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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


お待たせしました。もう少しまめに更新を今年の目標にしたいと思います。話があまり進んでいませんが、話の序盤と思って広い心でお許しいただきたくお願いしますm(__)m

リュークは「とうとう来たか」と呟いたが、アンディは「リクソール候はローゼ家と同盟関係なのですよね!?」と今更ながらの確認をしてしまった。


そのくらい、領に監査に入られる事を嫌う貴族は多い。後ろ暗いところが無くとも、粗の一つや二つは出て来て是正勧告を受ける事になり、場合によっては多大な損益を(こうむ)るためだ。


定期的な査察もある事はあるのだが、どちらかと言えばきな臭い領に入る常套句に使うために、近くの領にも一応入ろうかというのと、ランドール領内に入る為にも、他領も受け入れている事なのだから平等にという牽制の意味合いも色濃い。


なので、今回もしもセフィールが体裁の為にローゼ領に入るのならば、現在副領主のアーデン候が自領の応対に追われる様な事はせずに、ローゼ領だけの査察に留めただろう。


アーデン候レイモンドは、ローゼ領と王都を頻繁に行き来しているが、社交シーズン以外は、九割がたローゼ領にいる。同盟関係であるセフィールが、相手に優しい気持ちで予定を立ててくれるならば、査察自体がレイモンドが領の方を優先する社交シーズンを外した辺りにするのが普通なのだが、当たり前だが嫌がらせ色が強い今回は、時期的な面の考慮もなされていない。


唯一、体面を保ったのが、査察団の代表がローゼ家の出身のリリアナだという事だ。


これで他家からは不仲は勘繰られないが、先程の理由からリクソール候が、レティシアの事で気分を害しているのだろうという事は、賢い貴族家ならば気づくだろう。ローゼ家に娘を嫁がせるのだから、二家の蜜月関係に変りはないという所には落ち着いてはくれるだろうが、ローゼ家は、宰相であるリュークが、ジュリアン王子の縁談をセフィールの助けで進めている最中で、王都を離れられない様に仕組まれてしまっている事も手痛い。


用意周到なセフィールに、ローゼ公爵夫妻は、能力の無駄遣いをこんなところでしなくともと、二人で遠い目になってしまうのを、リリアナが「私とレイモンドで頑張るから、アンディをレイモンドのところに早く送って」と早急に業務の引継ぎをさせる事を勧めて、客人を迎え入れる為にローレンシアも領に戻る事になった。


アーデン家も同じ理由で、マリアンヌがローゼ領よりも少しだけ王都寄りのアーデン領まで戻る事になり、使用人達も含めて通達があった翌々日には皆がローゼ領、アーデン領に向かう事になってしまった。


王都には宰相のリュークと、元凶のセフィールとレティシアとそしてエミールが残り、随分とローゼ家もアーデン家もリクソール家も人が少なくなってしまった。


特に、半分くらい新婚みたいな雰囲気で見られていたレティシアとアンディは、アンディがしばらく王都を離れなくてはならなくなった事で、ローゼ家の使用人や、他家のご令嬢達から同情されることとなった。


レティシアとアンディを離す事もセフィールの目的の一つなのは明白なので、査察に入られるダメージに比べたら比較的小さな事に思えるが、ローゼ家の面々がバタバタと準備して急に出立しなくてはならない事態に陥った事は、レティシアも申し訳なく、セフィールの大人気なく容赦の無い嫌がらせの始まりに、一旦家に話し合いに戻ろうかと思ったが、リリアナが査察団の指揮をする立場になってしまった事で、リクソール家に行ったら、ローゼ家に戻って来られない危険性も出て来た為、リクソール家に行くことさえリュークにやんわりと止められてしまった。


リュークは本格的にジュリアン王子の婚姻に向けて、クロフォード家との条件交渉に入った。セフィールも宰相とクロフォード家の調整役としてその間に入り、抵抗するクロフォード家を二人で徐々に追い詰めていった。


クロフォード家も観念して、王家がミリアリアを正妃として迎える事と、持参金として塩の利権の半分を移譲するという事で決着がつきそうだった。


「利権の半分で済むのは、リューク殿が宰相であられた事にクロフォード家は感謝すべきでしょうね。私でしたら三分の二程度は献上させたでしょうから」


セフィールがやれやれと、リュークに暗に甘いのではないかと指摘するのを、リュークは苦笑しながら「正妃の家が困窮することになっては、今後困るからな」と受け流した。


「まあ、リューク殿の仰ることも一理ありますね。同じ侯爵位のご令嬢を側妃になさる計算があっての事でしたか…」


セフィールの頭の回転の良さに、リュークは更に苦笑せざる得なかった。


「ジュリアン王子がランドール家の娘であるシャルロットの子な上、中立派の有力家の正妃を迎えると決まったら、ローゼ派の者達が黙ってはいないだろうからな」


「ルドゥーテのご令嬢も、修道院に行くよりはご側妃になる方が随分とましでしょう。まして嫁ぐ相手は、女性に人気のジュリアン王子ですからね」


「メルヴィナも領主夫人には向いていないが、血筋の良い娘だ。ローゼ家の支援もあれば、国母の地位も難しくは無い。側妃である事に不満は持つだろうが、エミールを気に入っていたくらいなのだから、面差しが似た王子の事もそう悪くは思っていないだろう」



エミール派とジュリアン王子派があって、メルヴィナはエミール派だったのだから、親族で似ていると言っても、そこにはとても大きな違いがあるのだが、ローゼ家の当主のリュークの命令に、ルドゥーテ家が断れる訳もないので、リュークの考えイコール決定事項である。


そもそも、一応救いのつもりの縁談でもあったローレンシアの実家でもある伯爵家に嫁がなかった時点で、リュークからしてみれば同情の余地もあまりないのだが、それでも侯爵家の長女であるメルヴィナは、王家に嫁がすのにうってつけの人材であった。


実のところリュークは、本当はモーヴァンのセレーネをと考えていた。


性格や器量を抜けば、セレーネはメルヴィナと比べると侯爵令嬢とはいえ傍流の血筋であるし、それに反してモーヴァンの大叔母がローゼ家から輿入れしている為に、ローゼ家の血筋の娘として宮廷に入れるのに条件が揃っていた。


アーデン侯爵家はローゼ家の庇護から離れ、これから変革の時期になる為、王家の側妃の方が気楽な立場かもしれない。セレーネにとってはどちらが良いとは言い切れないかもしれないが、アーデン家やエミールにとっては、レティシアも認めるセレーネが領主夫人になってくれた方が数倍良いのは間違いない。


なんといってもレティシアは、未来のローゼ公爵夫人という肩書以上に、リクソール家が後ろについている。そして、ローゼ家の血筋にリクソール家の鬼才の血筋とが合わさった最強さは、他の令嬢の追随を許さない。


リュークも、レティシアのローゼ家への輿入れを、リリアナとの婚約時に決めてくれたセフィールには、内心では頭が上がらないくらいの感謝をしていた。


最近でこそ関係が上手く行き始めてはいるが、アンディに、もう少しレティシアとの関係を大事にして貰いたいと考えていた。


周囲がそう考えているのが伝わり過ぎて反発してしまっていたのだが、今回の査察の件は、元々が、アンディとレティシアの関係がうまくいっていなかったことに端を発している部分も大いにあるので、セフィールの嫌がらせにもアンディが対処してみせなければ、セフィールがレティシアを嫁がす事を躊躇しかねない。


ローゼ家にとって多少の自領の不利益が有ろうとも、今回の査察は、セフィールがアンディの力量を試していると考えられるので、此処がアンディとローゼ家の正念場だとあえてリューク自身は手をまわさなかった。


セフィールのローゼ家への振舞いをレティシアは気にして頻りに詫びて来るが、レティシアは流石セフィールの娘だと感じさせる賢さで、ローゼ家のために立ち振舞い、随分と助けになってくれている。


アンディが自身の力で、レティシアの横に並ぶのに相応しい相手であると認めさせるしか、セフィールが矛を収める方法はきっと無いだろう。


機会を与えてくれただけでも、セフィールにしては随分と甘いとリュークは思う。


今回の対応いかんでは、アンディの廃嫡もあり得る。親としては非道ではあるが、ローゼ門下を背負って行かなければならない頭領として、この程度を乗り越えられないようであれば、早晩ランドール家に呑み込まれてしまうだろう。



リュークは息子を信じて何が起きようとも静観を決め込む道を選んだ。




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