09.待ち合わせ
「お待たせ」
時間前に着いたがすでに皆そろっていて、瀧が一番最後だった。
「……」
あまりにも無反応なので怒っているのかと思って心配していると、気付いたように誰かがポツリと言った。
「――…綺麗…」
と。
集合場所に行った途端、何故か羨望の眼差しを受けることになった。
しかも友達だけかと思いきや、道行く人からも視線を感じる。
瀧は今流行りのクシュクシュのスカート、相反する色のブラウスに、女らしいミュールを履いていた。
一見華美でも地味でもない恰好だが、そのシンプルさが瀧の容姿やスタイルを沸き立たせている。
それに加えて普段は滅多にしないメイクを自然な感じで施している。
それがまた服装に加えて瀧の魅力を沸き立たせていた。
「普段もそういう恰好すればいいのに〜」
一通り私の服装を上から下まで吟味したあとに、里奈が言ってくる。
「ははは。何か照れるじゃん?それに慎埜とかといる方が多いしさ」
「そういや神林君彼女いないよね〜。モテるのにどうしてだろうね」
自分で名前を出しておきながら、その名前に内心動揺する。
「あっ、なんか女苦手なんだって〜」
「じゃあ瀧は〜?」
「中学は誰が見ても男だったし。今はその延長じゃん?性格変わってないし、着飾らないしね〜。ってか多分女だと思ってないよ」
普段の行動やら何やらを思い返すと、悲しいぐらい本当の事だった。
「髪伸ばせば?似合いそうだけど」
後ろから髪を触りながら、この中で一番背の高い佳奈実が言う。
チクッと走った痛みを押し込む。
「面倒そうじゃん」
「「「瀧らし〜」」」
瀧以外の全員の声が揃った。
笑いながら相手グループとの待ち合わせ場所に向かった。
聞いた話によると、相手のグループは有名私立校のメンバーで、レベルが高いらしい。
なんでそうなったかというと、どうやら今日休んでる織乃の男友達から持ち掛けられたらしい。
織乃が来れないことはもう伝えてあるらしく、人数を減らす事は出来ないので瀧を誘ったんだそうだ。
「そういえば瀧、彼氏は作らないの?」
「ってか出来ないでしょ」
思ったままを言ったのだが、一斉に全員から冷めた視線を頂戴する。
「バカ言うな。瀧がその気になればいくらでも出来るって」
ちょっと怒った顔でそう言われるが、実感はない。
今までナンパされることは多々あったが、告白された事は一度もないのだ。
その事を言ってみると、簡単に鼻で笑われてしまった。
「瀧の事を好きな奴はかなりいるよ?でも瀧は殆ど神林君と一緒にいるから、付き合ってると思われてるんだよ。中学はわかんないけど今はそうだよ」
「……ふ〜ん?」
話し半分に聞いていたが、どうやら嘘ではないらしい。
かなり複雑な気分だ。
好きな人と付き合っていると誤解されるほど仲がいいのに、実際は相手から親友としか思われてはいないのだから。