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青春の女神

作者: 豚猫まん

 鈴木鈴男。15歳。中学3年生。彼は興奮していた。本日の席替えで、憧れのクラスメイトである田中田名子の隣の席になる事が出来たからだ。鼻の神経を研ぎ澄ませると微かに彼女の香りがする。シャンプーと香水の混じった匂い。トイレから出てきたばかりなのか、かすかにウンコの香りがする。匂いをを嗅げば嗅ぐほど惚れ惚れとする。美しい容姿。澄んだソプラノボイス。優しい心。彼女は鈴男の女神だった。


 数学の授業。クラスの半分が別の教室に行って授業を受ける。鈴男と田名子は隣同士のままだった。これは幸運の女神がもたらした奇跡であろう。幸運の女神。女神だ。つまり田名子がこの俺と一緒に授業を受ける事を望んだのだ。そのような事、奇跡でも何でもなかったのだが、彼は女神の隣の席になった途端に頭のネジが次々と外れ始め、このような妄想をするに至った。授業中に何回か教師と目が合うとニタニタと歪んだ笑みを見せ、その度に教師をドン引きさせた。


 次の授業は体育だった。珍しく女子と合同ではなかったのだが、そんな事は有頂天になっている鈴男にとってはどうでもよかった。体育のあとの授業でじっくり視姦しながら匂いを嗅いでやればいい。鈴男はニヤニヤ笑いながら、はずみで小便を漏らした。

 体育の授業はサッカーだった。普段では女子が近くにいない体育の授業などウンコのようなものだったが、今日は違う。先程の席替えで女神の隣の席になった鈴男は燃えに燃えていた。憧れの彼女と一緒の授業でなくてもどうでもよかった。田名子、見ていたまえ。君の夫がゴールにスーパーシュートを決める瞬間を。鈴男は既に彼女の夫になった気分になっていた。


 男子が半分に分かれ、サッカーの試合が始まった。女子がいなくても流石は男子の試合、なかなか盛り上がる。ボールがとある男子生徒の所へ行った。そこへ突っ込んでくる一人の男。鈴木鈴男だった。鈴男は男子生徒に猛烈なタックルを浴びせ、力づくでボールを奪い取る。吹っ飛ばされた男子生徒はその衝撃で大便を漏らしていた。

 そこから始まる鈴男の快進撃!!彼はボールを持ち脇に抱えると、ゴールに向かって猛然と走り出した!!

 何人かの男子生徒が鈴男に向かっていく。鈴男は右側に来た生徒に水平チョップを喰らわせ、左側に来た生徒にローリングソバットを浴びせる。そしてゴールキーパーに正拳突きの乱打を喰らわせたあと、ゴールにボールを投げ込んだ。鈴男の勝利だった。見ていたか、田名子。お前の夫が華麗なシュートを入れヒーローになった姿を。この後、鈴男は何人かの生徒に呼び出され、凄惨なリンチを喰らう事になる。


 午前の授業が終わり昼休みに入った。生徒たちは仲間と共に昼食を楽しむ。そんな中、鈴男は一人で昼食を食べていた。元々少なかった友人を、先程のサッカーの授業で怪我を負わせてしまったからだ。鈴男自身その後リンチを受け、現在も体の至る所から血を吹き出している。鈴男はクラスで完全に孤立してしまっていた。


 だが、そんな事彼には関係ない。彼には妻、つまり田名子がいるからだ。左を向けばいつも彼女が微笑んでいる。今はいないが、あと数十分もすれば自分の隣に舞い戻ってくる。だが、それでも待ちきれず鈴男は昼食を食べている田名子達のグループ傍に来た。そして一瞬の隙をつき、自分の唾液を田名子の弁当の中に入れる。誰も気づいていない。完璧だった。変態のする行為などわかる筈も無いが、いわゆるマーキング行為だったのだろう。自分の所有物に自分のマークを付ける行為なのだから、鈴男はこの行動に特別な感情など持ちあわせていなかった。


 一人ぼっちの昼休みを過ごしたあと、再び授業が始まる。鈴男は教師の話など聞いていない。隣の女神を見る、匂いを嗅ぐ、それ以外では、彼は漫画を描いていた。その内容は男と女が激しい恋に落ち、激しくファッ○をするというどうしようもないエロ漫画であったが、彼の脳内ではそれは壮大なスケールで描かれるファンタジーとなっていた。もちろんモデルは隣同士の二人である。彼は時折隣の女神を凝視しながら物語を進めて行く。漫画の主人公を自分に当てはめ、時折ニタニタと笑う鈴男。周囲のクラスメイトは鈴男の異常な行為に気づきクスクスと笑う。教師もなるべく鈴男の方を向かなかった。こうして貴重な授業の時間が過ぎていく。


 帰りのホームルーム直前、鈴男はある決心をしていた。今日、学校が終わった後、正式に田名子に結婚を申し込もう。事実婚で済ませる訳には行かない。求婚は女を愛する男にとっての聖なる儀式だ。これを省略してはいけない。鈴男は学校が終わってから求婚までの詳細なビジョンを思い描いていた。友達と別れ一人帰り道を歩く田名子。偶然にも再び2人は出会い、甘い会話で心を通わせる。そしてふいに鈴男はこう切り出す。


 「田名子、俺達結婚しよう!!俺達は一つになる運命なんだ!!神も仏も俺達の幸せを願っている!!俺はお前の子供が欲しい!!」


 すると田名子はとびきりの笑顔でこう答える。


 「喜んで!!!!」


 完璧だ。これ以上の告白シーンを鈴男は見たことがない。普段は派手にドンパチやるB級映画しか観ないから当たり前だ。ニタニタと笑う鈴男の前に、男子生徒が数人やってきて鈴男に言った。


 「お前何ニヤニヤしてんの?気持ち悪いよ?」


 そう言葉を投げかけられた途端、鈴男の頭の中にノイズが入った。脳内で彼女に求婚した後の返事は、喜んで!からこう変わった。お前何ニヤニヤしてんの?気持ち悪いよ?・・・。

 

 脳内のファンタジーを雑音でめちゃくちゃにされた鈴男はキレた!!


 「おらああああああああああ!!!!!!!!!てめええおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


 鈴男は奇声を上げながら真正面のクラスメイトに渾身の左ストレートを放つ!鼻血と小便を垂れ流しながら吹っ飛ぶクラスメイト!吹っ飛ばされたクラスメイトはロッカーに頭から突っ込み、その衝撃で丸出しになった尻からは下痢便が流れ出ている。

鈴男の左右にいるクラスメイトが後ずさった。右のクラスメイトにヘッドバットを、左のクラスメイトに回し蹴りを喰らわせる鈴男。それぞれ小便と大便を漏らしながら吹っ飛んでいく。2人とも失神した。田名子に自らの強さを見せつけた鈴男。自分への好感度メーターが上がっていく音が聞こえる!!。見ろ!俺の姿を!鈴男は興奮して小便と大便を漏らした。


 十数分後ホームルームが終わり、それぞれ自宅へ部活動へと向かっていく生徒たち。鈴男は体育館へと向かった。妻の田名子はバスケットボール部だからだ。彼女を凝視する鈴男。まるでパパラッチである。こういう時、自分専用のデジタルカメラがあったらどんなに便利だろうか。彼の脳内にはいつも田名子の姿があるとはいえ、夫婦である以上お互いの写真は常に携帯して持っておきたいところ。極めて健全な思考である。部活動が終わるまで、鈴男は田名子を見つめ続けた。途中、教師から声を掛けられたものの、適当に答えてあしらった。彼の頭の中には彼女しかいない。


 部活動が終わり、田名子達バスケットボール部も帰り始めた。その後を尾行する鈴男。傍から見れば鈴男は不審者に見えるかもしれないが、2人は夫婦の為なんの問題もない。友人との会話で笑顔を見せる田名子。まさに天使だった。いや、女神だったか。あの笑顔を独占したい!田名子は俺のもの!!彼は田名子と談笑する友人達を憎んだ。嫉妬から、とてつもないストレスが彼を襲い、鈴男はそのストレスからウンコを漏らしていた。だがもうすぐだ。もうすぐ彼女は俺だけのものになる!!


 とうとう彼女は一人になった。その瞬間、猛然と彼女へダッシュする鈴男!途中フラフラと出てきた婆さんを吹き飛ばし、田名子の前に躍り出る!!


 「田中さん!!偶然だね!!!」


 いきなり田名子と呼ばなかった事から、彼にわずかな理性が残っていたことが伺える。


 「あ、鈴木・・・。偶然だね・・・。」


 引きつった表情でそう口にする田名子。実は先程から鈴男が自分達を尾行していた事は知っていたのだが、大人な田名子は知らないふりを通す事にしていた。


 「実はボク、君に話があるんだ!!!」


 「え、そうなんだー・・・。何かなー・・・」


 「ボクと結婚してくれ!!!式場はもう用意してあるんだ!!!」


 言った。ついに言った。これで田名子は俺のもの!!彼には教会でウエディングをあげる2人の姿が見えていた。だが、田名子ははっきりとこう言った。


 「ごめん、他に好きな人がいます」


 「え・・・・・。嘘・・・・・・」


 全てのビジョンが崩壊していく。結婚後の生活から、2人の老後まで、思い描いていたもの全てが音を立てて崩れていく。鈴男はその場で糞を漏らした。ブッ、ブビョー!!ブリュブリュブリュブリュイィイミチミチミチミチャミチャミチャ!!!!


 「ヒィイイイイイイ!!」


 一目散に走って逃げる田名子。その姿は彼の眼には映っていなかった。白くなる視界。足元に溜まっていくウンコ。全ての終わる音が聞こえる。鈴男はその場に立ち尽くしていた。途中、通行人や同じ学校の生徒に写メをパシャパシャと撮られていた。


 翌日、教室へと現れる鈴男。一晩で髪が全て白髪になり、ストレスで激やせしていた。とりあえず自分の席へと向かう鈴男。彼の机にはウンコマンと落書きがされてあり、教室の黒板にはウンコを漏らしている彼の写真が大量に貼られていた。自分の机の周囲3メートル以内には誰の机も椅子もない。静まり返っている教室。聞こえるひそひそ声。時折混じる嘲笑。

 誰も彼には近づかず、話しかける人間など皆無であった。担任からはカウンセリングを受けるように勧められたが、明日から家に引き籠る予定の彼にとってはどうでもよい事であった。その後、卒業式の日まで彼の姿を見たものはいない。鈴男は伝説のウンコマンとして学校中に知られる事になった。


 だが、それは悪い事ばかりではなかった!!

 例の脱糞写真がネットに流失していたため、全国のスカトロマニア達の間でたちまち有名になり、現役中学生ウンコマンとして絶大な支持を受ける事となったのだ。連日彼の家に届くスカトロAVのスカウト。ウンコは彼をどん底に落としただけではない。素晴らしい贈り物を届けてくれもしたのだ。


 女がなんだ!学校がなんだ!君には素晴らしい宝物があるではないか!!

 

 世間の評判など吹き飛ばし、頑張れウンコマン!!!


 


    完



 

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