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その3


 城下町にひそむカイからの情報だ。結局ボルザックが会議で対抗勢力を言い負かし、他領地へ援軍を要請することに決定したらしい。近隣のボルザック派へと使者が送られるそうだ。

「とはいっても、今やドクセンブルグのイズモは商会を畳み、たぬきの旗だらけだろう?」

「たぬき商会はイズモ筋の商会、と見ているのでしょう。新領地軍のシンパとは考えていないようですね」

「では計画通り、ルグル侯らにはボルザック派を演じてもらうか」

「そうしましょう」

 まずはノボルたち、ヒノモト装束の者たちが分散して、城下へ潜入。夜半に城門周辺に集まる。

 そこへ夜陰に乗じたルグル侯一団が、近隣諸侯と称して開門をせまる。門番程度では、ルグル侯や近隣諸侯の顔など知らないし、家紋旗を見ても区別はつかない。

 開門となるやノボルたちが突入。一気に城を制圧する、という流れだ。

 今やノボルたちドラゴ派は、城下ドクセンブルグまであと一日というところまで迫っていた。迷う必要など、どこにもない。雑兵隊とたぬき商会軍、そしてヒノモト軍に指示をくだす。

「ヤハラどの、カイたちに何か仕事はないかね? これまで懸命に諜報活動に励んでくれたんだ。仲間外れはないだろう?」

「そうですね、ヒノモト軍の案内役を頼みましょう。彼らはドクセンブルグの地理にうといはずですから」

 その他ルグル侯との打ち合わせや調整をすませて、ノボルは次々と潜入部隊を出発させた。

 ルートは三つ。

 直進最短距離の西ルート。迂回の北ルートに大迂回の南ルート。

「先発は大迂回の南ルートで、ヒノモトのみなさんに当たってもらいましょう」

 ヤハラは即座に言った。一刻もはやく、この連中から離れたい。顔にそう書いてあった。

 北ルートはたぬき軍。ノボルたち本隊は直進の西ルートで決まった。それぞれたぬき商会の旗を立て、荷車をひいて商人のふりをして潜入する。そして夜半、城の西側で合流。そこにはたぬき商会の巨大な集荷場がある。男ども野郎どもとはいえ、みっちり詰め込めば六〇〇〇や七〇〇〇、なんとか収用できるだろう。この際、むさ苦しいとか空気が潮の香りとか、そんなことは言ってられない。

 もっとも、イズモ・キョウカが使用後の集荷場をおとずれたら、残り香に眉をひそめるだろうが……。

 そしてヒノモト軍が出発。おおむねの時間調整をして、次はたぬき軍。最後にノボルたち雑兵隊が、ルグル侯に見送られながら出発。ドクセンブルグを目指した。

 ノボルたちが城の西側に到着したのは、日が暮れる頃だった。秋の日は釣瓶落とし。たぬき商会集荷場に入った頃には、辺りが真っ暗になっていた。

 雑兵隊は後発を、明かりもつけずに待った。遅れることしばし。たぬき軍が到着した。

「問題はヒノモト軍ですね」

「何か問題があったかね?」

「今度は城を通り越してしまわないかと」

「ヤハラどのは心配性だな」

 心配はいらないと思う。今回はヤハラの文により、カイたちが案内役をするからである。

 夜も更けて。

 カイを先頭にヒノモト軍が到着した。

「久しぶりだな、カイ。元気にしていたか?」

「へい、親分もお元気そうで何よりです」

「不足は無いか?」

「おかげさまで」

 どうだ一緒に暴れるかと訊いたら、カイは少し考え込んで「あっしは裏方に徹しやす」、と答え闇に消えた。

「自分の仕事をわきまえた、よい部下ですね」

 ヤハラの感想だ。

「部下などと言ったら怒るかもしれん。あっしは子分です、ってな」

ノボルは答えた。

 ここでヤハラは襲撃部隊を分ける。



一、突入に邪魔な敵兵を斬る、突撃部隊。


二、城の入り口に架かり、橋の役割を果たす釣り扉を保持する部隊。


三、実際に城の中へ突入し、各階を制圧する制圧部隊。

四、国王ならびにボルザックを捜索する部隊。

五、その他、伝令。あるいは指揮所の警備部隊。



 その上で制圧部隊には、敵を無力化する秘策をさずけた。

「ヤハラどの」

「なんでしょう?」

「俺はまだ、どの部隊にも割り振られていないぞ?」

「殿は襲撃部隊全体の指揮官です。常に私のそばにいていただきますので、胃薬の準備をおすすめします」



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