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五章3

父王としばらく語らった後、アンジェリーナは自分の部屋に戻った。アンソニーはアンジェリーナとは別の客室に連れて行かれる。まあ、まだ結婚していないのだから間違いが起こらないようにするためだが。アンソニーは少し残念そうにしていた。何でだと思うアンジェリーナだった。




あれから、二週間後に父王、ヴィルヘルムは正式に王位を退いた。執務の引き継ぎはほぼできたので後はアンジェリーナの戴冠式を待つのみになった。ちなみに、退位した時は父王は四十一歳だった。まだ、若い彼の退位に周囲は惜しんだ。悲しがる民もいたらしい。それを聞いたアンジェリーナは複雑な気分になったが。

そうして、ルクセン王国は新しい時代の幕開けを迎える事になった。

ヴィルヘルム王の退位から一週間後にアンジェリーナの戴冠式と結婚式が行われた。若干十八歳の新しい女王の誕生である。

アンジェリーナは淡い黄色のドレスに身を包み、赤いビロードのマントを肩に掛けていた。隣には王配のアンソニーもいる。神の名に誓って神官長が祝詞を唱えた。その後に王冠を神官から手渡されてアンジェリーナの頭上に掲げる。

「今、これよりアンジェリーナ王女を新国王とする。守護神カルリア様のご加護と祝福があらんことをここに宣言する!」

神官長が声を張り上げながら王冠をアンジェリーナの頭に乗せた。ずしりとした重さにおののきそうになるが何とか我慢する。そして、錫杖も手渡されて彼女は立ち上がった。笑顔で空いた方の手を振る。わあと大歓声があがった。アンソニーも王配を意味する小さな冠と剣を手に持ち、笑顔で手を振った。

「アンジェリーナ陛下に万歳!」

「新しい女王陛下、よろしくお願いします!」

口々に皆はアンジェリーナを祝う言葉を告げた。それにも手を振って応えたのだった。




戴冠式の後で結婚式も行われる。アンジェリーナは花嫁を表す白のウェディングドレスに着替えた。真っ白な百合のブーケを手に持つ。亡き母の好きな花だった。それを持って立ち上がる。

コンコンとノックする音が控え室に響いた。侍女が開けると白の礼服に着替えたアンソニーが入ってくる。金の髪に淡い緑色の瞳の彼には一際映えていた。

「ああ。綺麗に支度をしたんだね。似合っているよ」

「ありがとう。ソニーもよく似合っているわ」

二人して誉めあった後でアンソニーは控え室を出ていき父王を待つことにした。今回の結婚式にはスルティアの皇帝夫妻と父王のヴィルヘルムを呼んでいる。

アンジェリーナは侍女に伴われて控え室を出た。大聖堂に着くとヴァージンロードをゆっくりと歩く。長いベールは侍女に持たれている。そうして父王の元まで行くと腕を組んで壇上で待つアンソニーの元まで歩いた。階段を降りてアンソニーに父王はアンジェリーナを預ける。

アンジェリーナがアンソニーに助けられながら階段を上がった。二人して神官の前で向かい合う。

「…では、婚姻のためのサインをお願いします」

神官の言葉に応じてアンソニーは机にあるペンを手に取った。さらさらと自分の名を書いた。アンジェリーナもベールで見えにくい中、頑張ってペンを受け取り名を書いた。

記名を終えると神官はさらに声をかける。

「次にエンゲージリングの交換を」

机に置かれた小箱には一対の指輪が鎮座していた。アンソニーは手に取るとアンジェリーナの手を握り指輪を填めた。アンジェリーナも同じようにする。

結婚の儀式はこれで完了だ。神官は声を張り上げた。

「これにてお二人の婚姻は成立しました。カルリア神の祝福があらんことを!」

そう言うとまた盛大な拍手と歓声があがる。アンジェリーナのベールを上げるとアンソニーは彼女の額に軽くキスをした。余計に歓声が大きくなった。戸惑いながらもアンソニーを見上げるアンジェリーナだった。



アンソニーと初夜を迎えてアンジェリーナは身も心も夫婦になった。彼女は王として執務をこなす日々を送る事になる。

後にルクセン王国では珍しい女王として即位したアンジェリーナは善政を敷いたという。王配となったアンソニーとの間にたくさんの子供をもうけた。後にルクセン王国は近代化の時代に突入するが。その基盤を作ったのはアンジェリーナの時代であった。歴史書ではアンジェリーナとアンソニーは仲睦まじく子を大層可愛がったという。穏やかな晩年を送ったとか。

今でも仲の良い夫婦の例えでアンジェリーナたちの事が出てくる。ルクセン王国では賢王としても彼女は尊敬されている。人々を惹き付けてやまない存在になっているようだった。

おわり

これにて終わりになります。今までお読みいただきありがとうございました。

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