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その4


 武装結社?

 なんだそれは?

 思わずヤハラと顔を見合わせる。しかしヤハラも、困惑した顔だ。

「……忍びマユ」

「は!」

「なんだ、その武装結社というのは? というか、二〇〇〇人に説明?」

「わかりませんか?」

「うむ、まったく」

「仕方ありませんね、それでは巡りのあまりよろしくないヒノモトさまに、私から説明しましょう」

 俺には言われたくないと、ノボルは思った。というか、たかだか説明ごときで、マユにデカい顔される筋合いはない。

 まず、決起軍兵士二〇〇〇人をたぬき商会で雇ってもらう。これはキョウカから話があった。その通りだ。

 その際、一度帰隊などせずそのまま脱走させる。それも説明があった。一度隊へ帰ってしまったら、どのような処分が下るかわかったものではないので、ノボルもそこは納得している。

 そして、ヒノモトから剣術指南役を呼び寄せる。これはキョウカの話にはなかった。いつ、そのような話になったのか?

 マユの話は続く。

 反乱軍とレッテルを貼られた二〇〇〇人の兵士。まともな兵役生活はこの先、望み薄でしかない。もしかしたら、実生活でも王室からマークされるかもしれない。ならば、毒を食らわば皿まで。護衛職の名目でたぬき商会にもぐり込ませ、合法的に武装。合法的に、新決起軍として鍛え上げようではないか、というものだ。

 それには軍としての統制はまだしも、剣術指南役が必要になる。

 それを呼び寄せるため、ノボルに働きかけてもらいたい、というのだ。

 マユ、とヤハラが訊く。

「殿が仰るに、ヒノモト剣術はヒノモトの刀を使い、ヒノモトの服装をしなければ効果が望めぬもの。いかにお手頃な価格とはいえ、安くはないぞ」

「まずはキョウカさまが用立てるそうで。あとで給金から、チビチビと差し引いてゆくとか」

 ローンという発想は、この時代のこの世界に住む、ノボルにはなかった。

「ヤハラどの」

「問題はないかと」

「よし、マユ。そのように采配すると、キョウカどのに伝えておくように」

「は!」

 忍びらしく姿を消すなどということもなく、マユは普通に部屋を出て行った。

「……してやられましたな、殿」

「うむ」

「よもやそこまで、手を打っていようとは」

「しかし、感心している場合ではないな、ヤハラどの。三割の兵役削減も降りかかってくるだろうし、元決起軍との連絡役も決めなければならん。忙しいぞ」

 ヤハラの提案で、第二中隊の退隊者をたぬき商会に送り込み、臨時の剣術指南役にすることに決めた。ヒノモトからの指南役が到着次第、この者は連絡役に変える。

「その前に、状況の説明をしてやらんとならんな」

 兵士たちは、今回の決起について何も知らない。何故決起したのかも知らない。そもそもボルザックという悪党を知らない。ボルザックが国を乗っ取ろうとしていること、ドラゴ中将が更迭の憂き目に逢い、非業の死を遂げたこと。兵士たちは、何も知らない。

 国王陛下が心変わりしたことを知らない。

 ノボルが討賊の意志を固めたことを知らない。

 討賊の意志が、倒国へ変わったことも知らない。

「いきなり一度に、たくさんの説明をしても、兵が戸惑うばかりです。徐々に教育していきましょう」

「そうだな、次の維新では一人残らず自分の意志で参加してもらいたい。そして一人の脱落者も、出したくない」

 貴重な兵力ということではない。みなに現状を知ってもらいたい。その上で判断してもらいたい。自分の意志で、維新断行に参加してもらいたい。

 それがノボルの望みだった。もちろん現状把握の教育は、ノボルに都合の良い内容にはなるだろうが。

 今回の決起軍は、その辺りの教育がすでに為されていたようだ。たぬき商会に移籍して、なおもボルザックに抵抗するというのも、あくまで自分たちの意志らしい。マユの話の中で、それとなく伝わってきた。

 王子たちが立ち上がるという、威光の力が働いたかもしれない。しかし次は、その威光無しのノボルがやらなければならない。負担は重くのしかかる。


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