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リュークは一度、王都の屋敷に戻ったが、直ぐに身支度を整えてから登城した。急いではいたが、レティシアに出掛けに、「ローゼ領に、セフィール殿もきたが、怪我人は誰もいないから、心配はしなくて大丈夫だ」と教えてくれて、「しばらく帰れないがすまない」と言い、レティシアの頭に手を置いて、子供にするようにポンポンと宥める様にしてから出て行った。


レティシアは聞きたい事が沢山あったのだが、一番知りたい皆の無事をリュークが教えてくれたので、一応ひと安心したのだが、どうやら大規模な戦争になった様なのに、まだ情報を秘匿する必要があるのか、リュークはそれ以上は教えてくれなかった。


王都のローゼ家には、祖父とミゲルとレティシアしかおらず、リクソール家なんてルシアンしか居ない。勿論使用人はいるので不便な事は無いのだが、外出は控える様に言われているので、令嬢仲間の家にも遊びに行けなかった。


あまりにも情報不足な上、少し寂しい状態なので、ミゲルとボードゲームをしたり、本を読んだりと付き合わせていたのだが、エミールがローゼ家にレティシアのご機嫌伺いに来たいと先触れがあり、レティシアは勿論喜んで承諾してエミールがローゼ家にやって来た。


「久しぶりだね。うちも両親揃ってアーデン領に行ってしまっているから、とても暇だったんだけど、やはり無事だという報告を聞かないうちは、家を空ける気にならなくてね」


「そうよね。ローゼ家もリューク伯父様が帰って来て教えてくれるまで、屋敷全体が浮き足立ってしまって、落ち着かない状態だったもの。ミゲルがずっと相手してくれていたのだけど、エミールが来てくれると分かった途端に、情報収集に出かけてしまったの。ミゲルにも気を使わせるなんて、私の方が年上なのに情けないわ」


「アンディとリリアナ様がローゼ領にいて、隣国と戦争になったと聞いたんだから、心配で落ち着いていられないのは仕方が無いよ。僕も父上の事が心配で落ち着かなかったから」


しゅんとするレティシアに、エミールは自分も同じだと言って慰めてくれる。

やはりエミールはレティシアにとって兄の様な存在だと改めて思った。


「それで、リューク伯父様が城に詰めっきりになってから、私は外に出ない様に言われているのだけど、エミールの方は、何か情報は入って来た?」


エミールの方には、リリアナがマリアンヌを気遣って、レイモンドの状況を逐一知らせてくれていて、それをエミールにマリアンヌからの手紙で少し遅れてやって来ていたのだが、リリアナがレティシアには何も知らせて居ない事に逆に驚いてしまった。リリアナはレティシアには、戦争の様な生臭い話はしたくないのだろうかと勘繰ったが、問題の無い範囲で教える事にした。


「リリアナ様は、ローゼ領で総指揮官をしていて、アンディは前線に出て敵を殲滅して、父上はエベルネージュの王族と貴族を牽制して、戦後は、二人とも軍と共にエベルネージュとライトンの治安警備に当たっているらしいよ」


「…何故お母さまがローゼ領で総指揮官なんてしているの!?」


あまりエミールが引っ掛からないところに、レティシアは驚いていた。


「アンディも父上もエベルネージュに出撃してしまったから、領での指示役や纏め役がリリアナ様しか居なかったんじゃないかな」


「ローレンシア義伯母さまがいるじゃない!」


尤もな意見だが、ローゼ軍の人間の中核の人間は、リリアナが令嬢時代にスカウトして来た人達である様だし、黒髪紫眼の容姿に加えて、前領主の一人娘という肩書は伊達では無い。

しかも王都から来た監査室の官吏として国の力も使える上、本人が侯爵夫人とは思えないくらいに荒波に揉まれて宮廷で今の地位にあるのだから、普段の関係性を見る限り、リリアナがアンディ達の代わりではなく、二人を使って作戦を立てたのだろう。


「ローレンシア義伯母上は、リリアナ様ほど修羅場をくぐっていないからね。リリアナ様は普段罪人を取り締まっておられる方なのだから、純粋にリリアナ様の方が向いていたからだろうね」


「お母様は、ローゼ家に対して失礼だと思うわ!いくら実家だと言っても、他家に嫁いだ人間で、それもローゼ派閥じゃなくて中立派なのよ?皆がお母様に対して、緩すぎるっていうか許し過ぎな気がするんだけど」


そう言って呆れるレティシアに、エミールも心の中では少し同意する面もあったが、それはレティシアには口に出来ない。万が一にでもリクソール侯爵に伝わったらと思うと、アーデン家の今後の為に「でも、リリアナ様の協力もあって、兵も皆無傷らしいし」とリリアナを庇った。


実際にリリアナは個人所有の場所に火薬など武器庫を持っていて、今回の戦いにも使用したらしい。それもどうなのかと思わないでもないが、実際に役立っている以上、文句を付けられる人間は存在しない。リクソール侯爵も、リュークもレイモンドも止めないのだから、一概にリリアナが出しゃばり過ぎとも言えない。むしろ面倒見がいいだけの様にエミールは思う。


最近のエミールの知る一番のニュースは、リリアナが古くなった爆薬の処理の為に、ローゼ領の森の奥の岩場に行って、そこの岩場を爆破したら、鉄鉱石の新たな鉱脈を発見したという話だった。


今の鉱山だけでも人手不足なので、取り敢えずは手付かずのままらしいが、ローゼ領にとっては、これからの大きな財産になるのは間違いないだろう。やはり、リリアナはローゼ領の役に非常に立っているので、皆が認めているのだろうとエミールは思った。


その話をレティシアにすると、「他領に武器を保管していたなんて、信じられない!爆薬を保管だなんて、目の行き届かないところで事故でもあったら責任取れないじゃない。やっぱりお母様の破天荒さにはついていけないわ…」と嘆きだした。ローゼ家に対して申し訳なさもあって、他家の人間として居た堪れない風情(ふぜい)だった。


「爆薬はおそらくローゼ領の軍の人間に安全を確保してもらって保管していたと思うし、レティシアがそんなに気にしなくてもいいんじゃないかな?」


「ローゼ領の軍を動かせる事自体、すっごく問題だと思うのだけど、私の方が考えがおかしい訳じゃ無いわよね!?」


ここに来て、エミールはリリアナがレティシアに何も知らせない訳が分かって来た。レティシアは、多少は気の強いところも有るが、賢く美しい淑女であるが、リリアナは規格外の侯爵夫人なのだ。娘の目から見ても許されないという事をしでかす母親を、割と常識的なレティシアは、いつも怒っているのだろう。


知らせれば、こうしてレティシアがリリアナのローゼ家への礼を欠いた行いに対して、怒ったりする事が分かっているから、あえて知らせなかったのが、なんとなく伺い知れた。


リクソール侯爵のリリアナへの溺愛は有名な話であるし、ルシアンは、自領に損が無ければ見逃すだろうから、レティシア一人だけが、嫁に来る予定であるローゼ家に対して、距離が近すぎるリリアナの行動にヤキモキして来たのかと思ったら、レティシアが若干気の毒になって来てしまった。


「確かにレティシアが言っている事は常識的だとは思うけど、ローゼ家の人達が、リリアナ様の介入を喜んで受け入れているんだから、レティシアが悩む必要は無いと思うよ」


そうエミールがレティシアを宥めると、レティシアも今迄誰にも相談出来なかったらしく、第三者の意見を聞いて、多少救われた気分になったとホッとした表情(かお)を見せた。


その後リュークに少し面会出来たミゲルが帰って来て、「リリアナ叔母上めちゃめちゃすごい!聞いたらビックリする活躍だった!」と興奮して教えてくれたので、レティシアもどうやらエミールの言う通り、ローゼ家の皆には、疎まれたりはして居ないという確信を得て、大分気持ちが浮上することが出来た。



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