表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/111

その2

火曜日更新


 打ち合わせた通り、西軍兵士はコズミク城周辺に続々と集結した。指揮官はガマ司令官、ということになっている。

 酒と女と薬物に溺れきったダメ人間に成り下がっているが、それでもこういった場合には背筋を伸ばして現れる。

「西側領地は飢饉にあえいでいる。民は今、飢えに苦しんでいる。本来ならば国は、我々に救いの手を差し伸べなければならないところを、飢え死にしても年貢を出せと言ってきた。このような指示には従えぬ。領民を守るのだ。それができるのは遠路をものともせず集まってくれた、お前たちしかいない。健闘を祈る」

 威勢は良いが、ガマ司令官にできることはここまでだ。不摂生が祟っているに違いない。肌が明確に衰えている。その証拠とばかり、司令官はすぐに奥へと消えてしまった。

「ヤハラどの、各地の領主……隊長たちを集めてくれ」

「御意」

 各地の領主といっても、軍の中でノボルより階級は上だ。そこをあえて呼びつけた。

 ヒノモト・ノボル率いる雑兵第二中隊が、この軍の中心だということを明示すためだ。

 そして、呼びつけるまでもなく現れたのは……。

「師匠!」

「……お久しぶりです」

 たぬき商会所属のロウとテライモ、そして配下の者たち。さらには元決起軍残党が、自然と集まってくれた。たぬき商会の仕事もあるというのに、しかしそれでも七〇〇人近い人数がいた。

 兵士たちは再会を喜び合う。七〇〇人の中には、かつてひとつの雑兵隊として共に戦った顔もあったのだ。

 その官民入り乱れた人だかりをかき分けながら、各隊長がノボルのもとに集まった。

 ノボルは行動の趣旨の演説する。

「皆さん御存知の通り我々は現在、年貢を通じて中央に揺さぶりをかけています。これに対して中央は、領民などどうでもいいから年貢を出せ、と来ました。これは参謀ボルザックのみが悪い、という単純なものではありません。王室までもが、ボルザック派に堕ちた証拠です。かつてドラゴ中将の存命中、国王がこのような愚策をとったことが、あったでしょうか? なかったはずです。我々は将来、この暗君を討ちます。国はもう、そこまで堕落してしまったのです。ただ、今回の行動はあくまでも年貢の徴収に応じられないと、訴えることが目的です。国王とボルザックに責任をとってもらうのは、少々お待ちください」

 相変わらず、説くのは下手くそだ。どれだけ真意が伝わったものだか、怪しいものだ。それでも隊長たちは趣旨を汲んでくれたようだ。場が一気に燃え上がる。

 その時、敵兵は本土からの峠を越え、すでに西側領地に足を踏み入れている、と報告が入った。明日、明後日にはコズミクに到着する予定だ。

 ノボルは各隊に野営の準備にかかるよう指示。まだ具体的な戦闘の指示は出さない。これは戦闘行為ではなく、兵を率いてきた者に対応しているだけなのだ。

 まあ、みんなヤル気は満々なのだが。

 野営は市街地の外、街道を挟んでの配置である。そして市街地への入り口には、切り出してきた樹木を組んだバリケードを据えた。そこへ西軍の約半数とたぬき商会兵団の半数、二〇〇〇人にもおよぶ兵がたむろしている。すべてヒノモトの装束。腰に大小、和槍を立てて。たすき鉢巻きは揃いの柿色であった。

 しかし、街道は一般人も通る。ワイマール方面へ行く者は一人一人止めて、「ワイマール軍に質問されたら、コズミクの街は平穏無事。しかし不作のせいか田畑は枯れている」と答えるよう、言い聞かせた。

 その夜は露営である。たき火をたき、不寝番を立て、完全な戦時体制で休息に入る。

 ノボルは陣幕の中にいた。ヤハラとともに地図を眺めている。コズミクの地図ではない。東西統一を果たしたワイマールの地図だ。

 本土の各領地に、ヤハラは石ころを置いてゆく。

「これが、ボルザック派として残っている領地」

 かつて権勢を誇っていた頃より、明らかに数が少ない。

「そしてこちらが、中将派領地」

 そこにはコインを並べる。いや、中将派領地が並んでいると言った方が良いか。

 ヒノモトから、ルグル侯領地から伸びたコインの列が合流。その列は、首都ドクセンブルグへ続いている。

「ずいぶん増えたな」

「たぬき商会の功績です」

 そのたぬきだが。

「貴殿はまだ、イズモ商会と激突すると思っているのかね?」

 ノボルが訊くと、ヤハラは渋い顔をした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ