しりとり合戦
ここで一つ、ルールの確認だ。
その一。
「の」や「が」など助詞を用いてはならない。
その二。
新しい言葉を作り出してはいけない。
ただし、相手を納得させることができた場合は使ってもよい。
その三。
長くする分には構わないが、8文字より短くしてはいけない。
その四。
当り前のことだが、最後に「ん」がついたら負けである。
これが我々の次の活動、『八文字以上しりとり』のルールだ。
覚えたか!?
部屋にやって来て早々に話す、もとい演説を始めた男子。
彼は何を言い出したのだろうか?
そんなことを思っているのは、もともと部屋に居たもう一人。
この部屋の家主である。
「あのさ、今度は何を始めるわけ?」
「む!?話を聞いていなかったのか?だから、八文字以上しりとりをすると……。」
「だーかーら、オレが聞きたいのはそういうことじゃない!何で、休日に、オレの部屋に来て何か始めるの!?」
今日だけじゃないじゃん、いっつもじゃん!!
などと言っても、聞きはしない。
そうだったか?
と首をかしげるばかりだった。
「だって、しょうがないだろ?思い付いてしまったのだから!」
「確かに思い付いたことをやりたくなるのはしょうがないことだよ。ただ、リョウ、お前は少し自重しろ!!」
「えー。」
「えー、じゃない!ったく……。何でいっつもオレのとこに来るんだよ。」
「文句を言いながらも、ナオキはいつもつきあってくれるからだ!」
「あー、はいはい。」
きっと他のやつらには断られたあとなのだろう。
いや、『きっと』というか『絶対』だな。
前に他のやつが『リョウの思考が意味不明すぎる……』と嘆いていたのを知っている。
ナオキは心の中でぶつぶつと呟く。
言ったところで、事態が悪化するのは目に見えていた。
そして……。
「で、ルールはさっきの演説擬き?」
「そうだ!さっそくだが、始めよう!!」
さっさとお帰りいただくには、何も言わずにゲームをすればいいということも悟っていた。
「じゃあまずは……無難にしりとりの『り』からだ、ナオキ。」
「オレが最初かよ!り、り……林間学校。」
「ウルトラソウルHey!」
「いか釣り漁船。よし、これで終わりだ。」
「ちょぉぉぉっと待たんか!!」
「なんだよ。」
叫びだすリョウ。
耳をふさぎ、うるさそうに眉をしかめるナオキ。
カオスな状況が出来上がった。
「終わらせるの早くないか!?」
「早くない。」
「言葉が3つだけだぞ!!」
「はいはい、じゃあ次リョウ。『る』から始めて。」
「よーし、る、か……。」
カオスな状況を終わらせるために、もう一度再開した。
悩んでいる間は静かになるだろう。
そんなナオキの目論見はすぐに打ち破られた。
「留守番電話拡張機!」
「は!?なんだよそれ!」
「その名の通りだ!留守番電話にかけてきたひとの電話が……爆発する。」
「意味わかんねーよ!」
「次は『き』だぞ?」
「……機関車トーマス。」
「硯生産工場。」
「歌川広重。」
「幻想的世界。」
「意味を教えろ!さっきから聞いたことない言葉しかねーよ!」
「よく考えればわかるぞ。無理なことはない。」
「いーや、あるね。考え方を教えてほしいわ!」
「わからん!!」
「あ、終わった。」
「え?」
呆然としているリョウは、今までの会話を振り替えっているのだろうか……。
途中から主旨が変わっていた気もするが、誰もつっこまなかったから、まおあいこだろう。
そんなことを思いながらナオキがリョウを見ると、そこには拝む体制になっているリョウがいた。
「ナオキ……頼む、もう1回!!今度こそオレが勝つ!」
「お前はいい加減にしろ!!」