番外編・優雨と愉快なガールたち!
いつから、ラジオが「たいぷらじお」だけだと錯覚していた⁉
妹・「さあ、いよいよ満を持して始まりました、『優雨と愉快なガールたち!』! 思う念力、企画も通す! テンションアゲアゲでお送りします。ラジオパーソナリティの寺井優雨でーす。そして~」
咲・「こんなに早く、ラジオに帰ってくることになるとは思いませんでした。葉山咲良です。そして、もう一人は……」
香・「恐らくガールズトーク要員として呼ばれたのでしょう、優雨ちゃんの友達、雲居香純です。ラジオ初参戦ではありますが、不肖私、頑張らせていただきます故、よろしくお願いします」
咲・「ねえ、優雨ちゃん。いくつか訊きたいことがあるんだけど、良いかな?」
妹・「なに?」
咲・「まずひとつ目、この企画ってネタじゃなかったの?(詳しくは『晴輝と優雨のたいぷらじお2ndG!!』参照)」
妹・「じゃないみたいだね。いや、最初は冗談だったんだけど、放送作家が本編の今後のストーリー構築に手こずっているらしくて。そのつなぎのためにとりあえずやってみよう、みたいな」
咲・「あぁ、えー、まあ、うん、多分この場は納得しておかなければならないみたいね。でも、それともうひとつ。雲居さん、だったかしら?」
香・「はい、雲居香純ちゃんですよ」
咲・「私、あなたとは初対面になるんだけど、本編よりも先にこの場で対面してしまって大丈夫なのかなって」
香・「くははは、やっぱり忘れてやがりますねえ」
咲・「えぇ⁉」
香・「ああいえ、しかし、問題はないと思いますよ、葉山先輩。この企画は、いわばスピンオフ中のスピンオフですから。肩の力を抜いてください。ただでさえ、大きめのバストを携えておられるというのに、余計に肩が凝るようなことはしなくても良いんじゃないですか」
咲・「へ、変な脱線をしないで!」
香・「成育環境が良いんでしょう、とても魅力的なJKに育っていますね。中身も外見も」
咲・「ねえあなた、どんな立場で私を見てるの? って、わ、なに⁉ どうして、私の靴下を脱がすの⁉」
香・「あーあ、嫌だなあ、この人。かかとツルツルじゃないですか。ある程度ルックスが良い人でも、どうしてもかかとが乾燥してたり、ひび割れしてたりするものなんですけどね。全国の乙女の悩みも貴女とは無縁ですか、葉山先輩」
咲・「……ねえ、雲居さん。私が最初に訊いたこと覚えてる?」
香・「覚えてますよ。覚えてる上で無視しただけです」
咲・「……おい」
香・「冗談ですよぉ。葉山先輩はこの程度の些事でいちいち腹を立てたりなんかなさらないでしょう。つまり、私が言いたいのは、斯様にトークを続ければ、初対面だなんだと気にする必要はないということです」
咲・「それを伝えるためにしては、迂回しすぎだと思うのだけれど」
妹・「ささっ、こんな感じで和気藹々とお送りしていきたいと思いまーす」
咲・「優雨ちゃん、和気藹々って言葉を今度辞書で調べてみて。マーカー引いて」
妹・「まーまー。それでは、まずはふつおたのコーナー! ラジオネーム、立秋なんて信じないさんからいただきました。ありがと~。
『優雨ちゃん、咲良ちゃん、香純ちゃん、こんにちは! 三人は少女漫画を読みますか? その中でも最近、いわゆる壁ドンが世間でも有名になりつつありますが、やっぱり憧れてしまいますよね』」
咲・「うん、私も壁ドンって一度はされてみたいな」
香・「何でしょうね、自分への迫るような愛を感じるとでも言いましょうか、良いですよねえ。くふふ、これってシチュエーションの区分けとしては何になるんでしょう、……俺様キャラ……鬼畜攻め、いや、ヘタレ攻めでも……」
咲・「雲居さん、BLが混ざってる」
妹・「あ、ゴメン。まだ続きがあった。
『でぇ、この前ぇ、なんかぁ、好きでも何でもないモブい奴から壁ドンされちゃって超迷惑だったんだけどぉ、こうゆー時の対処法ってない?』」
咲・「キャラが変わってない⁉ あと、憧れるって言ってた人が対処法を訊くってどうなの⁉」
妹・「咲良ちゃん、これはわたしたちが力にならなくちゃ! 腕が鳴るぜ!」
香・「そうですよ、葉山先輩。ガールの悩みはガールが解決するべきです! アリストファネス著『女の平和』にも書いてあることですし」
咲・「どうしてふたり共俄然やる気なの⁉ そして、『女の平和』にそんなことは書いてないよ」
香・「ははあ、それは不勉強でした。では、貴女は『女の平和』の正しい内容をご存知ということですよね、葉山先輩。愚かなる私めに、正しい内容をどうかご教示願えませんか」
咲・「……うぅっ、え、えーっとね…………」
香・「……おや? おやおやおや? どうしたんです、いきなり口ごもってしまって。知ったかぶりでなく、知った上で教えていただけなんて意地が悪いですよ葉山先輩。本当はどんな内容なのでしょーかー? 気になりますねー。知―りたーいでーすねー」
咲・「……あなた、本当は知ってるんじゃないの?」
香・「とんでもない。知らないから訊いてるんですよ、私は。さあ先輩、アテネとペルシアの戦争を終わらせるために両都市の女たちがどのような手段を取ったのか? 浅学非才なる私めに教えてくださいよー」
咲・「やっぱり知ってるんじゃない!」
妹・「ちょっとー、咲良ちゃん、香純ちゃん! 仲良くなってくれたのは嬉しいんだけどさ、質問に答えなきゃ」
咲・「ごめんなさい。……仲良くなれた気はしないけれど。でも、対処法なんてどうやって……」
香・「基本的には、鳩尾へのボディーブロー、あるいは脇腹への刺すようなこぶしを喰らわせるのが有効です。欲情しきった雄はこちらの顔に気を取られて隙だらけですからね」
咲・「切り替えが早い⁉」
妹・「もしくは、頭突きや顎へのパンチで脳震盪を狙うのも可! 壁ドンよりもさらに距離を詰められる肘ドンの場合はボディーブローや脇腹、相手が自分に比べて特に背が高い場合は頭突きや顎へのパンチが、特に効果的だよ。立秋なんて信じないさんだけじゃなく、ほかの女子リスナーさんも是非お試しくださいね☆」
咲・「解説口調で怖いことを言わないで。男子リスナーさんを震え上がらせないで」
香・「ま、結局壁ドンなんてのはフィクション上で楽しむのがベターでありベストでもあるのかもしれませんね。実際の人物とは関係のないところで好きにやってください」
咲・「夢破れちゃった。…………そういえば、優雨ちゃん、今回あんまり喋らないけどどうしたの?」
妹・「ん? ああ、ゴメン言い忘れてた。私、今回は進行役を務めなきゃいけないから、どちらかといえばトークは主にカスミちゃんに任せる形になるんだよね。だから、今回のラジオでは、咲良ちゃんと香純ちゃんとで仲睦まじくトークしてちょうだい」
香・「わかりました。……葉山先輩、私のこれまでの礼を欠いた物言いをお詫びさせてください」
咲・「え? い、良いよ。礼節はあまり気にしなくていいから、改めて、仲良くしようね。香純ちゃん」
香・「あの、いきなり香純ちゃんとか、そんな急に距離を詰められても困るんですよね。やめていただけませんか?」
咲・「お詫びする気ゼロじゃない! 歩み寄る気ゼロじゃない! 晴輝の時と対応があまりに違いすぎない⁉」
香・「ほらほら、貴女が私の言うことにいちいちつかかってくるせいで、お便りたった一枚で終わりが見え始めてきてしまいましたよ」
咲・「あなたがいちいちツッコまなきゃいけないことを言うからでしょう! 優雨ちゃん、本当に今回のラジオ、大丈夫なの? 構成、滅茶苦茶だよ」
妹・「……ん、カンペが出てる。『今回はそういう画を録りたかったから、大丈夫!』だってさ」
咲・「そういう画って、どういう画?」
香・「『貴女も読解力が低いですねー。センター試験の国語の平均点が下がっているのも、必ずしも問題の側だけに原因があった訳ではないのでしょう。貴女もそんな哀れな受験生の一例というわけですかー』と私が言って、先輩がツッコミを入れる、という画ではないでしょうか」
咲・「例にかこつけて誹謗中傷しないでくれる? こういうやり取りってやっぱり不毛だよ! 優雨ちゃん、次のお便りを読んで」
妹・「…………ZZZZ」
咲・「優雨ちゃん⁉」
妹・「…………ん⁉ ね、寝てないからねっ」
咲・「それ、寝てた人の言うセリフだからね!」
妹・「ごめんごめん。んじゃ、二枚目にして三ページ目にして最後のお便りを読むね。ラジオネーム、ソフトボイルドさんからいただきました。
『優雨、咲良先輩、雲居さん、ちゃお~。前回のラジオ放送では好きな小説が挙げられていたけど、好きなマンガはどうでしょーか? 是非、教えてください。ちなみにオレは、『ニセコイ』が好きです』
とのことで、正直、このリスナーにも心当たりがあるんだけど尺がないから今は捨て置くことにして、咲良ちゃん、カスミちゃん、どう?」
咲・「うーん、マンガか……。そうだね、ちょっとマイナーかもしれないけれど、私は『みかん絵日記』が好きだな。人間語を話すことができる猫のみかんと、みかんを拾った男の子・吐夢とその周辺の人たちの交流の物語でね、笑いあり涙ありの心温まるお話なの。白泉社文庫で六冊、特別篇も含めて全部で八冊出ているよ。少し古いから、もしかしたらもう絶版になってしまってるかもしれないけどね」
香・「あ、私も好きですよ、『みかん絵日記』。猫たち同士の掛け合いも楽しいですよね。しかし、ギーじいさんの話では、この私も泣いてしまいましたが」
咲・「うん。満足そうに逝ったのは分かっているけれど、残されたみんなはどうしても悲しくなってしまうから。雲居さんは、何のマンガが好きなの?」
香・「奇しくも白泉社文庫というのが葉山先輩とかぶってまして、私は『彼氏彼女の事情』、愛称・カレカノが好きです。タイトル通り、分かりやすくラブコメなんですが、あらすじが少しばかり複雑でして、詳しくは皆さんでググってください。ちなみに私が一番好きなキャラは、登場がかなり遅いですが、有馬怜司です」
妹・「二人とも、チョイスが古いね。まあ、カレカノは文庫化されたのは割と最近だけどさ。わたしは、『となりの関くん』が好きだよ。授業中に、関くんがあらゆる遊びで遊び倒してて、隣の横井さんがそれに気を取られて実況しちゃうみたいな感じの話。アニメでは、横井さんの声を花澤香菜さんがやってて、それがめっちゃ可愛かったなー。……って、おお⁉ なんか、やっとかろうじてガールズトークっぽくなってる!」
咲・「そうね。じゃあ、ここからさらに話題を広げていって……」
妹・「いや、もうお別れの挨拶の時間なんだけどね」
咲・「宴もたけなわだったのに! やっぱり、今回は構成に大いに反省点ありだよ!」
香・「本当ですよね。葉山先輩をディスれる貴重な機会でしたのに」
咲・「ねえ、本当にどうして私に対する態度がそんなに尖ってるの⁉ 私、あなたに何かした⁉」
香・「さあ、どうでしょうね? その真相は、これからの本編にこう御期待です」
妹・「じゃ、お別れの挨拶するね。まずは、わたしから。構成が思ってたよりも滅茶苦茶になっちゃったけど、わたしは楽しかった。そろそろラジオは抑えて、ガシガシ本編を進めるからヨロシク!」
咲・「謙遜でなく、本当につたないガールズトークになってしまいましたけれど、ここまでお付き合いいただき、本当に本当にありがとうございました。……………………晴輝が恋しい」
香・「これからの本編でウキウキ暗躍しますので、どうぞお楽しみに」