7
「あら、おかえり。遅かったわね。」
母がキッチンに立って、私の大好きな料理を作っている。圧力鍋に鳥の手羽先をこれでもかと敷き詰めて、醤油と味醂と日本酒を同じ量だけ入れ、味が染み込めば完成の簡単な料理。料理が苦手な母の数えられるほどしかない得意料理の一つで、記念日には決まっておねだりをした思い出の一品。手で鷲掴みにし、骨から身を引きちぎるように歯で剥がして、口一杯に頬張るのが好きだった。
味見として母から渡された一本を両手で持ち、口に含む。いつもと変わらない味。とても美味しいと思う味。でも、なんでだろ。
テーブルにはお父さんが座ってビールを飲んでいる。おばあちゃんが作ってくれた、大好きなポテトサラダも自家製のすっぱい梅が入った大きなおにぎりも置いてあるのに。
なんで、なんでこんなに涙が溢れてくるのだろう?
「美味しい?」
すごく美味しいはずなのに、なにも、なにもかもが悲しいんだ。
「………さん。」
寂しい、寂しいよ、助けてよ。
母がなんとも言えない表情をしながら、涙をぬぐい、頭を撫でてくれる。でも、涙が止まらない。優しい手なのに、なぜか、なぜか落ち着かないの。胸のざわざわが止まらないの。
「まあまあ、どうしたの?」
どうしたのって聞かれても、私だって分からないよ。ただ無性に胸が締め付けられるんだ。ぎゅうって壊れそうなほど。不安で不安でたまらないの。怖くて怖くて、寂しくて、悲しくて…。もう分からないの。
ねえ、いつも助けてくれたでしょう?困ったときは手を差し伸べてくれたでしょう?いつだって味方してくれたでしょう?だからお願い、助けてよ。…ねぇ。
「おかあ…さん。」
靄のように消え行く母へ向かい、必死に手を伸ばす。けれど伸ばした手は、ついぞ彼女へ届くことはなかった。
ふと気づけば真っ暗闇の中、天上へ向かって自身の手がピンと伸ばされていた。当然ではあるが、その先に母はいなくて、それをただただ悲しく思った。もし母の腕を、服を、手を、夢とはいえ掴めていたら、この異常な状況から抜け出せていたかもと、淡い期待があったからかもしれない。
腕から力を抜けば、釣り糸を失った人形のように重力に従ってベットの上へと落ちる。肌に触れるのは、特価品というポップに惹かれて購入した激安のベットカバーではなく、肌触りの良いスベスベなシーツ。後者の方が圧倒的に材質は良いはずなのに、全然落ち着かない。肌に触れる、視界に入る、全てが違う異世界にいるという変わらない状況に、強烈な胸の締め付けを感じつつ、か細く息を吐いてゆっくりと目を閉じた。この現実を、まだ幻想だという期待を抱いている自分に嘲笑しつつ、もう一度瞼を開けば焔とフェニクスの不安そうな顔があった。
「…魘されてた。」
辛そうな顔をしたフェニクスが一言だけ発し、優しく、優しく頭を撫でてくる。多くは語らないけれど、その表情と仕草から、本当に私を心配していることが伝わってくる。その彼の受容の雰囲気といえばいいのか、優しい雰囲気に心がぶわりと緩んで、気づけば自然と涙が溢れてきた。
「…大丈夫、大丈夫だ。俺らが守るから、絶対に。だから、大丈夫。」
大丈夫と繰り返すフェニクスの優しい声色。その声を聞きながら、次から次へと溢れて止まらない涙をぼろぼろと零しつつ、ゆっくりと頷く。
「キュッ。」
頬にすり寄ってきた焔を胸の上に乗せてぎゅっと抱き締めれば、ゆっくりとではあるが、壊れそうなほど締め付けられていた心がじんわりと温かくなってきた。まだ流れ続ける涙はフェニクスが親指で何度も何度も拭い取ってくれる。涙を拭うのすら人に任せ、人形を抱くように焔を抱いて、全てされるがままなんて、自分はまるで子供のようだと思う。でもそんな行動を取ってしまうほど自分の心は苦しんでいるのかなと、少しだけ思った。
「まだ起きるには早い。大丈夫…目を閉じて。」
まだ早朝なのか、フェニクスが再び眠るよう促してくる。父に促される…いや、兄に促される妹のように、大人しく彼に言われるまま瞼を閉じれば、大丈夫とばかりに頭を撫でるのが再開される。腕の中には可愛い焔の感触があり、甘えているのか、安心させてくれようとしているのか、何度も頭を擦り付けられるのが分かった。
二人の存在を頭と胸に感じながら、可笑しなことに二人に守られているというよりは、必要とされているのかもしれないと思った。そして、そう思った途端、なぜか安心した。自分でも分からない考えや感情に、変だなと思いつつゆっくりと呼吸をすれば、二人の導きにより、もう一度眠りに落ちるのはすぐだった。そしてフェニクスの大丈夫という言葉の通り、もう夢を見ることは無かった。
「…おはよ。」
今度はスッキリとした目覚めで、気分の乱れも疲れもなく起き上がることができた。うーんと伸びをして、体をほぐす。
顔がベタベタなのを不審に思い手を当ててみると、どうやら化粧をしたまま寝てしまったようだ。思い出せば、正直ここまでガッツリ寝る予定ではなく、昼食後の軽い仮眠をするつもりであったのだが、建物の中で寝心地の良い寝台という環境に、連日の疲れや緊張が影響したのか、朝になるまで眠ってしまったらしい。夕食を食べ損ねた胃袋は空っぽらしく、キュウキュウ鳴るどころか、締め付けるような感触だけさせ、あとはうんともすんとも言わなくなっていた。
「キュッ…おはよ、主さまぁ。」
ずっと胸に抱いていた焔の頭を撫でながら、部屋を見回す。しかし、そこに求めていたフェニクスの姿はなく、無意識に焔をぎゅっと強く抱いてしまった。
「どーしたの?」
不思議に思う焔に生返事をしつつ、彼を胸に抱いて部屋を出る。片端から扉を開いてフェニクスを探せば、彼をダイニングで発見した。振り返りながらおはようと声をかけられ、ほっと肩の力が抜ける。彼はホテルで作られ、スタッフが運んできた食事をダイニングテーブルに並べ直していたらしい。
「顔洗って。食事はそれから。」
フェニクスに手を引かれ、洗面所へと連れていかれる。洗面台に綺麗に並べられたボトルの中から、昨日買った化粧落としに手を伸ばすが、フェニクスに奪い取られ、皮膚をマッサージするように顔中に満遍なく塗りたくられる。化粧落としの香料なのか、柑橘系の匂いがふわんと広がり、残念なことに食欲的な意味で良い匂いだなと思った。次に洗面器に張ったぬるま湯にタオルを浸して軽く絞ると、優しく顔を拭かれ、ぬるま湯ですすぎ、また顔を拭くと何度もその行為を繰り返される。私はただされるがままに焔を胸に抱き黙っていれば、化粧落としから保湿まで、フェニクスが全て良いようにやってくれた。
「風呂に入りたかったら、朝食後に。もうそろそろなんかしら食べないと倒れる。」
「…うん。」
フェニクスの言うように、エネルギーが足りていないのか頭がぼうっとする。人形のように大人しくしている焔を抱きながら先ほどの部屋へ戻れば、この世界に来て初めての主菜、副菜が複数ある食事が机の上を彩っていた。昨夜からずっと抱いていた焔を離すと、右手にナイフ、左手にフォークを、時折スプーンも構えて、スープにオードブル、メインまでどっさりと量のある食事を片端から平らげた。
ゆっくりと時間をかけて食事を終えると、清潔な日本人の血が不潔を許さないので、身を清めるためすぐさまシャワールームへ移動する。フェニクスが用意したのか、猫足のバスタブには憧れの泡風呂が出来ていた。外国式の泡風呂はほぼ泡だと聞くが、日本人の私には有り難いことに胸元までお湯が張ってあったので、それにのんびり浸かる。泡が消えてきた水面に名残惜しさを感じながらバスタブを出ると、シャワースペースで髪から順に体を洗い清めていく。昨日買ったシャンプー、コンディショナー、ボディーソープに洗顔を、自らパッケージにペンで書いた文字を頼りに使い分け、全身スッキリしたところで軽く水気をとる。シャワールームの壁にはバスローブがかけられていたので、下着の上からそれを羽織って備え付けの椅子に腰を下ろし、やれ終わったと一息はいた。
「終わった?」
耳が良いのだから、水音や衣擦れの音から確実に終わっていると分かっているはずなのに、そう言って部屋に入ってくるフェニクスに、うんとだけ返事をする。お風呂が終わったあとはなんだか全身が気だるい。しかし早めに保湿ケアをする必要があると母に口酸っぱく言われ、面倒だと思いながらも義務教育が終わった頃からそれを行い始めたが、やっと最近その必要性がわかってきた。だが面倒なものは面倒で、今日は肌の調子が振り切れているからとか理由をつけて、ちょこちょこサボっている私を知ってか知らずか、かなり種類豊富に保湿ケアグッズを買い込むフェニクスに泣きそうになったのは昨日。そんなに使えない、使える気がしないと店で泣きべそをかく私に、じゃあ俺がやるとフェニクスがやる気満々に申し出たのだ。
顔の保湿は勿論であるが、身体の保湿グッズも一緒に買い込んでいたので、二人で話し合った結果、顔だけフェニクスにお任せすることにした。身体のケアも、エステだと割り切り彼に任せられればいいが、エステに縁のない超貧乏な私は、流石に身体のケアは任せられない、自分でやると主張したのだ。まあ、サボった瞬間にフェニクスが問答無用でケアをするという交換条件を飲んでいるので、自分でやるとなってもサボらずケアを行うと思う。
2日共に行動すればイケメンも見慣れたもので、イケメンというよりはフェニクスという認識になり、至近距離で見つめあっても何も感じなくなってきた。顔のケアするんでしょう、もうお任せしますとばかりに目を閉じれば、液体を纏わせたフェニクスの手が頬に触れる。
「…今日はどうする?何かしたいことあるか?」
美容液が肌に染み込んでいく感覚を感じながら、彼の質問にうーんと悩む。普段使いのもの、必要なものは昨日揃えたので、差し迫って欲しいなというものは無い。外に出たい、あれ見てみたいというのも、この世界を知らなすぎて思い付かない。睡眠は充分とったし、片付けはフェニクスが全て処理してくれた。
欲しいもの…。したいこと…。特に思い付かないが、強いて言うなら、心が痛まず使える自分で稼いだお金が欲しい。簡単に言えば、お金を稼ぎたいというところだろうか。
「…この世界って、お金はどうやって稼ぐの?」
その私の質問に、したいことの返答を汲み取ってくれたのだろう。ああと頷きつつ、その質問に答えてくれる。
「んー、まあ、作物育てたり、食い物を作って売ったり、服を仕立てたりってのが多いが…。」
今すぐにはじめられて、稼げる仕事ではない、と言いたいのだろう。困ったような声色に、そうだねと心を推察して同調する。
「なにか、私でも今すぐ出来るの無いかな…。」
ぼそっと呟くが、フェニクスからの返答は無い。まあ返答を期待していたわけでは無いので、そのまま無言でケアを受け続け、アイスが食べたいとかどうでも良いことを考えて時間をつぶす。クリームだか美容液だか色々なものを塗りたくって、もうそろそろケアも終わりというとき、フェニクスがぼそりと呟くようにその言葉を口にした。
「俺がやってた仕事やる?」
フェニクスが行っていた仕事とはどんなものなのか聞けば、その時その時で内容は大きく違うらしい。言うなれば万屋みたいなもので、普通の仕事よりは危険も付きまとう。
「あまりオススメはしたくないが…。多分…主の望む情報が一番手に入る仕事だから。」
フェニクスのその言葉にハッと目を開く。するとそこには、悲しくも優しい笑顔を浮かべた顔があった。そうだ、私が帰るということは、フェニクスや焔とは世界を隔ててお別れになる。見知らぬ私を主として希求するくらい主を欲していた彼らからしたら、私を引き留めるのは当然のこと。多分、帰ろうとする道を阻止したり、隠したりするのも当然のこと。だから帰る方法が存在しなくても、存在しても、私がその方法を探ろうとするのは、絶対不快なはず。そのため、彼らに帰りたいと明言することは、この二日間ですら避けてきた。守ってもらったお返しとまではいかないが、最低限の配慮だと思っていたのだ。
でも、フェニクスはその話題をちゃんと振ってきて、ちゃんと道を示してくれる。それは私を帰したくないという自身の欲求より、彼の心からの優しさが勝った結果なのだろう。
「…当然のことだろ。…俺らだって、分かってはいるさ。帰りたがってること。むしろ帰りたくない奴なんか相当レアだろ。」
ケアをする手はそのままに、フェニクスが言葉を繋ぐ。
「俺が知ってるのは、帰れないという話ばかり。これは本当。でもきっと、それを聞いてすぐ納得して受け入れる異世界人なんて居やしない。…そうだろ?」
そうね、納得できてなんかいない。納得できるわけない。心の中ではそう思っているのに、彼の儚い表情を見てしまうと、その言葉を口に出すのがやっぱり戸惑われた。
「…帰って欲しいわけ無い。帰られたら、俺らは何のために契約したのか分からない。だから、異世界へ戻る術なんて、無ければ良い。本当にそう思う。…でも、俺は主に心から笑って欲しい。だから、だから……。」
言葉が続かないのだろう。頭をわしわしと掻いて必死に言葉を探していた。
「…出来ることなら、本当に出来ることなら、全てを知り得た上で、俺らを選んで欲しい。この世界じゃなくて、俺らを選んでくれれば、俺は、本当に…嬉しい。」
これが俺の本心。彼は泣きそうな笑顔でそう話を締めくくり、私に背を向けて使ったケア用品を片付け始める。彼の燃えるような髪が表情を覆い隠し、もうその心を推察することは出来なかった。でも。
「…ありがとう、不死鳥。」
彼が紡いだ言葉は全て私の心に刺さった。そして、私を思う心も本物だと感じた。何故ここまで尽くしてくれるのか、思ってくれるのか、私には理解できないけれど、彼らには彼らで難しい事情がある。だからこそ、それも、何もかもを知り得た上で、私は最善の道を選択したいと思った。
たった2日だけれど、私にとっては濃厚な2日。知り合って2日の人に、そこまで思い入れをして馬鹿だなと思うけれど。でも、帰る道が目の前に開かれたとして、脇目も振らずにその道を走るとは思えない。きっと後ろ髪を引かれると思うのだ。そして、きっと振り替える。そこには、きっと二人が立っている。
この世界にきて一人ぼっちだから、優しくしてくれる二人に依存して、大切な存在だと勘違いしているのかもしれない。でも、それでも、それを最悪な勘違いだったと思う日は来ないと思うのだ。
「身体もちゃんとな。」
分かりやすいよう、洗面台にボディケアのクリームを出して、部屋を後にするフェニクス。彼が部屋を出る際、ドアの隙間からちらりと焔の尻尾が見えた。やっぱり聞いてたかと思いながら、指でクリームをすくい、全身へ塗り込んでいく。
ひたすらその作業を続け、ケアが終わった頃には汗もかなりひいていた。フェニクスがチョイスした本日の一着を身に纏い部屋を出れば、そこには二人が飼い犬のように部屋から出てくるのを待っていた。
フェニクスの表情をちらりと見れば、すでに通常モードの表情へと変化していた。つまり、もう先程の話を続ける気は無いということだろう。少なくとも今はであるが。だから私も気を取り直し、通常モードを心がけて、二人に接する。
感傷モードから通常モード…いや、ファッションの鬼と化したフェニクスに化粧台へとエスコートされる。彼が手から出した炎で髪の毛の水分をあっという間に飛ばしてしまうと、今日はお洒落なハーフアップにセットされた。熱さに傷つかなくなった結果…どちらかと言えばフェニクスを使役した結果かもしれないが、炎を直接髪にあてる髪の乾かし方が出来るようになったことはちょっとだけ嬉しい。一瞬で終わるのでドライヤーより早いし、傷つけないってことは髪を痛まないレベルで乾かしが止まるということらしく、これがかなり快適だ。
そしてメイクであるが、目を閉じればフルメイクを全てフェニクスがやってくれる。これもあっという間に昨日のマダムのメイクをものの見事に再現させ、彼は満足げな顔でメイク道具を片付けていた。
服に髪にメイクと、やっと身支度が終わった私は、そのフェニクスが仕事を頼まれていたという店がすく時間になるまで、本を読んで過ごす。
これは二人に聞いて分かったのだが、この世界は言語機能に関して脳も共有できるらしい。普通に勉強して言葉や文字を覚えるのが通常の覚え方。この世界にもそういう覚え方はちゃんと存在するが、もう一つ、言葉や文字を知っている対象と主従関係になると、その対象が知っている言葉や文字だけではあるが、一瞬で理解可能になるらしい。主がAという文字を知っていたら、従者もAという文字を使いこなせるようになり、逆もまた然り。
私はフェニクスと焔の知識に左右されるが、彼らが知っている言語なら使いこなせるということだ。異世界ギフトというものを小説で読んだことはあったが、現実はもっと現実的で神なんていなかったことを此処に報告しておく。
そんなわけで、一部ではあるがこの世界の本が読める私は、まず日常生活術を学ぶべく、『人族新米ママ必見!失敗しない子育て~人族の子供に教える社会のこと~』という本から、この世界の常識を理解していくことにした。無論ではあるが、さも子供がいますみたいな顔して購入した本である。店員さんもこの本で、いい大人が社会生活を学ぶなんて思ってはいないだろうけれど、自然と身体がそう装ってしまった。
「名前のこと、お金のこと、ひえ~。」
目次を見て、パタンと本を閉じる。今の気分は、まるで山積みにされた問題集を見たような感じだ。これはまずい。でも読まなければならないと、眉間にシワを寄せながら一行一行読み進めていく。
「んむぅ。」
私の膝の上は居心地がいいのか、焔はすやすやと夢の中だ。どんな夢を見ているのか、時折猫のような声を出す。一方フェニクスも、私の隣で同じく本を読んでいたが、気づけば瞼が閉じられていた。その睫毛の長さに女としてショックを受けつつ、再び手にしている本に視線を戻す。
“従者について教えておくべきこと”。
自身の持つ魂資源の量によって、侍らせられる従者の種類、人数が変わる。魂資源は、先天的に生まれ持った質、量のみしか所持できず、その後天的変化は望めない。いかにそれを子供に理解させ、受け入れさせるかが子育てをする上で重要な課題である。また、従者の寿命が自身の寿命に上乗せされ、契約者の事故や病を除けば、その寿命を使いきるまで契約者及びその従者も生きることができる。つまり場合によっては、祖父母より先に父母が逝去する可能性も存在することを子供に理解させておかねばならない。
(へえ…、契約者と従者って一蓮托生なんだ…。つまりあれか。死ぬときは共にってやつか。ふーん、ロマンチック。まあ私はその前に契約の解除とかなんか色々あるかもしれないし、無いかもしれないけど…。あー、契約解除の方法は書かれてないか…。残念。これも折を見て聞いとかなきゃな…。それに、契約者が事故や病になったとき、従者がどうなるのかも不明だし…。…あとあと、フェニクスや焔って何歳まで寿命あるんだろう。)
地球にいたころのネット小説知識で、数千年とか、不老不死という不穏な単語が頭のなかによぎったが、まさかねと思いつつ、二人が起きたら色々尋ねるかと簡単に考えながら、私は続きを読み進めた。