秋深しに御座候の1
ごくごく短い更新です。木曜日曜、あるいは水曜日曜あたりに、長めの更新をできればと思っています。
驚くようなことではない。リコもアンジェリカも、女性の都合でなければノボルとともに、夜毎つとめを果たしているのだ。その成果が実っただけのことである。
アンジェリカは三ヶ月ということで、まだ体型に変化は無い。こうなると私も頑張らないといけませんねと、張り切るリコが少し怖く感じられる。
「予定日は六月らしい。主どの、妾のような者でも、母になれるのじゃな」
「俺も不思議な気分だよ。この俺が父親になるのだからな」
「この際だからアンジェリカ、ノボルさまの呼び方を変えてみてはいかがですか?」
リコの提案に、アンジェリカはしばし考慮。しかしすぐに答えを出した。
「ドルボンドの姫の座を捨て、庶民となって久しいのに、未だこの口調。主どのと呼ぶのも癖のようなものじゃ。すまぬ、姉上」
いまさらかもしれないが、アンジェリカはリコを姉上と呼んでいる。これは実際の年齢からではなく、ノボルに好意を持った順番からである。リコの誕生日は、わかっていない。庶民の誕生日は生まれた年のみで、日付は必要ないからだ。もちろんノボルにも誕生日は無い。それどころか、ノボルの周辺で誕生日を持っている者は、アンジェリカとヤハラくらいなものだった。
「失礼します、奥様方。そろそろ殿に、職務へ復帰していただきたいのですが」
そのヤハラが、頭をさげた。「うむ、そうであったな」と、アンジェリカたちはさがる。
二人が部屋を出て行ったあと、ヤハラは「おめでとうございます」と、祝いの言葉を述べてくれた。
「国難せまる中でありながら、このようにおめでたい話。さすが殿にございます」
「いや、この忙しい時期に子作りの成功というのも、なんともお恥ずかしい」
「そのようなことはありません。領民も兵士もボルザックのために、気分がふさいでおります。そこへ喜びの知らせなのですから、祝賀ムードで安心させてやりましょう」
今度はノボルの頭上に、暗雲が立ち込めてきた。嫌な予感がする。
「ヤハラどの、何を申しておられるか?」
「領民に知らせてやりましょう。奥様の御懐妊を」
「それは恥ずかしすぎやしませんか?」
殿! とヤハラは詰め寄った。
ことはノボル一人のことではない、とヤハラは訴える。アンジェリカは元々、ドルボンドの姫であり領民たちの象徴であったのだ。そのアンジェリカの妊娠を民に知らせず、誰に知らせるというのか。
なるほど、言われてみればその通りである。
だが、ヤハラはそれだけでおさまらない。アンジェリカを嫁にした時も、必要最小限の告知しかしなかった。それはわかる。アンジェリカを担ぎ上げて、反ワイマール勢力が息を吹き返す恐れが、まだあるのだ。
しかし今度は違う。ワイマールとドルボンドの架け橋となる子供が、この世に降り立つのだ。これは領民のみならず、全国に知らせるべきである。
ヤハラはそのように訴えた。
そこまで言われては、ノボルもうなずくしかない。
ヤハラ発、マユの足を借りて、この知らせはコズミクの第二王子へと届けられた。




