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その2


 アンジェリカの反物騒ぎもそこまで。結局は遠慮しまくりのアンジェリカを、「和装の立ち振舞いひとつできなくては、ノボルさまの恥になるのですよ」というリコの言葉で調伏。たぬき商会から深紫に白菊をあしらったおとなしめの反物を買い入れ、これまたリコ自信の手で和服に仕立てることで落ち着いた。

 ということで、新司令官の受け入れ準備である。

 街にはヒノモト風ファッションが当たり前の顔であふれかえり、腰は二本差しがスタンダード。足元を足袋と草鞋に代えて、歩き方もヒノモト風な男どもが闊歩している。生国により髪色がさまざまなはずなのだが、みな一様に黒く染めているので、やけに顔の彫りが深いヒノモト衆の群れである。

 女たちもまた面白い。可愛らしいというよりは美形の顔立ちなのに、髪色を変え着物姿でしゃなりしゃなりと。故郷ヒノモト州の者どもが見たら、賛否両論の意見に別れて収集のつかない状態に陥りそうだ。

 ノボルの意見を挟ませてもらえるなら、「ヤハラ計画、その結果はビミョーな光景なり」というところ。ネイティブ・ヒノモトなノボルにとっては、かなり頭の痛い景色が広がっているようにしか見えない。

 そして後家の偽物たちだ。

 ノラ役の娼婦はまだしも、姉姫役には教育が必要であった。その教育係は、姉姫自身とアンジェリカが買って出てくれた。

 これはありがたいと、ヤハラも喜ぶ。ヤハラすら知らない城の仕来たり、王族の振る舞いというものがあるからだ。そしてその仕来たりや振る舞い、旧ドルボンドの風習ともなれば、ワイマールの者にはまったく知るところがない。

 もちろん娼婦は賃上げを要求してきたが、国の命運がかかっている。ヤハラはそれに気前よく応じる。だけでない、成功報酬として破格の金貨を用意した。……余談ながらその金貨はたぬき商会、イズモ・キョウカの資金提供である。

 そして遂に本国ワイマールから、新司令官と各隊隊長が下ってきた。

 ……らしい。

 らしいというのは、ノボルたちに出迎えの召集がかからなかったからだ。当然と言えば当然。ノボルのような田舎領主などに、中央とも呼べるコズミクから、声がかかる訳がない。生前ゴンは、「攻城戦最大の功労者をガイにしよって」と怒ってくれたが、世間でドルボンド攻略戦など過去のものになっているのだ。

「おかげで身を隠しやすいですな」

 ヤハラは笑った。

「本国からヒノモト・ノボルは、ノー・マークということです」

「大丈夫なのかね、ワイマールは?」

「大丈夫ではないから倒すのです」

 まったくその通りだ。

 その通りついでに、ヤハラは解説をつけてくれる。

「やはり決起軍の存在が大きかったようですね」

 冬の事件で決起軍は、ボルザック派の重鎮をことごとく襲撃した。これの建て直しに難儀している、とヤハラは言う。何しろ金の要ることだ。そして何しろ、ドクセンブルグには金が無い。

 それでボルザックは魔の手を今、伸ばすのをためらっているところだ。

「決起軍の存在が大きいというならば、こういったことも考えられます」

 新領地にはもう、アンチ・ボルザック派……つまり中将派の過激なところは、もう居なくなっていると、ボルザックは踏んでいる……かもしれない。

「何しろあの人数が参加したのです。ボルザック反対派は残らず参加した、と考えたのでしょうな」

 そりゃそうだ。

 決起というものは、乗り遅れてはならない馬車なのだ。

 決起、行動、悲願の成就。結果が出てから、「やあやあ、私もみなさんと志を同じくする者でして」などと同志面をするわけにはいかない。それはツワモノとして、恥ずべき行為なのだ。

 逆もまた然り。結果が出たあとで、「あの反乱は間違いであった」などと、恥ずかしくて口に出すことはできない。

 だから決起というものは、ツワモノならば絶対に参加しなければならないのだ。

 ということで、ボルザックが「ヒノモト・ノボルに反乱の意思は無い」と踏んでいても、なんら不思議は無い。


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