伯爵領はリクソール領の隣りの領で、義伯母様の姪に当たるキャシー様とは私も親しくして居るけど、キャシー様をアーデン家に嫁がせるのは勿体無いわ。元々身内なのだから、他のローゼ派の有力な伯爵家に嫁いで頂きたいわ」


「何だか、やり手婆みたいになって来たな……」


何を失礼なとレティシアは怒っては見せるが、アンディの言う事は事実なので話を先に進める事にする。


「キャシー様は、ローゼ領に近いレンブラント伯爵家が良いと思うわ。お歳も五歳違いの嫡子様がいらして歳回りも合うし、領の周りは味方で固めた方が、離反などの防止に繋がるでしょう?お父様もオルグレン伯爵から頼まれておいでの様だったし、おそらくはその辺を狙って来ると思うわ」


「リクソール侯爵は、相変わらず多くの家からの縁談の相談に乗っておいでなのだな。相手の利益に成って、自家にも都合が良い縁組を次々と組んで行くのだから、見事なものだな」


「一番初めはアンディのお母様のローレンシア義伯母様を、リューク伯父様に紹介したのが切っ掛けだったのですって!うちのお父様が居なかったらアンディは生まれなかったかも知れなくてよ」


「ああ。その話は聞いた事が有る。リリアナ叔母上がリクソール候と縁付く事が決まって、同盟関係に成った時点で、地理的な面からオルグレン伯爵家と手を組む方法をリクソール候が考えられて勧めた結婚らしい。当時中立派だったオルグレン伯爵家が、ランドール派に成られると王都までの道が塞がれてリクソール領が困るから組まれた縁組だったらしいな」


「あら!うちのお父様は、道が塞がれるとローゼ領に何かあっても助けに行けないからだって仰って居られたわ」


お互いの家の言い分は有るが、リクソール家は自家にも利が出る様に世話をするのは当然と考えており、リクソール家が間に入る事で、両家ともにリクソールの後見も得られていると見做される為、リクソール家と懇意にしたいという思いもあって、多くの家がリクソール家に婚姻の相談をして来るのだった。


そして二人の中で一番気になっているエミールの結婚相手の話題に戻った。


「しかし、セレーネ嬢では、エミールもモーヴァンの後継争いに首を突っ込まざる得なくなるのだぞ。そのような面倒な家と関わらなくとも、行く行くはローゼ家の娘をアーデン家に嫁がせれば済む話だろう?」


「私達の子とエミールの子を結婚させるというのは私も考えたけど、こちらに娘が生まれたらという前提でしょう?エミールの娘をこちらに嫁がすというのは無理よ。流石にランドール公の血筋で、ローゼ一門の長になるのは無理な話だわ。それにエミールの代で、ルドゥーテ侯爵家の親父を叩きのめさないと、ルドゥーテ侯爵はアーデンとモーヴァンの力をここぞとばかりに削ぎに来るわよ」


アンディはルドゥーテ侯爵家もローゼ門下なのだから、叩きのめす訳には行かないし守護する対象だとレティシアに言うと、レティシアは「それは分かってはいるけど、モーヴァンは後継がしっかり決まらない状態だし、アーデンはランドール家の事で弱味があるから、私がルドゥーテ侯爵の立場なら、二家を追い落とす絶好の機会を絶対見逃さないわ。そこの二家が衰退したらローゼ家も衰退するし、下克上を許す気風は避けるべきだと思うのよ。派閥内での争いを許す事になって、ますます団結力も弱くなってしまうと思うの」と話した。


「それは、俺も同じ意見だが、ローゼ家がルドゥーテ侯爵家をないがしろにするという事の方が問題だし、自滅するにしても、やはり助けねば成らない立場にある。レティシアもいい加減ルドゥーテ侯爵家を目の敵にするのは止めた方が良い。今はリクソール侯爵令嬢だから、この間の様な事も何とか許されるが、ローゼ家の者となったら、レティシアも軽はずみな言動は許されない立場になる。親族だからとエミールに肩入れする事も出来なくなる。それを分かっているのか?」


「……そう頑なに平等でいる必要ってあるのかしら?私は裏ではエミールを助けても構わないと思うわ。今は兄弟だから大丈夫だという事が、従兄弟だと駄目だというのは、おかしな事だと思うわ」


アンディが少し考え込む様に黙った。それからレティシアを諭す様にゆっくりと話し出した。


「レティシアの言い分は一理有るが、派閥の中の争いは推奨しないが、どこも皆、必死に自家の立場を守ろうとしている。それなのに、長たるローゼ家がその争いに手を加える事は、派閥の崩壊を招く恐れがある。アーデン家に不満がある家があっても仕方がないが、ローゼ家に不満を持たせる事態は絶対に避けなければ成らない。リクソール家は中立派だからレティシアは派閥の難しさを理解していない。派閥の家の何処にでも肩入れして、何処にも肩入れしないのが派閥の長の役割なんだ。エミールの結婚相手は個人的には良い相手をリクソール侯爵に仲立ちして頂ければ良いと思うが、ローゼ家としては他の門下家と同じにしか考えられない」


そうアンディがはっきりとレティシアに告げて、レティシアもアンディに論破された事により、今日の話し合いは終了と成った。こうしてアンディと話し合う機会が増えて来て、レテシィアはアンディの賢さや思慮深い一面を知る事になった。今迄傲慢な若様にしか見えなかったアンディのローゼ公爵家の次期後継の姿勢には、レティシアも正直驚かされていた。


アンディもレティシアの意見も興味深いと言ってくれるが、レティシアにローゼ家の考え方は、まだ出来そうにない。レテシィアがそう言うと、まだ結婚まで二年もあるし、公爵位を継ぐのは更に先なのだから、一緒にお互い学んでいこうと言ってくれたアンディにレティシアの胸はドキンと音を立てた様な気がした。


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