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リュークと話せたアンディは、一応の安心感と未来の不安感が押し寄せて来た。


未来の義父は、監査室室長の座に着いていて、犯罪者や汚職と戦う正義の人だと思って来た。基本的には、と前置きは付くのだが…。


そのくらい周りから恐れられているので、善を為すためには、ある程度の悪も持ち合わせていないと成し得ない事があるのだろうと思ってきたが、リクソール侯爵の嗜好を父に聞く限り、かなりヤバそうな人なのは間違いない。


本日は、アンディはアーデン家のエミールの下に訪れていた。時間を置くとエミールと距離が開いて行きそうだったので、一応エミールの様子を見たかったというのもあった。


エミールは昨日の事などなかった様に、いつもと全然変わらない。実際にエミールの方は、アンディが気落ちしたような失望感はないのだから、あまり気にしていないのかもしれない。


「それで、最近はレティシアと上手く行っているの?」とアンディに朗らかに聞いて来た。


「まあな。元々親族なのを思えば、他の令嬢達に比べると安心感もあるし話も合うと思う」


「そうだね。来年は僕たちも社交界に出て行かなくてはいけないから、他の令嬢達とも、ある程度の付き合いが出て来るしね。レティシアを押しのけるツワモノが出て来ないとも限らないよね。レティシアがいない一年がチャンスだと思っていそうだし、宮廷遊戯の誘いも増えそうだからね」


元々政略結婚させされる娘達は、本意では無い相手に嫁がされる為、意中の相手と遊びでも良いという令嬢が多くいて、アンディやエミールも最近は声を掛けられる様になってきていた。


今は夜会も両親同伴で行く為、休憩室に誘われる程度の軽いものであるが、単独で夜会などに出る様になれば、今以上に誘いは大胆なものになるだろうと予想出来た。


「俺は、変な誘いに乗って、リクソール候を怒らせる訳にもいかないから、周りも分かっているのか、今もそれ程しつこくは誘われない。エミールの方が大変だろう?この間も俺が割り込まなかったら、マズイ状況になりかかっていただろう?」


「僕は婚約者もいないから、それほどは気にしなくても大丈夫だからね」


「お前、たまに消える時があるよな!?まさか誘いに乗ってないだろうな!?」


「さあね。公爵家の子息様だったら、無粋な事は聞かないのが常識だって勿論知ってるよね?」


にこにこと謎の微笑みで煙に巻くエミールは、本気なのか冗談なのか分からない。


「冗談だよな?」


「アンディは、俺にも潔癖さを求めるの?……さっきのは冗談だけど、流石に来年はそれ程撥ね退ける必要もないかなとは思っているんだよね。相手は慎重に選ぶからローゼ家には迷惑はかけないよ」


確かにエミールは、操を立てる相手も存在しなければ、気を遣う婚家の存在もないのだから、問題はないのだが、アンディはエミールが汚れてしまう気がして嫌な気持ちになった。


「そんな事よりアンディは、レティシアに間違っても手出ししないでよ!リクソール侯爵は十六の結婚だって、最近は渋り気味らしいからね。この間、リリアナ様がいらした時に挨拶だけでもと思ったら、女性達の話をうっかり聞いてしまったのだけど、最近はアンディとレティシアの仲が良くなってきて、皆で安心していたら、リクソール侯爵が二年位結婚を遅らせても良いんじゃないかと言い出してるらしいよ」


早速アンディに矛先が向いたが「別に俺も早過ぎだと思っていたから、あちらが納得するなら遅くても構わない」と言うとエミールが大袈裟に溜め息を吐いてみせた。


「リリアナ様は大激怒で、夫婦喧嘩になりそうだったらしいよ。ジュリアン殿下の件もあるから『馬鹿なの!?』と言ったらリクソール候も黙ったと話してらした。途中までは入室のタイミングを計っていたんだけど、立ち聞きになるよりマシかと思って、久し振りに母上達のお茶会に交じってしまったよ。レティシアもいない状態だったから、色々と女性陣に突っ込まれてしまって大変だった」


渋い顔で話すエミールに、困った状態が容易に想像がついてしまいアンディも可笑しくなった。


「それで、母上の兄上がお忍びで王都に来られるらしくて、リリアナ様は、陛下は無理でもリューク兄様にはお会い出来るようにしたいと言っていて、母上と相談されていたけど、ローゼ公爵が軽々しい行動には出られないから無理じゃ無いかという話になったのだけど、アンディはローゼ公爵から、ランドールの伯父上の話って聞いた事ってある?何だか結構親しいみたいなんだよね。実は今迄も母上とリリアナ様にだけ会って帰られているみたいで、うちでは絶対に無理なんで、リクソール家か、分家のエインズワース伯爵家でお迎えしてるんだって。リリアナ様に会うのが目的みたいだけど、よくリクソール候が許されていると思う程、ランドールの血筋の凄まじさを感じる方なんだよね…」


ちょうどタイムリーな話題にアンディは、懐かしい表情を見せたリュークの顔を思い出した。

しかし、父は公式行事でも無ければ会えない様な雰囲気の話だったので、わざわざリリアナに会いに来るというのは、どういう関係なのかと気になってしまう。


「マリアンヌ様じゃ無くて、何故リリアナ叔母上に?」


少し探る言い方になったが、エミールは特に気にせずに「リリアナ様に僕も聞いたら、戦友だと仰って、年に何度かは定期的にお会いして、色々とランドール家と非公式で交渉されてるみたいだね」とリリアナ様って不思議な方だよね、とエミールはふんわりと笑った。


「父上は、エドワード様の事をそれは懐かしそうに話しておられたから、人目が無い所でお会い出来たら、きっと喜ばれると思う」


「リリアナ様もそう仰られたのだけど、うちの母や祖母に止められてしまって、リリアナ様にお会いする事自体トップシークレットだし、公爵様にもお知らせしない方針だから、仕方がないのかもね…。伯父上の方はローゼ公爵のお顔はどうやってか、そっとご覧になっているみたいだよ。アンディやミゲルの事も『リュークに似ているね』と以前僕が母上に連れられてお会いした時に、嬉しそうに話されていたけど、どうやってご覧になったのかは、企業秘密だと言って教えて下さらなかったんだよ」


リュークもアンディもミゲルも、そう簡単に他人の目に晒される場所にはいないので、確かに不思議な話ではあった。ランドール家が刺客を送る気になったら、皆が簡単に殺されてしまうと思うとぞっとした。


エミールも同じ懸念を抱いた様で、そうリリアナに言ったら、リリアナの協力あって実現しているので、ローゼ家の警備体制は大丈夫だと言われて、エミールも胸をなでおろしたらしい。


「今回は、エミールもお会いする予定なのか?」


「ううん。僕が連れて行かれたのも一回だけだしね。母上はともかく、アーデン家としては本当はお会い出来ない方だからね。いつも贈り物だけ頂いてたんで、一昨年に無理言って連れて行って貰ったんだよね。僕も年齢が上がると、もう絶対にお会い出来ないからと言ったら、母上も納得してくれてお会い出来たのだけど、うちの父上よりも年上らしいけど、(あやかし)かと思う程お美しい方で、それはもう驚いたよ。あのルドゥーテ侯爵のいつもの嫌味の訳も、元凶を知れば納得してしまって腹も立たなくなったよ」


ランドールの血筋の美しさは、異様だと称されているが、シャルロット妃やマリアンヌも、アンディから見ても美しいが、正室はランドール公の血筋の選りすぐりの娘が選ばれる為、正室腹の者は、それは人外の美しさなのだと聞いた事はあるが、ランドール派が大袈裟に広めた話ではなかったらしい。


アンディもリュークが軽々しく会うのは無理だと諦めたが、アンディも聞くだけでなく実際に会ってみたくなった。


エミールに言うと、かなり厳しい顔をされたが、エミールも無理を言った過去を思い出してか、リリアナに掛け合ってみると請け負ってくれた。但し「期待しないで待ってて」と、とても難しい事だからと、エミールは真剣な表情になった。


しかしアンディは、リュークがあれほど懐かしむ友と、身内に妖とまで言われるランドールの、御伽噺にしか出て来なさそうなエミールの伯父を見れるかもしれない事に気持ちが浮き立った。基本的に願いが叶わなかった事が少ないアンディは、難しいと言われても、おそらくは願いは叶うだろうと、エドワードに会える日を楽しみに思った。


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