番外編・晴輝と優雨のたいぷらじお!
完全に趣味と悪ふざけで書きました。キャラ把握の助けになれば幸いですが、物語を読み進める上では読み飛ばし推奨です。
兄・「え、何これ?」
妹・「さあ、始まりました、晴輝と優雨のたいぷらじお! パーソナリティーはこのわたし優雨と、わたしの愚兄、晴輝でお送りしまーす」
兄・「今さりげなく、愚兄って言ったな。愚かな兄と書いて愚兄と、僕をよんだな。そしてもう一度聞くぞ、何これ?」
妹・「このラジオは、放送作家のモンブランがこれから真面目な小説を書くうえで、気分を切り替えるために、一発ハッチャけてしまおうというきっかけの下、執筆されました!」
兄・「……いや、もっと分からなくなったんだけど。なまじ情報が追加されたせいで、さらにこの状況が分からなくなったんだけど」
妹・「……はぁ、兄さん。自分が何をやってんのか分かってる? 兄さんが何これ何これ言ってるから会話のテンポが悪くなってるんだよ」
兄・「んなこと言われても……」
妹・「兄さん」
兄・「はい」
妹・「あきらめて」
兄・「…………はい」
妹・「じゃ、早速、ふつおたのコーナー! このコーナーでは、リスナーの皆さんからいただいたメールや手紙を、わたしたちが読んでいきたいと思います。それではまず一通目」
兄・「えー、ラジオネーム、元ごく普通の平凡な高校生さんからお手紙をいただきました。ありがとうございます。
『晴輝さん優雨さん、こんにちは。お二人は高校生とのことですが、もう中年に差し掛かった俺からしたら、とてもうらやましいです。高校生は勉強や部活などで忙しい時期ではありますけれど、一番青春していた時期でもありました。お二人も後になって後悔しないぐらい、楽しい高校生活を送ってくださいね。人生、学生時代よりもおっさんになってからの方が長いので(笑)』
とのことで。……って、これ父さん?」
妹・「え?」
兄・「ほら見ろ、この字」
妹・「あ、ほんとだ。何やってんの、あの人」
兄・「さあ? 暇だったんじゃないか。にしても、いやなことを言い残すよな。小学校から大学まで合わせて一六年ぐらいだから、……うっわ、おっさん時代と較べると短いな」
妹・「おっさんのスタートを三十路とするか四十路とするかは意見が分かれるけど、どっちにしても長いよね」
兄・「けどその分、学生をやってる時ってのは、人生の中でも結構大事な時期だから、大事にしろってことなのかね」
妹・「若い時に、髪を染めたりワックスをつけまくったり、毛根に負担のかかることをすると中年になってハゲやすくなるってこと」
兄・「や、それもそうなんだけどね。優雨さん、僕たちはもっとセンチメンタルな話をした方が良いんじゃないのかい」
妹・「えー、だって、わたし、今だって別に手を抜いて生きてるわけじゃないんだから、後になってうじうじ後悔することなんてないもん。もし、未来の自分が今のわたしにいちゃもんをつけてきても、今は今でやれるだけのことをやってるんだから、余計なお世話だよ」
兄・「カッコいいなお前」
妹・「だからわたしは、若さにかまけて不健康な食生活を送って、中年太りすることなんてない!」
兄・「さ、次行こうか」
妹・「おっけー。次は、ラジオネーム、ごく普通の平凡な同級生(妹の方)さんからメールをいただきました。ありがとうございまーす。
『お兄さん、優雨ちゃんこんにちは~。いつも応援してます!「まだ一回目だけどね」早速ですが、質問です。優雨ちゃん、今日のパンツの色は何色ですか?』
ということで、はい。ごく普通の平凡な同級生(妹の方)さん。あなたの連絡先はしっかり押さえましたからね。今のうちに、刑事か民事かのどちらで訴えられたいかを決めておいてくださいね♪」
兄・「いきなり過激なラジオになったな」
妹・「乙女へのセクハラは万死に値します。わたしが直接処刑するよりマシでしょ」
兄・「いや、裁判沙汰にするのも面倒だからお前が殺ってやれ」
妹・「は~い。えー、なんか変な空気になってしまったので、ここは、ラジオらしく一曲入れようと思います。前々回の『優しい雨』ではあまり雨に絡めた話ができなかったので、雨ソングを流します。それでは、中西保志さんで、『最後の雨』。あ、ちなみに活字なので、音声は皆さんの方で用意してくださいね。では、どうぞ」
―――――――♪『最後の雨』♪―――――――――
妹・「中西保志さんの『最後の雨』でしたー! 皆さんいかがでしたでしょうか?」
兄・「歌詞がストーカーだな。〈誰かに盗られるくらいなら 強く抱いて 君を壊したい〉って。いや、ダメだろ。壊しちゃダメだろ」
妹・「最近多いストーカー殺人に通じるよね」
兄・「風刺を挟むような選曲をするなよ」
妹・「えー、でもこれ良い曲だしさ。行き過ぎた愛情はやめましょうねってことで」
兄・「いや、でもそれって愛情とはもはや違うんじゃないか。相手を殺して自分のものだけにする、なんて理屈や論理はあり得ない。ただ、自分の思い通りにならない相手が憎かっただけだろう。って、僕は思うんだけど」
妹・「おおー、うん、なるほどね。……で、そんな素敵なお兄様は、どなたか恋のお相手はいらっしゃるのかしら?」
兄・「お前は兄を傷つけて、そんなに楽しいか?」
妹・「べっつにー。兄さんも直すべきところを直せばモテるだろうなーって、思っただけだよ」
兄・「ん?」
妹・「ま、どうでもいいことだけど。ではでは、次のコーナー行ってみよう! その名も『ハガキでメタモれ!』」
兄・「なんだ、その名前?」
妹・「『ハガキでメタモれ!』では、タイトルはハガキですが、ハガキだけでなくメールでも募集した、わたしたちが変身するキャラの案の中からランダムに選んで、わたしたちがそのキャラになりきろうというコーナーです」
兄・「なんか珍しいコーナーだな。良いぞ。やってみよう」
妹・「珍しく兄さんが乗り気なことだし、早速一通目を読んでみましょう。ラジオネーム、『萌える』に芽が出るという意味があるのを昨日初めて知ったさんからのメールです。
『晴輝くん優雨さん、こんにちは!
メイドさんを志望します!』」
兄・「それを言うなら所望だろ。でも、メイドだったら僕はできないから優雨、お前がやれ」
妹・「おっしゃ、ばっち来い!」
兄・「それでは、優雨のメイドです。どうぞ」
妹・「『お帰りください、ご主人様♪』」
兄・「出迎えろ」
妹・「『ご主人様にお勧めするメニューは、このメイドさんの萌え萌えオムライスです。原材料費が安いのにわたしたちメイドがたわ言を喚き散らしながらケチャップをつけるだけで、こんなに値段を高く設定できるのです』」
兄・「メイド喫茶だったのか? そしてメイド喫茶に何か恨みがあるのか、お前は」
妹・「『ご主人様、行ってらっしゃいませ。……私たちに貢ぐ金を稼ぎに』」
兄・「その薄汚い欲望を今すぐ捨てろ!」
妹・「いやあ、わたし、良い就職先が見つかったかもしれないよ」
兄・「まだまだ就職氷河期だよ」
妹・「では、次のお便り。ラジオネーム、ウルトラマン大名さんからお手紙を頂きました。
『晴輝くん優雨ちゃん、ごきげんよう。ベタではありますが、ツンデレキャラをお願いします』
とのことで、これなら二人とも出来そうだね。んじゃ、まずは兄さんお願い」
兄・「『別にお前のためじゃねーよ。たまたま手が空いてただけだ。勘違いすんな』」
妹・「それいつもの兄さんじゃん」
兄・「あれ?」
妹・「ちちち、分かってないなあ。わたしが手本を見せたげるよ。
『べ、別にアンタのためじゃないんだからねっ。勘違いしないでっ!』」
兄・「…………」
妹・「あの、兄さん、何かリアクション取ってくんない? ラジオでの沈黙って結構辛いんだよ」
兄・「いや、あまりに普通すぎて突っ込みどころがないわ。なんか、ごめんな」
妹・「謝らないで。みじめな気持ちになるから!」
兄・「うん、さすがは優雨だな。ツンデレキャラをこんなに普通にやってのけるなんて、お前にしかできないよ。優雨、お前は僕の自慢の妹だ」
妹・「褒め言葉の暴力をやめて。わたしのライフはもうゼロよ」
兄・「さあ、乗ってきたところで、優雨。次のお便りを紹介してくれ」
妹・「いや、もう尺の関係で、そろそろエンディングに入るから。コーナーは終わり」
兄・「逃げたな」
―――――♪『HARD RAIN』♪――――――
妹・「はい、エンディングテーマは、福山雅治さんの『HARD RAIN』です」
兄・「へえ、こんな曲もあるんだ。そして、これも雨ソングなんだな」
妹・「うん。結構、昔の曲だからね。今となってはマイナーだけど、良い曲でしょ。そして例によって、活字なので、音声は皆さんの方で用意してください」
兄・「しかし、やってみると意外とあっという間だったな、このラジオ。全編通して「 」というのは、最初は無謀な構成だと思っていたが、やってやれないこともなかったよ」
妹・「まあ、元々トーク主体の小説だったからね。書き手にも読み手にも違和感がなかったと思うよ。にしても、兄さん、意外とノリノリだったね」
兄・「やってみたら意外と面白くてな」
妹・「珍しく妹の揚げ足を取れたから?」
兄・「僕のイメージを損なう発言をするな」
妹・「次にやるときは、咲良ちゃんも呼んでみる?」
兄・「お、良いなそれ。だがもし仮に次の機会があるとしたらいつだ? このラジオの放送作家はしばらく真面目な小説を書くんだろ?」
妹・「さあ? 全然わからないけど、元々はシリアスな小説ばかり書いてた人だから、わたしたちの復活の可能性って実はかなり薄いんだけどね。でも、また気分転換に書いてくれるかもしれないよ」
兄・「だと良いな。小説でもこのラジオごっこでも」
妹・「ラジオにしたって、コーナーもまだ二つしかやれなかったしね。またいずれ」
兄・「またいずれ」
妹・「んー、ちょっと内輪ネタをしすぎたかな。じゃあ、ひとまずのお別れの挨拶をしよっか。じゃ、まず兄さんからお願い」
兄・「ああ。……えー、僕たちの拙いおしゃべりにお付き合いいただきありがとうございました。至らない部分もあったかと思いますが、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。これまでのご清聴、いや、ご精読重ねてありがとうございました」
妹・「次回、『晴輝、死す』。デュエル・スタンバイ!」
兄・「不穏な嘘予告を残すな!」
ラジオに限らず現実の作品名が頻出するこのシリーズではありますが、どれにも敬意をこめて名前を使わせていただいております。