表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

あなたへの「好き」は枯れたの

どうも。思い付きましたので三兄弟の話など。楽しんでいただければこれ幸いです。

 私の勤める会社のエントランスにいる元カレ。


 そもそもなぜいる。そんな作り笑顔を張りつけて。わぁ、似合わなーい。てか、どうしてこんなチャラ男とつき合ってたんだ、私? 恋は盲目。笑えない。どこが好きだったんだろう、マジ謎。


 周囲は野次馬で固まりつつある。動物園のパンダ並。かわいいパンダとは違ってこっちはチャラ男だけど。見せ物的には充分かもしれない。そこに自分がいなければ、だけど。


「そら、会いたかったよ」

「どちらさまですか? 名前を呼ばれるいわれはありませんが」


 胡散臭い笑顔のまま近づいてくる男から、同じだけ遠ざかる。キモい。


「そら……やっぱり誤解してるんだね」


 悲しそうに呟く男。演技下手くそだなぁ、おい。大根の方がよっぽどましである。美味しく食べれるもの。


「彼女は取引先の社長の娘で、接待していただけなんだよ」


 さあ、安心して戻っておいで、とばかりに両手を広げて笑う男。バカなの? いや、だからバカなのか。

そんな嘘にひっかかる女がいるの? どう見ても逆玉の輿にのろうとするチャラ男じゃない。


「じゃあそのまま逆玉にのれば?」


 ギャラリーが増えてきた。定時で降りてきた私が悪いのか。いやいや、違うよね!


「そら……」


 いや、寄るなっつうの!


「俺をおいて先に行くからだよ? そら」

「ヤギさん!」


 背後からの声に、確認もせず動いた。その人の背中に回りこんで、チャラ男の視線から逃れた。敵前逃亡? なんとでも言うがいい。話の通じないチャラ阿呆男に、なぜ懇切丁寧に説明しなきゃいけないのさ。


 チャラ男への壁にしたヤギさんは、私の頭を撫でると自分の背中に隠してくれた。できる腹黒は違うなぁ。


「そら、そいつ誰?」

「うちのそらの名前を呼ばないでもらえるかな?」


 おおぅ、なんだこの三角なやりとり。いや、私は誰ともつきあってないぞ。


「例の別れる以前のつき合ってなかった元カレ、もとい昔の知り合いです」

「ああ、これが」


 さすがヤギさんである。さりげに上から目線とか、イケメンじゃなきゃ許されないよね。


「うちのそらで遊んでくれたみたいだね」

「その、うちのってなんですか」

「そらはうちのだろ?」

「まぁ、確かに?」


 ヤギさん家主だし。でもそういう意味で言ったんじゃないよね、それ。現にチャラ男が不機嫌な顔でこっち睨んでるし。私の視線に気づいたのか、一瞬で不安気な表情にチェンジした。早業である。


「そら、帰ろう?」

「お帰りはあちらです。ごきげんようさようなら」

「そらも一緒にだよ」

「嫌です」


 平行線だなぁ、おい。てかめんどくさい。

 そんな私にクスリと笑ったヤギさんは、ひとつのファイルを差し出してきた。


「これは、あらまぁ」


 大根チャラ男の調査報告書だった。


「……取引先の社長の娘にアプローチしてデートに持ち込んだはいいが、4股がバレてフラれて会社に密告されて4股相手に同時にボコられて? フリーになったのに誰もつかまらなくて? ナンパも失敗続きで? ああ、そういや一人いたじゃん、で私を思い出したと? バカなの? バカだバカだと思ってたけどバカなのか。バカなのね」

「なっ、は!?」


 よく刺されなかったものだ。しかも会社左遷されてるじゃないのさ。早く行けよ、こんなとこで油売ってないで。


「最低」

「さいてー」

「サイテー」 

「さいってー」


 チャラ男のあまりのダメっぷりに、周囲のお姉様お嬢様からの冷たい視線が突き刺さった。チャラ男に。


「なっ、なん」

「そんな最低な男が、染谷課長が大切に囲ってる桐谷さんを? ありえなーい」

「なにか弱味でも握ったんじゃないの? じゃなきゃこれはないでしょう」

「あれがトンビ? ないわー」


 お姉様方の口撃はすんばらしいですわー。てか、大切に囲ってるってなんだ。今突っ込んでいいとこ? いや、後にしよう。なんか精神的によろしくない気がする。


「あんなのに染谷課長が負けるわけないじゃない?」

「でも、おつき合いしてたんでしょ?」

「あれがそんなにウマイとは思えないけど?」


 いえ、そこで私を見ても困りますがな。


「さぁ? 身体込みでおつき合いしてなかったもので」

「あら、そうなの」

「会ったのが数える程度なので」

「まあ、いまとなってはよかったわねぇ」

「ええ、ほんとに」


 今となってはよかったの一言だ。あんなのに触れられてたら絶対後悔しただろうし、さすがにあのチャラ男とのことをなかったことにするために犯罪者にはなりたくない。なにをするのって? いやーソンナコトイエナイワー。


 出会って最初の頃から、そっちに空気が流れそうになったらなぜかタイミングよく邪魔が入ったりしたけど、……ん?


「……ヤギさん、もしかしてもしかしなくても邪魔、してたりしました?」

「……ん?」


 にっこりと笑うその顔に、はっきりと完全犯罪やりましたと書いてあるんだけどね!? そこんとこは騙されないよ!? 後で追跡調査するからね!?


「ん? じゃないし! そもそも私のことフッたの自分なのになんなのこれ!?」

「え?」

「「「「え?」」」」

「あ……!」


 しまった……!!



本県の受験生頑張れ! 一期選抜発表まで気を抜くんじゃないぞー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ