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その3


 新領地からすれば中央に位置するコズミク城。ここに主だった領主が集められ、新司令官からの訓示と指針演説が行われる。

 しかしヤハラの元に入った情報によると、それはどうやら儀式……セレモニー程度のものらしく、早速飲めや歌えやの宴会に突入したらしい。

 ヤハラたち各地の参謀たちが計画した、就任前の心付け……鼻薬が効いたようだ。就任前から集まる賄賂のおかげで、すでに国王と肩を並べる大将軍気分である、ということだ。

 とはいえさすがに反乱軍を支持するような発言は無く、国王陛下への忠誠を強要していたようだが、それも詰まるところ「俺を讃え持ち上げよ」という意味合いらしい。しきりと出世の約束を口にしていたそうだ。

「どう見るかね、ヤハラどの?」

「与しやすく思います。割りと俗物というか、単純な男であるという分析が、報告から読み取れますね」

 さらに面白い話が入ってきた。新しい隊長たちの赴任先が、比較的城周辺に偏っている、ということだ。

 もちろん決起軍参加隊長は、城周辺の者が多かったのだから、当然の話ではある。しかし何のひねりも工夫も無い。連れてきた人間をそのまま、空席に座らせただけなのだ。

 ヤハラはこれを愚策と嘲笑った。

「良いですか、殿。この配置は、コズミク城を落としたいと思う連中には、脅威です。しかしコズミク城などには目もくれず、本国へ兵を進める者にとっては、喜ばしい限りなのです」

 つまり中央のコズミクを避ければ、中将派は文のやりとりし放題。司令官の目が届かない場所だから、ノボルたちもやりたい放題なのだ。

 ボルザックはもう、こんな人材しか抱えていないのだろう。いまやワイマールなど、砂上の楼閣でしかないと、ヤハラは推察する。

 ならば。

「殿、本国の中将派と強固な同盟が必要です」

 ノボルたちが倒国の兵を挙げた際、呼応する勢力が欲しい。ヤハラはそう訴えた。

 が。

「下拵えはおまかせくださいませ」

 執務室の扉が開いた。

 イズモ・キョウカ、格好よすぎる登場である。

 ノボルは畳をすすめた。ヤハラは茶を煎れてくる。

 正座をしたキョウカは、まず茶を一口。

「このたび、ルグル侯の領内にある我が営業所を、規模拡大しますの」

 ルグル侯とは、かつてビラモア砦の戦いで、中将と並んで指揮を執った地元の猛者である。こちらから見れば、ちょうどワイマールへの入り口となる領地である。

 ドラゴ中将の猛将ぶりに感化され……というよりも、もともと最西の領主。ドルボンドが攻めてきたときには、先駆けて戦闘に入る領主である。武骨一辺倒な男なのだ。事実、本国内へ決起軍が入るのに、それを許した張本人である。ノボルたちの意気に打たれぬはずが無い。

 そのルグル侯がノボルたちに協力してくれると、キョウカは言った。担保は、たぬき商会が生み出す利益と、貿易のノウハウだそうで。これほど信頼できる担保は、他に存在しない。

「そして申し上げるまでもありませんが」

 ヒノモト州はたぬき商会にのみ門戸をひらき、ヒノモト・ノボルの意思に同調している、と言った。

「あのヒノモトが、ですか?」

「えぇ、物流はたぬき商会が保証しますので、と申しましたら驚くほど快く、援軍を申し出てくださいましたわ」

 よほど昨年の増税が不満だったのですわねと、キョウカはため息をついた。

 さまざまな歯車が、噛み合ってゆく。ヤハラとキョウカが図面を引き、工作に工作を重ねた歯車が、次々と動き始めたのだ。

「……これはもはや、何人たりとも止められませんな」

「何がですの?」

「倒国への流れさ。すでに歯車が動き始めている。大きな動きが始まっている」

 もはや誰にも止められない。ノボルは繰り返した。

「ちなみに新司令官さんへ、地元企業の代表として使者を派遣しておきましたわ」

「それは長上」

「……わかっておりませんわね。使者の口から偽物姉姫さまの情報を、それとなく伝えておくと申しておりますのよ?」

 キョウカは続ける。

「近いうちにヒノモトさまへ、噂の姉姫さまを差し出せと指示がくるはずですわ」


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