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その2


 そしていよいよ深まる秋。収穫の季節がやってきた。すでに予想作況指数は中央に送ってあった。それにより、ボルザックは年貢の値上げを断念している。

 ブラフの町だけが不作ならば、ボルザックから叱られたかもしれない。しかし今では、かなりの町がブラフとともに不作を訴えている。

 故に役人が、現地調査に乗り込んで来ることは無い。西側領主、または第三王子などが対応することになる。有り体に言うならば、ノボルたちにお咎め無し、ということだ。

 ボルザック自慢の密偵たちは、中央で人材確保や陰謀絡みの仕事に忙しい。この一戦、親ドラゴ派の勝利と言えた。

 そこへきて新領地では、アンジェリカ元王女の御懐妊が報じられ、まさにお祭りムードである。


「ヒノモトさま」

「ん? マユか、珍しいな」

「はい、先ほどたぬき商会に立ち寄りましたところ、キョウカさまより伝言をたのまれましたので」

「……また文句や苦情かね?」

「すぐに文句と苦情が思い浮かぶあたり、日頃の行いが知れますね」

「それはいいから、伝言を」


 マユは頭を垂れて、伝言をのべた。

 伝言は簡潔なものだった。

 いわく、繁華街の完成は年末になる、というものだった。


「どういう意味ですか、これ?」

「……いま現在、たぬき商会が娯楽施設をこしらえているのは、知っているな?」

「はい」

「その完成が年末になると申している。つまりな、もう一人の嫁。リコの妊娠が年末に知らされれば、この町だけでもお祭りムードになるということさ」


 たぬき商会の娯楽施設は、まず駐屯地近辺に作られている。リコの妊娠が知らされれば、雑兵隊隊士たちがこぞって金を落としに出かけるだろう。イズモ・キョウカは、それを狙っているのだ。


「つまりは?」

「俺に、頑張って二人目も孕ませておあげなさい。妊娠発覚のタイミングを年末にあわせて、と言っているのだ」

「……ヒノモトさま」

「なんだ?」

「妊娠発覚のタイミングを調整できるなんて、あなた人間ですか?」

「人間だからできないのだ、わかってくれ」


 アンジェリカ御懐妊では、タイミングが合わず儲け損なったに違いない。そしてそれが悔しかったのだろう。

 しかしノボルの印象で商人という者は、雨が降っては儲け損なった、風が吹いては儲け損なったと、儲け損なった話しかしない。お前たちの商売は、ちゃんと儲かっているのかと、訊きたくなるときがある。


「ときに、ヤハラさまはどちらへ?」

「ふむ、いま二階の自室で資料を眺めているはずだ」

「資料相手では、分が悪いですね。出直して来ます」


 姿を消そうとする忍びを、ノボルは呼び止めた。

 そして一言贈る。

 はやくモノにしろよ、と。

 ボルザックとの争いに勝利したこと。アンジェリカが子を宿したこと。いずれも親ドラゴ派にとって、喜ばしい出来事だった。

 しかし、好事魔多し。あってはならない事件が発生した。

 親ドラゴ派である財務省副官が、何者かの手によって討たれたのだ。


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